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大改革時代に向けて

2018.8.28

みなさんは「未来からの留学生」  突き抜けた善を志し、学び問い続けてください
香里ヌヴェール学院 石川一郎学院長

石川一郎 先生
香里ヌヴェール学院 学院長
21世紀型教育機構の理事として、関西から日本の新しい教育を発信する。AIの登場で人間はより人間らしい学びや問題に取り組むべきとの指摘は、古い教育の問題点をあぶり出すと同時に、未来への希望も感じさせる。

 

正解のない問い 心を打つ言葉

 

これまでの学校教育は、与えられた課題に対して、指示されたことを指示された通りにできることを目標にしていました。

 

たとえば、文章を書くという課題では、見出し、要約、本文を作ります。今までの教育では、本文(事実を正しく伝えること)と要約(内容を過不足なくまとめること)が重視され、それができると評定5のうち3ないし4は取れていたわけです。

 

大学入試でも企業の管理職にもそういう能力が求められてきました。ところがAIは、人間よりはるかに上手に事実を集めて要約するようになるでしょう。膨大な事実を統計的に処理して「ここに出店すれば何パーセントの確率で利益が出る」といった予測まで人間よりもはるかに高い精度で行います。

 

一方で、AIが苦手なのは、見出しを作ることです。AIは統計的な確率は出せますが、人の心の動きは計算できません。全体を俯瞰的に見て、問いを投げかけることも苦手です。「今のままの教育でいいのか?」というような正解のない問いも人間の強みなのです。

 

発想も評価の対象に

 

2020年、大学入試が改革されますが、恐ることはありません。突飛な問いが出されるわけではないからです。基本的には「あなたの考えを述べなさい」なので、自分の考えをきちんと持つこと、考えの根拠を形作ることが重視されます。これは今までの日本の教育が軽視してきたことです。

 

AIは意見も持たないし、夢のような発想はしません。こうしたら面白いのになという感覚を持たないからです。発想というのは今までの教育では点数がつけられませんでした。今後は点数をつければいいと思います。本校ではその実践をはじめています。たとえば、次の問題を見てください。

 

問 これからの社会に必要な家をあなたが新しくつくるとしたら、どのような目的で、どのような形のものを作りますか。その理由もあわせて200字以内で書きなさい。

 

昨年8月の思考力体験会で出題した問題です。この種の問題は、今までもあったかもしれませんが、いきなり問われると書けない受験生が多い。なぜなら、そのトレーニングを受けていないからです。

 

そこで、最初は「家」から連想する言葉をあげてもらいます。発想を言葉にするわけです。それにも得点がつきます。

 

次に、アイデアを引き出すために現実にある特色のある家を見せて考えてもらいます。イノベーティブなアイデアというのは、このように、発想を飛躍させたり、現実に戻ったりしながら出てくるものです。

 

考えることをやめた「努力」ではみんな貧しくなる

 

こういう思考方法を、頭のいい人は自分で編み出して実践できます。ですから、成績上位層よりも、むしろ中間層の子供たちこそ、考える方法や表現の仕方を教える必要があるのです。これまでの教育では、中間層に考えさせるのではなく、解き方を覚えるという「努力」をさせてきました。そういう「努力」が美徳とされ、評価されてきたのです。

 

一方で上位層も正解をいかに早く出すかに特化したトレーニングばかりやってきました。その結果出来上がったのが、上位層は要領よく業務を処理し、中間層は言われた通りに動く組織です。これまでの日本は、少数のイノベーティブな人材を厚い中間層が支えてきたとも言えます。

 

かつて、中間層の厚さは日本の良いところでした。格差が少なく、みんながそこそこ豊かな社会です。ところが、このまま考え方を変えなければ中間層はAIとの競争になり、みんな貧しくなってしまいます。

 

勉強ではなく学問を

 

もちろん、次期学習指導要領でも知識が大切なのは変わりません。しかし、テストのために知識を詰め込むのはもうやめたほうがいい。この点を変えるには教員側の意識改革がポイントになるでしょう。

 

そもそも自分の教科は何のためにあるのか? 教師は、その問いに対して答えを持っている必要があると思います。学ぶことは自分の人生を広げていくもの、本来は面白いものです。自分の知らないことを学び(=学)、問いを立てること(=問)、つまり「学問」が本来の姿です。ところが、教師というのは「学問」ではなく勉強が好きな人が多い。学問ではなく勉強をする生徒が好きだし、行事まで勉強のためと位置付けています。そこから脱却できるかどうかがポイントです。

 

本校では研修などを積極的に行い、先生方が新しい授業のスタイルを共有していくように取り組んでいます。古いタイプの教師の中には、生徒に意見を主張させると学級崩壊につながるのではと心配する人もいます。学校の中でしか通用しないちっぽけな倫理観で抑えつければ反発もあるでしょう。もっと大きな突き抜けた善を提示すれば今の若者は目を輝かせます。

 

課題解決授業(PBL)

 

人間が求める正しさには真・善・美があると言われます。真は、知識、論理的・理性的な正しさ。善は、倫理的に良いもの、たとえばグローバル・ゴールズ※1や社会への貢献。美は、たのしいこと、ワクワクすること、感覚的に良いと思うこと。このようにわけられると思います。

 

これまでの教育は「真」に偏りすぎていました。「善」の指導もありましたが、生活指導などのローカルなものしか行ってきませんでした。国境を超えて未来の人たちにも通じる突き抜けた「善」、たとえば地球環境を考えるというテーマであれば生徒たちはワクワクして取り組んでくれます。

 

生徒が生き生きと学ぶ21世紀型教育

 

大学のブランドだけではもう通用しない

 

インターネットの時代、東京に本社があれば、大阪に多くの社員はいりません。いまの子供たちが社会に出る頃には、関西の経済はもっと厳しいかもしれません。

 

ですから、それなりの企業に入ってもイノベーティブな仕事ができないとただの東京の下請け仕事です。グローバルでボーダーレスな時代に、関西人の優れたコミュニケーション力は強力な武器になるはずです。独自の新しいものが創造できると感じています。

 

子供たちは、40歳前後にシンギュラリティ※2を迎えます。親世代になる頃に、世の中は明らかに変わっているのです。そんな子供たちは「未来からの留学生」。どんな贈り物を持たせて未来に送り出すのか、教育の責任は重いと思います。決してAI時代に途方に暮れる「過去からの難民」にしてはいけないのです。

 

今後、大学のブランドは重要ではなくなっていくでしょう。知識の詰め込みで大学入試を突破しただけの人はますます役に立たなくなっていきます。何をしたいのか、何を学びに大学に行ったのか、自分なりのライフデザインが求められます。

 

保護者・受験生の意識改革

 

一部から「本当に大学入試は変わるのですか?」という疑問の声も聞かれます。しかしそもそも、中等教育は大学入試のためにやっているわけではありません。このままの受験勉強で子供たちの将来にとって良いのかを考えなければいけない。世の中は確実に変わります。大学入試がどうなるとしても教育を変える必要があるのです。そうでなければ、地球規模の課題解決にも間に合わないし、想像できないような未来のテクノロジーにも対応できません。

 

技術の進歩で人間はより人間らしい生き方ができるようになるはずです。そんな未来で、ずっと必要なのは「人の心を満たすもの」です。学んだことを活かして地球環境や人類全体に貢献する、そのために学ぶ、というのはとても人間らしい、未来の生き方だと思います。

 

教師には、少なくともグローバル・ゴールズのような地球全体の問題を生徒に伝える義務があります。今の子供たちにはそういう大きなテーマを考えて生きていってほしい。大学受験や学校内の小さな善がゴールなのではありません。文系であれば地球全体の課題を、理系であれば宇宙の真理を、そういうところに子供たちが興味を持って、楽しいと思いながら学びを深めていく。それがこれからの人間らしい生き方だと考えています。

 

 

※1 グローバル・ゴールズ:国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)。貧困や飢餓の撲滅、地球環境の保護など17の目標から成る。すべての人が平和と豊かさを享受できることを目指す。

 

※2 シンギュラリティ:技術的特異点。一台のコンピュータの計算力が人類全体のそれを上回る時点。2045年に到達すると予測されている。

 

私のミライ年表 石川一郎
未来への抱負 教育・社会の変革 現小6
現在 21世紀型教育の発信源として教育改革を後押しする 小6
2020 教育改革をリードする学校を増やす 中2
2025 卒業生がグローバルゴールズにコミットしていく 2020年代 塾・予備校が入試対策 学校は探究型やALと役割分担が進む 大1
2030 21世紀型教育が日本全体に浸透し、教育改革が完成 24歳
2045 シンギュラリティ到達 39歳

 

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