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2019.7.26

紳士は優しさとタフさを兼ね備える——リベラルスタディーズ
明星中学校・明星高等学校(大阪府 男子校)

クエストカップ2019全国大会でグランプリを受賞

 

教育が目指すものとは何だろうか。日本の中等教育では長らく、本人にしかわからない内面の力を磨くことを旨としてきた。もちろんそれも大事だ。しかし、時代や社会の変化とともに、身につけた力をわかりやすく示すことや、その力を社会や周囲のためにどう使うのか、が同じぐらい重要になってきた。今回は、伝統を誇る名門校ながら、創造力・表現力を磨き、積極的に外部と関わるなど、新しい教育に挑む明星中学校・明星高等学校を紹介する。

--進学校にとって、アクティブラーニングや探究学習は大学進学の妨げで、取り組むとしても受験勉強の息抜き程度のもの。

以前であれば、このように考える先生方や保護者の方も少なくなかった。しかし近年、新しい学びへの転換は、進学校にとっても本気で取り組むテーマとなっている。

「本校では5年ほど前から、リベラルスタディーズというアクティブラーニングとグローバル教育に力を入れています。大学入試改革への対応ということもありますが、それよりも生徒たちが将来社会に出てからのことを考えての取り組みです。」

入試企画部部長の野中豊彦先生が同校の新しい取り組みの背景をそう説明する。リベラルスタディーズは、総合の時間を使い、中1では、班ごとにテーマを選び、自分たちで調べ、話し合い、出した結論をプレゼンテーションする。最終的には各々エッセイにまとめるのだが、それは高校3年までの各学年共通の取り組みだ。卒業までに一人6本のエッセイを書き上げることになる。

「中2では、クエストカップに参加します。企業から出された課題に対して解決策をプレゼンテーションするものです。まずクラスの中で競い合い、次にクラス代表同士での戦いです。そこで優秀であった班が全国大会に出場します。班対抗戦ということもあり、いかに内容を深めるのか、どうすれば上手に説明できるのか、生徒たちは休み時間や放課後にも熱心に話し合っています。」

クエストカップ2019全国大会では、同校のチームが「ソーシャルチャレンジ部門」でグランプリを受賞した。シリア難民を救うため、空に新たに国を作る、という思い切ったアイデアを企画・発表した。名付けて「ラピュタ計画」。常識にとらわれない豊かな発想力と困難な人々を救いたいという強い意志が受賞につながった。

元来、キリスト教に基づく全人教育を目指してきた同校だが、以前は主にクラブ活動の奨励によって人間力を鍛えてきた。高校野球部もサッカー部も入部制限がなく、難関大学を目指しながらクラブ活動にも全力で取り組む生徒が多い。

「この取り組みを始めたことで、クラブ活動以外にも放課後を有意義に使えるようになりました。高校1年有志が参加するRDDプロジェクトでは、希少・難治性疾患を持つ患者さんの生活の質向上を支援する世界的な取り組みと連携して、現実の世界・社会に直結する学びが実現しています。」

RDDプロジェクト

 

「明星紳士」と評される同校の校風は、心優しい紳士を育ててきた。それは美点であるのだが、野中先生は「もっと自己主張して欲しい」と言う。

「グローバル時代には、自分と全然違う価値観の人たちと関わっていく必要があります。そこでは、自分を前に出して主張するタフさがなければなりません。この取り組みで活躍した生徒は、級長などクラスのリーダー役を買って出たり、その他の活動にも前向きに取り組んでいます。子供たちの変化は想像以上でした。」

同校は他にも、毎週開催のビブリオバトル(書評合戦)や長浜バイオ大学と連携した生物学の研究といった、受験勉強を超えた学びに次々に挑んでいる。その素地となっているのが、外部の大学や研究機関に対してオープンに連携や協働を呼びかけている同校の姿勢だ。次期学習指導要領が理想とする「社会に開かれた学校」を地で行く同校は、これからも教育内容を進化させていくだろう。

長浜バイオ大学との連携

 

進学館

 

明星中学校・明星高等学校
http://www.meisei.ed.jp/
大阪市天王寺区餌差町5-44 TEL 06-6761-5606

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