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2021.8.20

[なぜ学びが変わるのか?] 第4回 誰でも天才になれる!?

 

 

2021年度より中学校で、22年度に高校で、新しい学習指導要領が全面実施されます。これまで重視してきた「知識・技能」に加えて「思考力・判断力・表現力等」と「学びに向かう力・人間性」の育成が目指されます。そのために「主体的・対話的で深い学び」(アクティブ・ラーニング)に力を入れることになります。このコーナーでは、なぜこのような教育の改革が必要なのかを、シリーズでお伝えします。今回はテクノロジーによる能力の拡張とアクティブ・ラーニングの関連を考えます。

 

大学院生レベルの課題

 本誌の読者には、福田哲也先生(追手門学院ロボット・プログラミング教育推進室 室長)のコラム「今、なぜロボット・プログラミング教育が必要なのか」でご存知の方も多いと思いますが、初等・中等教育でのプログラミング教育がスタートし、学校によっては、プログラム制御で動くロボットが教材として使われています。

 最近のロボット教材は、小学生にも扱えるようにわかりやすく、親しみやすく作られていて、知育玩具として子どもに買ってあげたという読者も少なくないのではないでしょうか。

 今でこそ、親しみやすくなったロボットやプログラミングですが、20年ほど前までは、プログラム制御で動くロボットを造るというのは、工学系大学院生レベルの課題でした。

 それでは、現在の子どもたちは、かつての大学院生ほどの知的水準にあるのでしょうか。もちろん、一部にはそのような個人もいるかもしれませんが、全体的に見るとわずか20年程度で人間の能力がそこまで変化することは考えられません。

 進化したのは、テクノロジーの方です。コンピュータ学習の研究の成果もあって、この20年の間に、ロボットのプログラム制御は、より安価に試みることができるようになり、より親しみやすいものへと進化したのです。

 

誰もが超人的な能力を持つ時代

 今後、同じようなことが多くの分野で起きていくでしょう。生物としての人間は10年や20年で大きく進化することはありませんが、人間と道具とを合わせた総体としては、急速に進化していくと考えられます。

 このことは、サイボーグのようなSF的技術を持ち出すまでもなく、スマートフォン一つとって見ればわかります。私たちは、スマートフォンを持っていることで、瞬時に情報を検索したり、様々なものの仕入れ・販売をしたり、動画を撮影・編集したり、情報を発信したりすることができます。

 これは大げさに言えば、数十年前の、図書館、商社や商店、テレビ局、出版社の能力を誰もが持っているということです。さらに今後、スマートフォンにはAIを応用したアプリが次々と登場して、優秀な秘書や頼もしいパートナーとなるでしょう。道具が強力になることで個人個人の能力は飛躍的に高まり、誰もが超人的な能力を持つようになるのです。

 

超人的能力自体の価値は下がる

 手に入る能力は確かに強大ですが、ただ持っているだけでは何の意味もありません。現在でもICTツールを十分に活用できていない人がいます。生物としての人間が大きく変わらないので、意識して能力を使いこなしていかなければ、技術に置いていかれるのです。超人的な能力を活用できる人とできない人との差は広がる一方になるかもしれません。そこで大切なのが新しい学びなのです。

 この時、間違えてはいけないのは、新しい学びは、超人的能力それ自体を磨くことであってはならないということです。

 誰もが超人になれる時代に、能力それ自体を競うのにはあまり意味がありません。学びの軸とすべきなのは、能力を活かす先です。つまり「何がしたいのか」がますます重要になってくるのです。

 アクティブ・ラーニング型の学びでは、既存の知識そのものはあくまで前提です。そこから、どんなことに興味があって、それをどんな形で解決したり、伝えたりしたいのかに発展していくことがゴールになります。かつて学ぶべきゴールとされていた知識や技能はすでに道具の側に備わっていて、年々高度にかつ使いやすくなっていきます。

 教育を、基礎となる知識を覚えたり、理解したりして終わりではなく、何がしたいのか、どんな世界にしたいのか、を探す行為へと広げていかねばなりません。それが新しい学びであり、アクティブ・ラーニングが目指すところなのです。

 

ミライノマナビ編集部

ミライノマナビ編集部

グローバル化&AI化が子供たちにとって明るい未来となってほしい。来るべき未来に対して教育は何ができるのか、子育て世代やこれから社会に出る若者たちみんなが考えるきっかけを提供していきます。

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