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ミライノマナビコラム  ― そこが知りたい小学校英語

2019.10.4

第7回  小学校から育成される4技能 家庭学習でできることは?

高橋 美由紀

高橋 美由紀

博士(地域研究)
愛知教育大学名誉教授
外国語教育メディア学会副会長・小学校英語教育研究部会代表
世界の研究者が関わった「TOEFL Primary」のテスト開発会議に参加し、制作に携わる。 全国の小学校での外国語活動の指導助言や調査・研究を行う。
主な著書『CLIL in Diverse Contexts 次期学習指導要領とCLILを活用した英語の授業づくり』(2020) 鳴海出版、『小学校授業づくりのポイント』(2015) ジアース教育新社、『新しい小学校英語科教育法』(2011) 協同出版

 

小学校英語は現中2レベル

20194月に実施された「全国学力テスト」では、初めて英語が導入されました。対象は中学3年生で「読むこと・聞くこと・書くこと・話すこと」の4技能について行われました。731日に公表された結果によると、平均正答率は、読む56.2%、聞く68.3%に対し、書く46.4%、話す30.8%でした。

聞くことや話すことの内容には、小学校外国語活動レベルのものもありました。例えば、「話される英語を聞いて、その内容を最も適切に表している絵を選ぶ」問題では、

“I get up at six every Sunday and take my dog for a walk.”

を聞き、get updogwalk等の単語が理解できれば、「少年が起きる絵⇒犬の散歩をしている絵」を解答することができます。また「表示されたイラストについての質問に英語で答える」問題では、英語での月と序数は何度も練習するため、

(1)When is her birthday?の質問に、“It’s July 2nd.” と容易に解答できると思われます。

いずれも平成31年度全国学力・学習状況調査問題より抜粋

 

現在中学校2年生終了時のレベルは、次期学習指導要領では小学校終了レベルとなります。

すなわち、上記の「学力テスト」の問題は、小学生で十分解答できる能力が育成されるということです。(外国語教育の抜本的強化のイメージ参照)

 

「外国語教育の抜本的強化のイメージ」文部科学省 平成29年11月13日 教育課程部会資料6より抜粋

 

伝え合い表現し合う 4技能を総合的に育成

これまで、小学校外国語活動は、外国語の言語や文化に興味を持ち、外国語に慣れ親しむことが目標でしたが、次期学習指導要領では、外国語教育は「何が出来るようになるか」という観点から、小・中・高等学校を通じて「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り・発表)」「書くこと」の目標が定められ、4技能を総合的に育成することになりました。

移行期の2018年度から文部科学省が配布する高学年用のテキストWe Can !』では、友達と自分の思いや考えを伝え合ってコミュニケーションする「聞くこと、話すことの言語活動」や、語順を意識しながら簡単な語句や基本的な表現を書き写したり、友達が書いた文を読んだりする「読むこと、書くことの言語活動」等があります。

例えば、友達と自分の思いや考えを伝え合ってコミュニケーションする活動として、

We Can !1』(5年生) Unit6の「お勧めの国を紹介しよう」があります。これまで外国語活動であった、単に「国名」を言うだけのやり取りに留まらず、「その国で何ができるのか?」を “You can see ~ .” “You can eat / drink ~.”  “You can buy .”等の表現を使用して話したり、その感想として、“exciting” “delicious” “beautiful” “great” “fun” 等で述べたりします

 

家庭でもできる4技能育成

家庭でも、自分の思いや考えを的確に言えることが大切です。児童が「絵や写真」を提示して、この絵の説明として、自分の感じたことを、“exciting” “delicious” “beautiful” “great” “fun”等の英語で表現する活動は、家庭でもできるでしょう。

「読む」「書く」活動では、「聞く」「話す」活動でまず慣れ親しんだ語彙や表現を、「読む」活動に繋げ、更に「書く(書き写す)」へと発展させてください

アルファベット文字が習得できたら、次は、初歩的な「読むこと」に関連する活動を行います。例えば、アルファベットカードで、意味のある言葉をつくる活動 「TV」「DVD」「JR」等、さらに、「cat, hat, rat」「hop, mop, pop」等、単語を構成する文字の組み合わせに気付かせる活動等もできます。

「書く」活動では、マザーグースの歌や絵本がとても役立ちます。簡単な語彙や繰り返しの表現が多く、児童にとって「読んでみよう」「おもしろい!」という教材を使用して、何度も一緒に歌ったり、読んだりします。例えば、“Humpty Dumpty sat on a wall.” を、文字をなぞりながら歌い、次に「Humpty Dumpty」を替えて、誰が座っているかを話し合って歌うことで、語順が意識できます。「This is a house Jack built.」も、絵本を活用しながら、後ろのページから前のページへと指し示しながら、チャンツのリズムで行うことで、関係代名詞の用法に気付くことができます。

また、『We Can !2』(6年生) Unit4「町のミニポスターを作ろう。」の活動では、自分の町の案内として、色々な施設を紹介するためのポスター作りをします。自分たちが町に欲しい施設(I want a big park)も掲載し、その理由(we don’t have a park. I like soccer.)についても書きます。

『We Can !2』(6年生)Unit4「町のミニポスターを作ろう。」(P.32)

 

家庭では、「町」を「家(部屋)」に替えて、「This is my house(room)!」として、自分の家や部屋について、家族でミニポスターを作ってみてはいかがでしょうか?

また、家庭内で「伝言板」を作り、家族の連絡を「英語でメモること」も、「読むこと」「書くこと」の活動につながると思います。

 

Anup

 

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