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2025.8.29

[なぜ学びが変わるのか?]第19回 学びは真・善・美へ

2021年度より中学校で、22年度に高校で、新しい学習指導要領が全面実施されました。これまで重視してきた「知識・技能」に加えて「思考力・判断力・表現力等」と「学びに向かう力・人間性」の育成が目指されます。そのために「主体的・対話的で深い学び」に力を入れることになります。このコーナーでは、なぜこのような教育の改革が必要なのかを、シリーズでお伝えします。最終回である今回は、AIとの共存のあり方から、学びの未来について考えます。

 

人間の最も大きな強み

「人工知能がどれだけ進化し思考できるようになったとしても,その思考の目的を与えたり,目的のよさ・ 正しさ・美しさを判断したりできるのは人間の最も大きな強みである」(小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解説 総則編)

 この文言は現在の学習指導要領の解説にも明記されているものです。人間の最も大きな強みは良さ、正しさ、美しさ、つまり「真・善・美」にあると述べています。

 現実の世界や人間関係、社会生活などを実際に体験できないAIには、人にとって何が良いのか、何が正しいのかについて答えを出すことは容易ではなく、それらを判断することが最後まで人間に残される役割となるでしょう。

 現在のAIが現実世界に立脚せずに答えていることは、AIが時折起こす「ハルシネーション(幻覚)」からも垣間見られます。ハルシネーションとは、AIが回答を分からない時にも「分からない」と答えず、文章を埋めようとして堂々と間違ったことを答えてしまう現象です。現状のAIにとって「世界のすべて」は閉じた言葉の海であり、その海の外にある現実世界を参照できないことから起きる「シンボルグラウンディング問題」の一つとも言えます。

 しかしながら、このハルシネーションを起こさないAIを作ろうとすると、辞書的な事実以外は答えず、アイデアや仮説についてブレインストーミングの相手ができない堅物なAIになってしまうそうです。

 このことからわかるのは、ハルシネーションとはAIだけの問題なのではなく、閉じた意味のネットワークの中にいる知的存在すべてにとって避けられない問題だということです。

シンボルグラウンディング問題:AIが言葉などの記号(シンボル)を実世界の意味に結びつけることができないという、人工知能研究の根本的な課題のこと。

 

人間のハルシネーション

 現代は「ポスト真実」時代とも言われています。インターネットなどを介して広まった「信じたい情報」の影響力が確認された真実よりも大きくなった時代という意味です。これは、人間が起こしているハルシネーションと見ることができます。

 私たちの脳は、じっくりと時間をかけて真実かどうか確かめることよりも、感情的に反応することの方が得意なように進化してきました。近くの茂みからガサゴソと音がした時に「あの音の源は何だろうか? 様々な仮説を立てて検証しよう」と考えるよりも「何かわからないけど怖いから逃げよう」と反応する方が生き延びやすかったのです。

 そのため「ポスト真実」という用語自体は近年のものながら、現象自体は人類が言葉を使うようになって以来、ずっと続いてきたものです。それが近年になって、マスメディアやインターネットが普及したことで目立つようになったに過ぎません。たとえば、真・善・美の象徴とも言える古代ギリシャでも、扇動政治のような「ポスト真実」現象が見られていました。

 扇動政治であれ、インターネットであれ、その中に閉じていれば、私たち人間の脳もハルシネーションから自由ではありません。では、ハルシネーションから自由になるために必要なことは何でしょうか? それは閉じた世界の外とつながることであり、そのための方法の一つが「目的のよさ・ 正しさ・美しさを判断」するための学びなのです。「真・善・美」の判断は、閉じた意味ネットワークの中だけでは不十分で、知らない世界や価値観とつながることが求められます。

 生成AIが文章を埋めるかのような安易な答えに飛びつくことなく、時間をかけてじっくりと調べて、注意深く比較検討し、すぐに結論を出さずに考え続けて、他者と意見をかわす、という、いわば泥臭い学びこそ、AI時代により価値が高まるのです。

 

人類の進むべき道を示す

 先日、OpenAI社がGPT-5を発表しました。日進月歩で賢くなっていくAIに対して、いまや教育現場も「使わない」という状況ではなくなってきました。一方で、本来人間が考えるべきことまでAIに頼ってしまっては、未来に待っているのはディストピアです。私たち人間は最強の武器である「真・善・美」を携えて、人類に幸福をもたらすためにAIに進むべき道を示し続けなければなりません。どのような指示をするのが良いのか、正しいのか、美しいのか、そのための眼を養うような学びが大切になってくるのです。

 

ミライノマナビ編集部

ミライノマナビ編集部

グローバル化&AI化が子供たちにとって明るい未来となってほしい。来るべき未来に対して教育は何ができるのか、子育て世代やこれから社会に出る若者たちみんなが考えるきっかけを提供していきます。

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