将来、子供たちはAIと共存する社会で生きていきます。その社会ではネットワーク型の組織のあり方が一般的になり、価値を生み出す個性が一層重要なものと考えられるでしょう。今回は、未来の組織のあり方と人の生き方について考えてみました。
ネットワーク型社会へのシフト
これからの世界は、自ら思考するかしないかで個人差が広がり、上意下逹のタテ型社会から、個性が尊重されるネットワーク型の多方向の社会にシフトするでしょう。
「ティール組織」という概念があります。2014年にフレデリック・ラルーの著書『Reinventing Organizations』で紹介されたものです。本書では、組織が採用するマネジメント方法を5段階のフェーズに分類して、色でフェーズを分けています。レッド組織は支配的マネジメントをおこない、アンバー組織は役割を厳格にまっとうし、オレンジ組織は、ヒエラルキーは存在するが成果をだせば昇進可能。グリーン組織は主体性が発揮しやすく多様性が求められ、組織を一つの生命体として捉えるのがティール(鴨の羽色=青緑色)組織、といったものです。
私としては、2040年代は、組織すら不要な”ライト(Light)”になるのではないかと考えています。これは個人が、興味のないことや苦手なことはすべて人工知能やロボットなどに任せることで雑事から解放され、自らの人生を最大限楽しみ、得意なことを追及することで可能になると考えます。個性が最大限発揮されることで、その個人は組織に頼らなくても十分に魅力的になるでしょうし、そういった人々が必要なときにつながり、共通の目的を達成することで、楽しみながら複雑な問題も解決されるようになるでしょう。
社会のためではなく自分のために学ぶ
こういった世界を実現させるためには、以前から登場している強力に個人をサポートしてくれる人工知能の活用や個人の意識の変革も必要になってきます。
人工知能の活用に関しては、自分のやりたいことに集中するため、それ以外の煩雑な手続きなどを自動で処理させることにますます活用されていくはずです。学びも興味あることに集中し、学びを深めて専門性を高めることで自分の価値は高まるはずですし、何よりそのような学びは楽しいでしょう。
個人の意識の変革に関しては、社会やテクノロジーの動向というよりは、結局自身がどう人生を楽しみたいかという問いに、他でもない自分が答えを出す必要があると感じます。というのも、今までの学校教育は、同質のスキルを持った人材を量産するシステムで、個性は重要視されませんでした。自分がどうありたいかよりも、社会や組織にとっての個人のあり方を問われてきたと言えるのではないでしょうか。
”グライダー人間”ではなく”飛行機人間”に
今までは同じ年齢の子供を集め、同じ服を着せて、同じ時間にトイレや食事に行かせて、時間を区切って同じ内容を教えていました。また、他の子供と比べて順位付けして競争させ、嫌いなものや苦手なものも詰め込み、暗記中心の学習によって思考停止状態を作りだしていました。少しずつ我慢させられ、「これぐらいは仕方がない」と従い続けるゆでガエル状態が続くことで、型にはまった”常識人”ができあがり、自ら飛行できない”グライダー人間”が量産されてきたのです。効率的に管理をするためには都合の良いやり方かもしれませんが、個人が人生を楽しみ尽くすという観点では適切な方法とは言えません。
近年、このようなシステムの弊害が無視できないほど大きくなり、生産性の低さへの批判や生産性向上が声高に叫ばれ、イノベーションをおこせたり価値を生みだせたりする人材が重宝されるようになってきました。価値とはつまり個性の表現の結果であり、個人が楽しんで追求したものが他の人の心を動かし感動をよび魅力となる——つまり自分自身と向き合い、どういう生き方をしたいかを自ら考えられる人が学びを深掘りでき、個性を最大限発揮し、人生を楽しみ味わい尽くしながら価値を生みだすことができるようになるのです。そういった生き方をしている人同士は互いに尊敬や感謝をし合い、自律的な行動ができる”飛行機人間(=自ら飛行できる)”なので、管理の必要はありません。私はそういう社会を創造したいと考えています。