MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ホーム  ≫ ミライノマナビTOPICS  ≫ 今年もワクワクさせる良問が多数2018年進学館入試分析会「神大附属」

ミライノマナビTOPICS

2018.4.5

今年もワクワクさせる良問が多数
2018年進学館入試分析会「神大附属」

2月27日、進学館による今年の中学入試分析会・神戸大学附属(KU)が開催された。KU専門クラスを持ち、国公立一貫校合格に定評ある進学館ならではの詳細で的確な分析を聞くことができた。国公立一貫校の入学検査で行われる適性検査は2020年以降の入試のスタンダードを占うもの。その適性検査の内容をレポートする。

 

とにかく記述が多い

KUの入学適性検査(以下、入検)のもっとも大きな特徴は「とにかく記述が多い」ことだ。記述式の解答から程遠いような自然環境(理科)でも30問中11問が長文記述による解答だった。

市民社会(社会科)で48%、数理探究(算数)で43%が記述問題であり、言語表現(国語)や作文以外でも文章で答えを書くことが求められる。つまり、表現力が問われているということだ。

もちろん、単に文章をうまくキレイに書く能力だけが検査されるわけではない。たとえば、市民社会・大問3の海外交流の問題では「徳川家康の時代と家光の時代では外国との交流のあり方がどう違うのか、説明しなさい」という設問だった。

小学校で学んだ知識を元に、「問い:家光が採った対外政策は何か? 答え:鎖国」のように単純にその知識の有無を問うのではなく、知識について深い理解ができているのかが問われる。

 

どのように考えたかが問われる

二つ目の特徴は「考えの過程を問う理由説明」の多さだ。今年度は灘中学校の算数でも理由説明の問題が出され話題となったが、理由説明では「なんとなくわかった」とか「塾でそう習ったから」では答えにならない。考えや理解を言葉にして人に伝えるというスキルは、従来型の入試では軽視されてきたものだが、次期学習指導要領では学習の柱となるものの一つだ。

言語表現・大問3では「鳥の鳴き声」についての会話文とレポートについて出題され、空欄に入る絵を選び、選んだ理由を答えるという問題が出された。

また、数理探究では、大問3「あみだくじでは全員に一つずつ当たる。なぜですか?」という問題と、大問4「7人席と10人席の新幹線で「ちょうど座ることができる人数」ではない数のうち最大のものを答え、理由も説明する」問題が出された。

 

解いていて楽しいユニークな問題

KUの入検を評して、進学館の担当講師は「解いていて楽しい」という。従来型の入試に見られるような「辛抱強く作業する」タイプの問題とは全く異なるものと言える。よく入試問題にはその学校からのメッセージが込められていると言われる。解いて楽しい問題には、学ぶことは楽しい、楽しいから好きになる、好きなことはもっと深く学びたい、というKUの先生方からのメッセージが込められているような問題だ。

言語表現・大問1 「人間万事塞翁が馬」の語源についての出題では、起こった出来事と塞翁の反応を表した絵を時系列に並べる。絵で表されている塞翁の反応を読み取るというのは、高度な読解力ながら、漫画を読むような楽しさがある。

市民社会で例年出題される作図問題では、人口密度で県を塗り分ける問題が出された。確かに学習なのだが、塗り絵的な楽しさがある。

数理探究の大問1では、ボルト選手と100メートル走を走った時の距離の差を求める問題が出された。問題自体は速度と距離を求めるオーソドックスなものだが、モチーフを身近だけど非現実的なものにすることで、解いていると実際に自分がボルト選手と競争した場面が思い浮かびワクワクするだろう。

 

もっともKUらしい「答えが一つではない問題」

もっともKUらしい特徴が「あなたの考え(意見)を述べなさい」という答えが一つとは限らない問題だ。

答えが一つではない問題に取り組む、というのはこれからの世界が直面するグローバルな問題の数々で噴出する現実であり、世界的な教育改革の本来の目的であった「三度目の世界大戦を起こさない知の在り方」を実現する上で、重要とされる課題だ。

自然環境・大問3では、風を利用して動くおもちゃを使っての問題が出された。そこで「船やヨットと違い、風を受けて進む車が重要な役割を担ったことがないのはどうしてか」が問われた。分析会では「海と比べて陸上では安定した風を受けることができないから」が模範解答とされたが、陸上での牛馬の存在など、他の理由も考えられるだろう。

市民社会・大問2「自然が人間に恵みを与えているものを『火山』を例にして答えなさい」、大問4「まちの本屋さんの減少をとめる方法は?」は、いずれも背景知識を持った上で、創造的な思考力も問われる問題だった。

 

高い読解力が問われる難問

ハイレベルな競争となるKUの入検では、難問も出題される。いずれも小手先の対策で解けるような問題ではなく、しっかりと問題文を読み取る高い読解力が問われる問題であった。

言語表現・大問2では、日本における中華料理の広まり方について出題された。その中に、説明文を読んで「日本料理の献立」を選択する問題があったが、刺身や天ぷらといった、いわゆる「日本料理」を選択すると説明文にそぐわず不正解となる。正解は、コーンスープや麻婆豆腐と米飯が混在する献立。説明文をきちんと読み取ったかが問われた。

自然環境・大問2の渡り鳥についての問題は問題用紙1枚半に及ぶ長文問題。実験結果を正しく読み取ることができたかが明暗を分けた。

 

学ぶことを楽しむ環境を

次期指導要領の施行や大学入試改革が目前に迫り、中学入試も変化しつつある中にあって、KUの入検はまさに時代の最先端に位置している。制度の改革に先んじて、求める人物像を「知っている人」から「考える人、作り出す人、表現できる人」へと大きく転換している。

中等教育学校となり外部募集を再開して以来、毎年高い人気のKUには、年々基礎学力の高い受検生が集まっている。今年度の入検でも、全ての教科で合格者平均は7割を超え、数理探究では8割も超えていた。

とはいえ、詰め込み式の受験勉強でKUの入検を突破するというのでは本末転倒だろう。学ぶことを楽しみ、急がずに立ち止まって考える、そんな子供に育てることが肝要だと感じた。もちろん、家庭だけでは難しい場合が多いだろう。従来型の試験にとらわれない柔軟な塾の手助けを得たい。

 

ミライノマナビ編集部

ミライノマナビ編集部

グローバル化&AI化が子供たちにとって明るい未来となってほしい。来るべき未来に対して教育は何ができるのか、子育て世代やこれから社会に出る若者たちみんなが考えるきっかけを提供していきます。

Category カテゴリ―