MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― 子供たちのシンギュラリティ

2019.4.12

第5回 2040年 理解度を確認するテストは不要になる

小泉 貴奥

日本シンギュラリティ協会 小泉 貴奧

米国テキサス大学アーリントン校学際学部卒。レイ・カーツワイルの思想に傾倒し、帰国後2007年に日本シンギュラリティ協会を設立。講演やセミナーを開催し概念の普及に努める。ベンチャー企業を3社立ち上げ、電子カルテや各種ネット系サービス、人工知能開発を行うなど、シンギュラリティの実現へ向けて邁進している。
日本シンギュラリティ協会
https://www.facebook.com/groups/JapanSingularityInstitute/

 

個人でカスタマイズする学び

前回はアイコン(脳機能を拡張するナノマシン)の登場によってどのように知能が高められるかを考えてみました。今回はこれらの変化によって学習や入試などの教育システムがどのように変化するかを考えます。

学習方法は、パーソナライズされていくと考えられます。従来型のアナログな学習とICTを通じたデジタルな学習システムの中から、理解や興味、将来の希望を加味しルートを設定し自分に合った方法を選ぶようになるでしょう。個人の興味対象や理解度合の差に応じて、効果的な学習方法が異なる上に、世界的な教育水準の向上による競争激化もあって、パーソナライズの需要が高まるためです。

拡張現実などのデジタルコンテンツを取り込みつつ、アナログな学習コンテンツも進化していくと思いますが、流通コストが安価で複製も容易、多彩な表現も可能なデジタルコンテンツがより拡充されることになるでしょう。

このように、将来的な個人の学習環境は、パーソナライズされた形でアナログ・デジタルを組み合わせながら オフライン学習とオンライン学習の境目があいまいになりつつ、洗練されていきます。それを個人が自由に選んで学ぶことで、現在よりも子供たちが成りたいものになれるための選択肢が広がると考えられます。

 

意欲や学習動機にも好影響

アイコンを学習に活用すれば、例えば本を一読すれば文字や画像をアイコン内に保存し検索対象にできますし、立体的なものも形状を記録できるため、何度も同じ教科書を読む必要はなくなるでしょう。また、視野にデジタルコンテンツをオーバーラップでき、解説によって不明点を潰せるため、理解の速度が上がります。

アイコンは個人の興味や探求する力を持続させることができるため、学習は今よりもずっと楽しいものになるはずです。そもそも何のために学習するのか、という意欲面の問題を抱える子供にとっても、個人の特性や目標設定に応じて、それを実現できる確度の高い学習スケジュールやシミュレーションが組めるアプリを使用することにより、身の回りの人間の世界観を超えた、広い視野を持って人生を選択できるようになります。自分の将来の展望をより鮮明に具体的に考えることができ、学習に対しても意味付けがしやすくなるでしょう。

 

テクノロジーを使いこなした者同士の頂上決戦

多くの読者にとって関心がある入試に関しては、変化に少し時間がかかると考えられます。ただし、トップ校に入るための競争はいっそう激化します。

現在でも多くの保護者は自分の子供に最高の教育環境を与えたいと考えており、ボーディングスクール※1に子供を通わせたり、世界を視野に入れた教育を受けさせたりすることが今後ますます増え、加えて発展途上国の教育水準も高まり、トップ校への入学希望者は増加することが予想されるからです。

そのような中、ヌートロピックとも呼ばれる脳機能を活性化させ、集中力を高めるスマートドラッグが米国を中心に出回っており、アイビーリーグの学生たちの69%がエッセイ作成に、66%が試験用の勉強に、27%がテストを受けるときに使っています。46%の学生はそれを使うことをチートだとは思っていないと匿名のアンケートで回答※2しています。

ヌートロピックは副作用がある場合もありますが、それがなく、より高機能なアイコンが実用化されれば、入手可能な人から導入していくことは容易に想像できます

教育機関における知識確認の意味としてのテストは本来、理解度合を確認するためのものです。アイコン使用者がマジョリティーとなれば、そのようなテストは不要になるかもしれません。ただし、世界中から希望者が集まるトップ校への入学は、アイコンを使用した上で、さらに研鑽を積んだ者同士の熾烈な競争になるのではないでしょうか。

 

※1 米国を始め、英国、スイス、シンガポールなどに分校のあるアイビーリーグの進学に特化した学校

※2  Tyler Kingkade “Many Ivy League Students Take Study Drugs And Don’t Consider It Cheating”
huffingtonpost 2014年5月2日

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