近年、進学校でも進路として関心が高まっている海外大学。ただ、まだまだハードルが高いと考えている家庭が多いのではないでしょうか? 本連載では、日本の高校から米国・ニューヨーク州の名門コロンビア大学に進学し、高校生の海外進学を支援する活動に取り組む田中祐太朗さん、李卓衍さんに海外進学の実際をお聞きします。
Q. 学費の実際を教えてください
田中:現在通っているコロンビア大学の学費は約700万円(今年度)と全米で最も高く、寮費やその他生活費、旅費等を含めると約950万円かかる試算を大学が公表しています。これは、コロンビア大学が突出して高いわけではなく、アメリカの私立大学や一部の州立大学も同程度の金額となっています。ただし、私自身も含め、学費の減免や奨学金を受けて進学している学生も多く、実際全額を払っている学生は半数以下となっています。
李:コロンビア大学の学費が高いことは有名ですね。ちなみに、イギリスでは学費がかなり高額だと言われているUniversity College Londonでも500万円を超えないので、米私大の授業料高騰は特殊な状況だと思います。
Q. 学生はどのように生活費をやりくりしていますか?
田中:私は、生活費を休暇期間中のインターンシップや、学期期間中には大学の法科大学院の図書館でのアルバイトで賄っています。周囲にはそれに加えて家庭教師や飲食店のアルバイト、大学内の研究補助、図書館のアルバイトをしている学生が多いように感じます。
李:ニューヨークにある大学に通うと、物価は基本的に他の都市より1.5倍はかかるという体感です。特にアメリカは州によって消費税のシステムが異なり、ニューヨークは全米で税率が最も高いと言われているため、チップも合わせると、予想以上にお金がかかる場合が多いですね。
様々な手段で小銭を稼いでいる学生がいて、中には株や仮想通貨の投資をしている人も増えてきたと思います。また、Teaching Assistant(ティーチング・アシスタント)と呼ばれる、過去に受講したことのある授業の補佐を行う大学内のアルバイトもあり、かなりいい給料がでます(笑)。
Q. 奨学金はどのような仕組みですか?
李:日本から海外、とりわけアメリカの大学に進学している大学生は、日本の公的・民間奨学金を頂いたり、または大学からの学費減免を受けて学費を賄っている人が多いと思います。この数年で日本の民間奨学金が数・金額ともに増加したことにより、少しずつ進学へのハードルは下がってきたのでは、と感じています。
田中:アメリカの私立大学では大学からの学費減免を主に2通りで行っていて、1つは家庭の所得に応じて減免の金額が変動する「ファイナンシャル・エイド」、もう1つは家庭の所得によらず、入学時の優秀者に与えられる「スカラーシップ」があります。大学の規模・種類・戦略等によって提供されている減免の対象となる人数や金額は大きく異なっていて、大学ごとに調べていく必要があります。例えば、コロンビア大学をはじめとしたアメリカの私立総合大学は「スカラーシップ」の人数が少ない反面、「ファイナンシャル・エイド」はかなり充実していて、大学ごとに基準は異なりますが、家庭の所得が約800万円以下であれば学費及び寮費の全額免除(大学によっては生活費の支給)、約1500万円以下であれば学費の全額免除が受けられることが多いです。
Q. 在学生の家庭の経済状況について
田中:アイビーリーグの中で最も在学生の平均家庭所得が低いとされているコロンビアでも、平均家庭所得は約1600万円と非常に高い水準となっています。在学生の多くがアメリカ国内出身であり、日本の物価や所得平均と単純比較はできませんが、やはり裕福な家庭の子弟が多いということを実感しています。大学もこの事態を重大な課題と認識していて、出身階層の多様性を確保しようと受験時には受験料の免除、入学後は学費や寮費の減免などの施策は積極的に講じていますが、それでもやはり家庭の所得水準は依然高く、課題は多く残っていると思います。
李:都市に住むと、外食やコンサートなど高額な消費をする場面は多々あり、それに参加できるかによって経済状況の差が目立ってしまいますね。大学生でも社交の場にお金が絡んでしまうのが現実で、一部の学生には参加が難しいように感じます。ただ、先ほど田中くんが述べたように、日本からの学生の多くは学費を全額払っていることの方が珍しく、生活費も含む支援を頂きながら進学していることも多いので、大学の額面の学費を見て諦めず、海外の大学にぜひ積極的に挑戦して欲しいな、と思っています。
Q. どんなことにお金をかけていますか?
田中:私は日本の一人暮らしの大学生とあまり変わらず、支出の多くを食費・日常費・娯楽費が占めています。ニューヨークの物価の高さに怯えながらも、日本食を扱ってるスーパーで買い物をしたり、少しずつ街を観光したり散歩したりと工夫して楽しんでいます。
李:振り返ってみると、意外と交通費にかかるお金が多いですね。ニューヨークの地下鉄は一律料金で片道300円近くしますし、市内のウーバー(配車サービス)も時間帯によっては目が飛び出るほどの値段になります。私は美術史を副専攻しているので、授業の関係でよく美術館に行くのですが、曜日によっては無料になったり、学生やニューヨーク市民に開放していたりする所も多く、足さえ確保できればお金をかけずに遊ぶ場所がたくさんある街ですね。