4月7日から5月6日まで兵庫県でも緊急事態宣言が出された。学校は引き続き休校となり、生徒は自宅学習を余儀無くされる。止むを得ない事態とは言え、まる一ヶ月の学習の遅滞は生徒の将来に大きな影を落とすだろう。そこで注目されるのが自宅にいながら授業が受けられるオンライン授業。親和女子高等学校の取り組みについて山科祐一先生にご回答いただいた。
同校のオンライン授業は高校3学年を対象に、英語・国語・数学・理科・社会で実施されている。同校では今回の休校措置以前から、ICTを教育に活用する試みを行っていたため、オンライン授業導入へのハードルはそれほど高くはなかった。
「本校高3はE-Lectureと契約。ロイロノートと組み合わせれば、多分何でもできる環境になりました。iPadが1台のみあれば、三脚もカメラもマイクも他に何もいらないのもイイトコロですね。」
「何でもできる」というように、一斉授業でもアクティブ・ラーニングのような双方向授業でも実施できる。実は学校にとって「何でもできる環境」を整えるツールはすでに揃っていた。後は、そのことを理解していて、実行に移す行動力のあるリーダーや先生がいるかどうかなのだ。同校には、その点で大きなアドバンテージがあった。
オンライン授業の進め方として、山科先生の授業の例を教えていただいた。大まかな枠組みは次のようなものだ。
①事前にロイロノートで疑問や質問などを募集する。
②E-Lectureによるオンライン授業を実施。
③授業中は、生徒が画面をタップして選択肢の解答をしてもらったり、チャットによって自由に話したりができる。
④また、ロイロノートを使って問題を送信して、生徒は解答をロイロノートに返信。それを共有しながらE-Lectureで解説指導を行う。
⑤授業終了後、ロイロノートでふり返りを行う。先生が全員にコメントをつけて返信する。
⑥E-Lectureが録画されているので、オンデマンドで授業を後から視聴することもできる。
「今回取り組んでみて、オンラインは単なるリアルの代用ではないと感じます。リアルの教室では声を上げにくい生徒でもチャットでは発言しやすい。集団授業でありながら、一対一で授業をしている側面が強くあります。授業後の質問なども、こちらの手が空いた時に対応できるので、これまで以上にきめ細やかな指導が行えます。」
山科先生がオンライン授業のメリットをそう説明してくれた。リアルに対面することだけが「親身な指導」ではないのだ。今回の危機的状況で、日本の学校は新しい学びのあり方を発見したのかもしれない。もちろん、デメリットもある。それは「無限に仕事ができてしまう」ことだと先生は回答した。教員のキャパシティが許す限り、一人ひとりの生徒にいくらでも時間をかけることができてしまう。過重な負担とならないよう一定の歯止めは必要だが、生徒の側からすればメリットしかないように思える。
「今後は、他教科でも導入を検討しています。アフターコロナを見据えて、リアルとオンラインの良さを掛け合わせた、新しい授業のあり方を模索しているところです。」