MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ホーム  ≫ ミライノマナビTOPICS  ≫ サボりたい時にこそ自学のチャンスがある

ミライノマナビTOPICS

2023.1.27

サボりたい時にこそ自学のチャンスがある

 

 

我が子が、学校が好きで勉強大好きであれば、保護者としては当面心配することもないだろう。だが、そうでない場合も当然あり得る。「学校をサボりたい」と子供が言い出したら、保護者はどう対応すれば良いのだろうか。そんなピンチに遭遇した本誌記者が実際の体験談とそこから得られた気づきを紹介する。

 

学校を休む呆れた理由

 筆者の息子は現在小学校5年生。学校が嫌いと言うわけではないようだが、何かにつけてサボろうとする、少し怠惰なところがある。先日も、人生初の筋肉痛を患い、それを理由に学校を休みたいと言ってきた。

 筋肉痛を理由に学校を休むなど聞いたこともない。私は呆れて「そんなことは休む理由にならない、学校に行きなさい」と言うと「いや、歩くと痛いから行けない」と口答えする。「じゃあ車で送ってあげる」「いや、階段を昇れない」と埒があかない。いつまでもお互い納得せず、これはきちんと叱らないといけないか、とも思ったが、少し考えてみる。

 

親子とも納得の解決策

 親には、子供に教育を受けさせる義務がある。それに対して、子供には、学校に行く義務はない。どうしても嫌ならば学校を休むのも本人の自由だ。

 日本にはいまだに「毎日休まず学校に行く」ことを美徳のように捉える風潮がある。皆勤賞に類するものはさまざまなところに残っている。しかし、それは本当に美徳なのだろうか。人間なのだから、辛い時、無理のきかない時はあって当然だ。仕事でも「過労で倒れるぐらいなら休んだ方が良い」「休むのも仕事のうち」と頭では理解していても、なかなかそれを徹底できない。小学生時代の教育からしてそうなっていないからかもしれない。

 とはいえ、好き勝手に休ませていては、保護者として教育を受けさせる義務を怠ることになる。そこで、私は我が子に次のような提案をした。

「病気ではないのに学校を休むのだから、6時間分、家で勉強をする必要がある。今日の時間割通りに自分で考えて勉強をしなさい」

 これで双方納得の結論に達した。とりあえず、我が子を叱ることはせずに済んだ。これだけでも子育てでの勝利みたいなものだが、この結論を選んだことには思わぬメリットもあった。

 

教科書はゲームより面白いのかも?

 それは、時間割が「音楽」になった時間のことだ。それまでは国語・算数のテストの直しや漢字の書き取りを黙々としていた息子が、在宅で仕事をしていた筆者のところにやってきて「音楽の時間は何をすればいい?」と質問する。

 私も困惑した。確かに国語や算数であれば、自習の内容も決めやすい。だが、音楽……一体どうすれば良いのだろう?

 息子は最初「歌を唄う」と言い出した。ちょっと待て、こちらは仕事中だ。防音設備などあるわけもなく、ご近所に迷惑かもしれない。唄うのはやめて欲しいと伝える。「じゃあ、何する?」と考えている間にも時間が過ぎていってしまう。仕方がないので「音楽でなくてもいいから、この時間は好きな勉強をしなさい」と答えた。

 すると、息子は社会科の教科書を取り出して「これを読んでもいい?」と言うではないか。社会科の教科書を読むのは立派な勉強で、否定する理由など何もない。私は、図鑑や教育漫画を読むこと、マインクラフトで何かを建築することなどを想定しつつ「それでもいいけど、他に自分の好きなことで勉強になるものなら何でもいい」と付け足す。息子は「社会の教科書は面白いねん」と言って興味津々に読み始めた。特に自然災害に関するところが好きなようだ。

 思わぬメリットとはこのことである。今回、学校をサボったことで、自学自習を体験させることができた。特に、音楽の時間に止むを得ず「自由に勉強をする」としたことで、好きなことを自ら学ぶ、という貴重な体験ができた。

 

人間には自ら学ぶ力が備わっている

 5年生にもなると、精神年齢が成長し、誰かに強制・指示されなくても、好きな学びができてくるものなのだろう。もちろん、何年生でこの精神年齢に達するのかは個人差が大きく、もっと早くから指示されずに自学のできる子もいるだろうし、何歳になってもなかなかできない子もいる。我が子はそれが5年生だったわけだ。

 そして、その精神年齢に達した段階で「させられる勉強」ではない勉強をしておくことは、今後の成長にとって、とても重要なことだろう。最初は、筋肉痛程度で学校に行かせられないことに、親としての力量不足を感じたが、結果的にそれ以上の得るものがあった。

 子供は独立した一個の人格であり、たまにはサボりたいこともある。それに対して、厳然として許さないのも一つの教育方法だが、たとえ、それを許したとしても、子供はずっとサボっているわけではない。人間には多かれ少なかれ、面白いと思ったものを自ら学びに行く力が備わっているからだ。ただし、この力は学ぶ内容が決められていては発揮されない。自由な学びの時間があって、初めて発揮されるもののようだ。

 

ミライノマナビ編集部

ミライノマナビ編集部

グローバル化&AI化が子供たちにとって明るい未来となってほしい。来るべき未来に対して教育は何ができるのか、子育て世代やこれから社会に出る若者たちみんなが考えるきっかけを提供していきます。

Category カテゴリ―