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ミライノマナビコラム  ― 授業が変わる 学校が変わる

2020.8.14

第10回 ウィズコロナ時代の授業のすがた

益川 弘如

益川 弘如

博士(認知科学)
聖心女子大学現代教養学部教育学科 教授
認知科学者。学習科学、教育工学、協調学習が専門。
著書に、「学びのデザイン:学習科学 (教育工学選書II)」(編著)、「21世紀型スキル: 学びと評価の新たなかたち」(翻訳)「アクティブラーニングの技法・授業デザイン」(共著)など。

 

 教育を取り巻く環境の変化は予期せぬ形で突然訪れました。第10回目となる今回までの間に、新型コロナウイルスの感染が拡大。ウィズコロナ時代にいかなる社会を実現していくか、そして、いかなる教育を実現していくか、まさに私たちの「知識創造」が求められています。

 

ウィズコロナ下で分かれた学校の対応

 2020年の4月に、緊急事態宣言が出されたときには、多くの地域の学校は休校となり、各家庭で学習が進められました。現在(2020年7月1日)、小・中・高校では、空き教室の活用や、机配置の工夫をした上で、分散登校あるいは通常登校に戻ったところもあるでしょう。

 感染症対策を取った上で授業を行うとなると、児童・生徒同士が蜜に対話しながら進めることが難しくなります。知り合いのいる小・中・高等学校の先生方、また、教育委員会にどのような状況か聞いてみたところ、大きく対応が2つに分かれていました。

タイプ1:学習環境に合わせて伝統的な授業方法を実施

タイプ2:学習環境を工夫して新たな授業方法を創造

 

学習環境に合わせて伝統的な授業方法を実施する学校

 タイプ1の学校では、蜜を避けるため、児童・生徒同士の対話活動は難しく、教室内で児童・生徒の机の距離を保った上で、教師が黒板を使って解説する授業を行っています。たしかに、児童・生徒が蜜になる状態は回避できていますが、このような授業は第1回のコラムから紹介している「目標到達型・教授中心型」に留まり、新しい学習指導要領で目指している「主体的・対話的で深い学び」から遠のいてしまっています。

 状況に危機感を抱いた先生方から、「まるで対話型の授業が悪のように扱われて困っている。」「従来型の教師が教え込む授業になってしまっては、子どもたちの資質・能力を育むことができない。」「良い方法はないのか? 他の地域や学校ではどのようにしているのか?」といった声が届きました。

 

学習環境を工夫して新たな授業方法を創造する学校

 タイプ2の学校では、児童・生徒の密を避けつつ、いかにすれば「主体的・対話的で深い学び」が実現できるか、創意工夫が行われ、「目標到達型・学習者中心型」さらには「目標創出型・学習者中心型」の授業実践へのチャレンジが行われています。

 このような学校では、タブレット端末等の情報機器も積極的に活用されています。ICTを活用した事例をいくつか紹介しましょう。

ICT活用事例1)互いの考えを共有してコメントする

 タブレット端末上に、自分の考えを書き込み、ネットワーク上で共有します。そして他のクラスメイトの書き込みを見て、それに対して自分の考えとの相違点などを見て、コメントをし合う授業です。このような学習活動を取り入れることで、第3回のコラムで紹介した「うまく学ぶための条件」の一つである「一人ひとりのアイディアを交換し合う場がある」が実現されます。

ICT活用事例2)オンライン会議システムを使って対話する

 タブレット端末にヘッドセットを着け、同じ教室内、または別教室のクラスメイトとオンライ会議システムを用いて小グループで対話する活動を取り入れた授業です。ワークシートに書いた内容もカメラ越しに共有できます。「うまく学ぶための条件」の一つである「話し合いなどで多様なアイディアを統合する」状況をつくりだすことができます。

ICT活用事例3)学校では蜜を避けて家庭学習で対話する

 タブレット端末を家庭に持ち帰らせ、オンライン会議システムを使った小グループでの対話活動を家庭学習で行わせます。その対話活動の結果を、学校の授業で各班発表し合います。「うまく学ぶための条件」の一つである「到達した答えを発表し合って検討する」が実現されます。

 これらは、タブレット端末等の学習環境が整っている地域の例ですが、整っていなくても、工夫はできます。以下がその例です。

ICTなし事例1)付箋を活用した考えの共有とコメント

 付箋に自分の考えを書き込み、教室の中で回し読みをします。クラスメイトの書き込みを見て、それに自分の考えをコメントします。「うまく学ぶための条件」の一つである「一人ひとりのアイディアを交換し合う場がある」が実現されます。

ICTなし事例2)家庭学習の成果を学校で共有する

 家庭学習で自分の考えをワークシートにまとめ、登校します。ワークシートをコピーし、授業中にクラスメイトに配布し、自分の考えと異なる点について発表します。「うまく学ぶための条件」の一つである「到達した答えを発表し合って検討する」場面に活用できます。

 

第2波、第3波に備えて

 今後、第2波、第3波に備えて、家庭学習においても「目標創出型・学習者中心型」を実現していく準備が大事となるでしょう。

 一斉休校の間、「学習環境に合わせて伝統的な授業方法を実施する学校」の対応は、プリント・ドリル教材の配布や、教科書をページ指定した自習、オンラインを活用しても、AIドリルや、授業動画の配信に留まっているところが多かったでしょう。一方、「学習環境を工夫して新たな授業方法を創造する学校」では、学習教材の配信だけでなく、互いの学習成果をオンラインで比較させたり、授業動画に対してチャット画面でコメントし合ったり、オンライン小グループで対話させ教師は各グループを遠隔巡回したり、などの試行が行われました。

 このような実践が積み重ねられ、ウィズコロナ時代においても、教育改革が望ましい方向に進んでいくことが重要でしょう。

 

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