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2021.10.22

子供の才能を開花させる小さな成功体験

 

保護者の立場では、少しでも子供の成長に寄与することをさせてあげたいと思うもの。しかし、保護者の思惑通りに子供は興味を示してくれない。その一方で、保護者が気づかないうちに子供は自ら成功体験を積んでいることもある。小学生の子供を持つ本誌記者が体験したエピソードを紹介する。

 

子供の意欲が急変した我が家の事件

 我が家の長男は今年で小学校4年生だが、最近まで進んで勉強することはなく、宿題も嫌々やっている程度だった。必然的に、テストでも問題文を最後まで読まずに答えたり、漢字をきちんと書けなかったりというミスが多かった。

 親としては心配ではあったが、妻と相談して「自発的に勉強するようになるのを我慢強く待とう」「このままずっと勉強が嫌いならば、学歴が問われない道で生きていけばいい」とやや割り切って考えることにしていた。

 ところが、ある日突然、テストの点数が良くなった。公立小学校で出されるテストだから、特別優秀ではなくても良い点数が取れるような難易度なのだが、目を見張るような変化ではあった。

 学習に積極的になったきっかけとして思い当たることが一つある。それは登山での成功体験だ。

 

偶然に偶然が重なった成功体験

 新型コロナによる臨時休校と外遊びができない期間が続いたことで、親子共々運動不足が気になっていた。その解消策として、自宅の近くにある300メートルほどの手頃な山に週末ごとに登ることにした。息子はピクニックが好きなので、弁当を作って山の上で食べるのを楽しみにしていた。

 それが何ヶ月か続き、小学校のスポーツフェスティバル(運動会)を迎えた時、私は励ますつもりで「毎週山登りして鍛えられているから、走るのも速くなっている」と言って送り出した。リレーに出場した息子は、たまたま組み合わせが良かっただけかもしれないが、2人を抜いてトップでバトンを渡すことができた。

 おそらく、これがきっかけだったと思う。練習すれば上手くなる——この当たり前の事実は、しかし子供に言って理解させるのがとても難しい。いや、子供も理屈としてはわかっている。実感することが難しいのだ。

 

努力が先か成功が先か

 努力してうまくいけば、もっと努力しようという気になって、ますます成果が上がる。勉強でもスポーツでも、どんどん上手くなっていけば、努力の苦しさよりも成功の楽しさの方が勝るのだ。

 しかし、うまくいくためには、まだうまくいった経験のないことについて努力しなければならない。つまり、難しいのは「最初の成功体験」だ。努力して成功するという経験が一度でもあれば、その後の努力は、ハードルが下がる。成功体験を積んでいけばどんどんハードルが下がっていく。

 だが、最初の成功体験をどうやって体験させればいいのだろうか。無理に努力をさせては、最初の成功体験に到達する前にその分野を嫌いになる恐れがある。

 

小さな成功を認めることが大きな才能へ

 狙って成功を体験させるのはとても難しい。では、どうすればいいのか。子供がそれを体験する機会をじっと見守るしかない。本人が嫌がらない好きな分野から始めて、その成功を保護者が認めてあげることがとても大切だと思う。取るに足りない成功だからといって軽んじてはいけない。「そんなことで満足するな」と言われてより高みを目指せるのは、よほど精神力の強い子供か、すでに十分な成功体験を積んだ子供だけなのだ。

 子供が自ら取り組みたい好きな分野には、ゲームのように保護者が価値を理解できないものもあるだろう。それでも、しっかりと認めることが大切だ。保護者が認めた分野でしか成功が認められないとなれば、子供は自らの進む道に自分で制限を課すようになる。進みたい道を閉ざされた子供が、どうして自発的に学ぶだろうか。

 棋士の羽生善治永世七冠に次のような言葉がある。

何かに挑戦したら確実に報われるのであれば、誰でも必ず挑戦するだろう。報われないかもしれないところで、同じ情熱、気力、モチベーションをもって継続しているのは非常に大変なことであり、私は、それこそが才能だと思っている。」

 報われないかもしれないところで情熱や気力を支える柱の一つが成功体験だ。そして、それは小さな「最初の成功体験」から始まる。小さな成功体験を積み重ね、少しずつ挑戦する対象を大きくしていくことで子供は成長する。最初の芽は見逃してしまうような取るに足りないことかもしれない。才能として花開く小さな芽を摘むことがないようにしたい。

 

ミライノマナビ編集部

ミライノマナビ編集部

グローバル化&AI化が子供たちにとって明るい未来となってほしい。来るべき未来に対して教育は何ができるのか、子育て世代やこれから社会に出る若者たちみんなが考えるきっかけを提供していきます。

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