MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ホーム  ≫ ミライノマナビTOPICS  ≫ 英語嫌いの我が子が英語を使って遊ぶようになったあるきっかけ

ミライノマナビTOPICS

2023.6.16

英語嫌いの我が子が英語を使って遊ぶようになったあるきっかけ

 

 

新課程のスタートで多くの子供を持つ家庭にとって他人事ではなくなった英語教育。3年生で外国語活動、5年生で教科「外国語」を学ぶ。我が子と英語の出会いがスムーズであれば、保護者として一安心だが、そうではない場合もあるだろう。今回は、英語との最悪の出会いから英語を使って遊ぶまでになった本誌記者の子供のエピソードを紹介する。

 

タイミングを誤った英語との出会い

 筆者の息子は今年で小学校6年生。ちょうど3年生に上がる年に、英語活動がそれまでの5年生から3年生に早められた「小学校英語4年制」の一期生だ。それに加えて、世界のグローバル化がどんどん進み、共通語としての英語が将来欠かせない時代を生きる世代でもある。

 それらの理由もあって、6年前、小学校入学前のタイミングで英会話スクールに入会させようとした。だが、この時、彼は拒否反応を示し、体験入学のわずか半時間ほどで、すっかり英語が嫌いになってしまった。

 我が子は、どちらかと言うと、自分の意見を主張するタイプなので、嫌なものは嫌だとはっきりと言う。これは親としては救いである。本音では嫌だと思いつつ、それを表に出さず親に言われたまま習い事をこなされるよりはずっと良い。嫌々習ったものが身につくはずもなく、お金も時間も親の労力も無駄になるからだ。

 子供は世の中にどんな分野があるのかを知らないから、それを見せたり提案したりするのは親の重要な役割だ。ただ、タイミングを誤ると、しばらくの間、場合によっては数年間、その分野に寄り付かなくなる。そのことをこの体験入学で思い知らされた。

 

英語を学ぶ意義を実感するのは難しい

 日本では高等教育も日本語で受けることができる。母国語で高等教育を受けることができるというのは、実は世界的に見ても恵まれた環境なのだ。だが、皮肉なことに、先人が作ってくれた恵まれた環境が、かえって日本人のグローバル対応を鈍らせてもいる。

 読者の皆さんも学生時代に「英語ができたら格好いい、素敵だ」とは思っても「英語ができないと食べていけない、高度な教育が受けられない」とまで感じたことはないのではないだろうか?

 我が子もその例に漏れず「なぜ英語を学ばなければならないのか?」という疑問をよく口にした。「将来、社会で必要だから」という大人の説明では到底納得しない。当たり前だ。周りの大人もほとんど日本語で生活している。英語が必要とされる「社会」を見たことがないのだ。海外旅行の経験もあるが、そこで日本人が生活しているわけではない。小学生の子供にとって海外は非日常の世界なのだ。

 それに、一度嫌いになったものを再評価するのは難しい。再評価するためには、英語が実際の生活で役に立つ場面を見る必要があるが、そんな機会はなかなか訪れなかった。

 

英語を身近に感じた世界遺産体験

 転機となったのは、春休みを使って行った広島・宮島旅行だ。これを機に、息子の英語に対する評価が変わった。宮島にある厳島神社は1996年に世界遺産に登録されて以来、海外からの訪問者が増えている。コロナ禍前の2019年、広島県には年間265万人が海外から訪れている。コロナ禍で一時期大幅に減少したが、今年は観光客がかなり戻って来ているようだ。

 宮島では当たり前のように英語が飛び交う。何も有名ホテルや高級レストランに行くまでもない。街中の小さな土産物屋や飲食店の店員が、英語を使って接客をする。グローバル時代の地方の姿として提唱された「グローカル」を地で行く状況が現出している。

 もちろん、大阪や神戸にも外国人は多い。だが、日本で生活する彼らは日本語の能力が高く、小学生が身近に感じる場所にもいない。一方、宮島では、多国籍間のコミュニケーションを小学生でも身近に感じることができた。

 英語を使ったコミュニケーションは一部のエリートが行う特別なことではないし、別世界で起きていることでもない。この実感を得るのに世界遺産はとても良い教材となった。

※グローカル:グローバル(global)とローカル(local)をかけ合わせた造語。「国境を越えた地球規模の視野と、草の根の地域の視点で、さまざまな問題を捉えていこうとする考え方。グローカリズム」(大辞林)

 

焦らなくても成長のタイミングはやってくる

 旅行から帰ってから、息子は英語翻訳アプリを使って、いろいろな表現を翻訳して遊ぶようになった。外国語の表現の面白さや、日本語と異なる発想に興味を持ったようだ。

 小学生ぐらいの子どもは、面白いこと、興味深いことが大好きだ。皆さんもご存知のように、好きなことや楽しいことは放っておいても自分から見つけてくる(多くはゲームやネット動画なのだが……)。

 外国語の習得は年齢が若ければ若いほど良いという説がある。確かにネイティブのような美しい発音のためには幼少期からの習熟が必要だろう。しかしながら、子どもの側がまだ受け入れる準備ができていないのに、焦って押し付けるのは逆効果の恐れもある。

 受け入れる準備はその子の精神年齢による。従って個人差が大きい。周りと比べて焦る必要はない。我が子を信じて、そのタイミングが来るのを辛抱強く待つことが、長い目で見て最も効果の高い教育方法ではないだろうか。

 

ミライノマナビ編集部

ミライノマナビ編集部

グローバル化&AI化が子供たちにとって明るい未来となってほしい。来るべき未来に対して教育は何ができるのか、子育て世代やこれから社会に出る若者たちみんなが考えるきっかけを提供していきます。

Category カテゴリ―