甲南女子中学校・高等学校は近年の教育改革に先駆けて、早くも20年ほど前から独自の「探求」に取り組んできた。学習指導要領の改訂などにより世の中が同校の学びに追いついてきたこのタイミングで、またもや一歩先を走る「探求」の大幅リニューアルを実施する。入試広報室主任の松原稔幸先生に解説してもらった。
>>> 探求リニューアルのキーワードは大きな「T」 <<<
甲南女子は近年の教育改革で探究学習の重要性が強調されるようになるずっと以前、20年も前から、独自の「探求」に力を入れてきた。その後、文科省の主導で「探究」の漢字が広く使われるようになったが、同校の取り組みはオリジナルの「探求」のままだ。
「本校は『自学創造』を教育方針として掲げてきました。生徒が自ら課題を設定して、問題解決に向けて取り組む学びは、その方針に沿ったものでした。探求の『求』を敢えて使っているのは、自ら主体的に答えを求めていく姿勢を大切にしているからです。」
松原先生が、同校の探求学習の歴史と、探求の「求」の字に託した思いを説明する。そして、2026年度、この探求先進校とも言える同校が、さらにその内容を充実させる。
「これまで取り組んできた独自の探求学習を継承しつつ、さらに高大連携や大学進学までを含めたカリキュラムにリニューアルします。キーワードは大きな『T』。これはTankyuの頭文字であり、横に広く、縦には深く、という本校が作る新しい探求のコンセプトを象徴するものです。」
>>> 級友から世界まで学びの幅を広げる 中学校での探求 <<<
リニューアルされる「探求」は次のようになる。まず、中学段階は、Tの横棒を広げる時期。視野を広げ、多様な学びに触れる。
中1では「アサーティブ・コミュニケーション」の考え方を取り入れた「相手も自分も尊重しつつ、自己主張する手法」を身につける。人の話を聞く力、堂々と発表する力といった、探求の基礎だ。
中2では、身につけたコミュニケーション力を活かして、地元や地域と出会う。地元神戸を代表する企業などへのインタビューを通して、企業が取り組むSDGsについて学んだり、豊岡市での地域創生に取り組む。
「豊岡市では、現代日本が抱える社会問題、たとえば人口減少や過疎化、農業・漁業の担い手不足などを考えます。地域の方々の話を聞き、課題を見つけて、地域創生のアイデアなどをポスター発表します。調べて得られたデータを発表にどう活かすのかを学びます。」
中3では、地域で学んだことを基に、世界へと学びの場を広げる。オンラインで海外の学校と交流。お互いの理解を深める。実際に海外に赴いての研修も検討されている。海外の同世代の女子生徒や現地の大学生と交流やディスカッションを通して、人種・国籍の垣根なく学びを広げる。
「中2までに学んだ情報をまとめる力や分析する力を使って、ディスカッションへと段階を上げます。同世代の海外の女子生徒や学生と分け隔てなく接し、その後にも続く人間関係を築いてほしいと考えています。」
>>> 専門性を深めて進路につなげる 高校での探求 <<<
そして、高校段階では「T」の縦棒を深める時期。興味を深掘りし、自分だけの専門性を育む。特に紹介したいのが、今回の探求リニューアルの「目玉」と松原先生が話す「高大連携講座」だ。
「高校での探究学習は、高校の教員が指導するのが一般的です。今回のリニューアルでは、より専門的にアカデミックな内容にまで深掘りできるよう、大学の先生方と協力しての授業を実現します。」
主に連携するのは、甲南女子大学、甲南大学(理系学部)、神戸薬科大学の3大学。高1では、これらの大学の先生方による「高大連携講座」を受講。隔週で甲南女子大学でのゼミ形式の講座も開講される。高2では、高1で興味を持ったテーマを個人でさらに深めて、研究論文など成果を形にする。

3大学との高大連携で学びを深める
最後に高3では、それまでの探求で取り組んだ学びを活かして進路を選択する。近年、増えている総合選抜や学校推薦入試に6年間の探求活動は大きなアドバンテージだ。今春は、東北大学医学部、神戸大学医学部、京都大学、大阪大学などの難関国立大学に総合選抜・学校推薦で合格している。
「卒業生の総合選抜・学校推薦合格率は50%で、多くの生徒たちが中高での探求を活かして大学に合格しています。より大きなメリットは、探求で興味を持った分野に進学するため、進学後のミスマッチがほとんどなくなったことです。また、興味を持って自ら取り組む探求の学びによって、向学心や積極性が高まり、一般入試にも良い影響が出ています。」

大学からの評価も高い独自の学び
大阪大学への総合・推薦合格4名に対して、一般入試での合格も6名。また、Sアドコースでは、およそ2人に1人が国公立大学に合格している。一人ひとりの個性を尊重し、生徒同士が助け合い、高め合う校風も生徒のがんばりを支える。海外大学への推薦制度も整備される同校の進学面にも注目したい。
海外大学進学への選択肢が広がる 一般社団法人国際大学連合(I.F.U)と海外大学進学に関する連携推薦協定を締結。推薦要件を満たせば、I.F.Uが提供するファウンデーションコース(大学進学準備過程)への入学試験を受けられる。入学後、一定の成績をクリアすることで、英国、アイルランド、アメリカの大学に進学できる制度。サポート面が手厚いI.F.Uでの大学進学準備を経て、海外の大学にも進路が広がる。 協定大学一覧 |
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