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ミライノカダイ

2019.10.18

今は存在していない未来の仕事


ニューヨーク市立大学のキャシー・デビッドソン教授は、2011年に「(今年)小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」との予測を示しました。振り返ってみると、コンピューターとインターネット利用が普及したここ20年~30年の間にも、多くの職業が生まれました。子供たちが大人になる頃には、どのような職業が誕生しているのか、今後の技術と社会のあり方をもとに考えてみたいと思います。
AIや3Dプリンタが生み出す職業

現在私たちは第4次産業革命の入り口に立っています。2030年ごろに本格化するこの産業の大変革では、汎用AI、IoT、3Dプリンタなどが基盤技術となり、生活を一変させるような応用技術や発明品がもたらされると考えられています。当然、関連する産業は大きく成長し、新たな職業が誕生するでしょう。予想される未来の職業を挙げてみました。

◆AIトレーナー

現在のAIの中核技術「ディープラーニング」は「教師データ」を大量に学習することで、あらかじめプログラムできない知的な振る舞いができます。有名なのは、写真を見せて、どれが猫でどれが猫ではないのかをAIに学習させたグーグルの研究です。「猫とは何か」という困難な問いを避けることができ、AIの能力は飛躍的に上がりました。

将来のAIもこの手法だとすれば、生活に深く関わるAIを作るには「教師データ」として人間の日常生活そのものが必要です。AIトレーナーは、AIの教師となって、人間が困ること、怒らせること、嬉しいこと、助かること、などの教師データを提供します。優秀なAIトレーナーに育てられたAIはブランド価値が高まるかもしれません。

◆3Dプリンタ・レシピ配信者

3Dプリンタは設計図と材料さえ与えれば、様々な形のものをプリントすることができます。近年、3Dプリンタで作った自動車や家が話題になりました。

さらに未来、3Dプリンタが各家庭に普及すると、個人が考えた製品の設計図がインターネットを介して配信される、という状況も考えられます。芸術作品や衣服、家具、料理なども配信されるようになるかもしれません。人気レシピの配信者は、ヒット商品の特許権者のように大きな利益を得るでしょう。

 

GNR革命によって広がる職業

コンピュータの高度化に伴って発展する技術分野としてG(遺伝子)N(ナノテクノロジー)R(ロボット)の各分野が挙げられます。それぞれAIと結びつけば、世の中を大きく変える応用技術や発明が登場するでしょう。例として考えられるのは次のようなものです。

◆バイオ・プログラマ

近年の生物学では、生物の本質を情報の流れであると捉えています。細胞内の分子間の化学反応を一種の回路とみなすことで、生命の活動がうまく説明できるそうです。この回路の仕組みを解明して、再プログラムすることで、例えば、がん細胞の増殖を止めるようなバイオ・ハッキングも可能になるかもしれません。

◆変形家具デザイナー

ナノテクノロジーは「プログラム可能な物質」を実現するとされています。ナノマシン群が、不要な時には天井や床の片隅に隠れていて、ユーザーが命じると、椅子にも、テーブルにも、家電にもなるという技術です。技術が確立したとしても、どういう変形家具があったら嬉しいのか、欲しいのかを考えるのは、やはり人間の仕事です。

◆ロボットオーナー

汎用AIをロボットに搭載すれば、もはや人間は働く必要がない(仕事が無くなる)可能性も出てきます。将来、ロボットやAIに人権が認められるかどうかはわかりませんが、当面、ロボットは「誰かの所有物」なので、仕事をさせて収入を得ることができます。どの分野にどのロボットを投入するかを考えるのは、立派な一つの職業となるでしょう。ちなみに、所有する自動運転車で乗客を輸送する仕事はいくつかの企業が構想を打ち出していて実現間近です。

 

単純な知識の価値が下がり、常識と注目の価値が高まる

AIの高度化によって「知識そのもの」の価値は下がります。知識労働の多くは、人間よりもAIに任せる方が正確で素早くなるからです。反面、価値が高まるのは、人間の常識と注目です。

◆常識デバッガ

AIが社会システムを下支えするようになると、人間の仕事は社会をどこへ向かわせるのかを考えることになります。AIは社会を効率的に運営できますが、その向かう方向が、人間にとって居心地良いものかどうかの判断は人間にしかできません。その場合、因習のような古い価値観はアップデートすることも必要です。常識デバッガは、プログラム言語に詳しい必要はありませんが、人間社会の分析力に秀で、様々な時代と文化の常識に精通していることが求められるでしょう。

◆注目の価値高騰でインターネットの富を分配

様々なサービスが広告収入で成立し、人類史上かつてないほど注目の価値が高くなっている現在、多くの企業が広告に多額の費用をかけています。近年「お金をあげるから注目して」という手法すら現れるようになりました。

この状況がさらに進展し、テクノロジーと結びつけば、広告を閲覧したりSNSの評価をするたびに収入が発生するビジネスモデルも出てくるでしょう。一部の動画投稿サービスはすでにこれに近い手法で、ユーザーが利益を得ています。彼らのような高いクオリティの作品を作らなくても「単に見るだけ」「クリックするだけ」が収入に結びつけば、現在、一部の企業や人に集中しているインターネットからの利益を多くのユーザーに還元することができます。

 

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