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大改革時代に向けて

2022.4.29

人間をみがき、知らないと言える勇気と生涯学び続ける謙虚さを身につけてください
大阪国際中学校高等学校 校長 松下寛伸 先生

松下寛伸 先生
大阪国際中学校高等学校 校長
大手銀行から大阪国際滝井高等学校校長を経て、現職(2023年度まで滝井高校校長を兼務)。銀行員時代の後進育成への熱意と経験を活かし、新しいものを生み出せる教育に取り組む。

大阪国際中学校高等学校
https://www.kokusai-h.oiu.ed.jp/
〒570-8787 大阪府守口市松下町1-28 TEL 06-6992-5931

 

多様性から新しいものを生み出す力

 本校の開校は今年の4月ですが、構想は10年かけて練り上げてきたものです。大和田・滝井の2校をただ単にくっつけるだけではなく、両校の歴史や伝統を引き継ぎながら、その上で「これからの時代に必要な学校とは?」という問いへの一つの答えを形にしました。

「これからの時代の学校」への思いを形にした新校舎

 グローバル時代やAIの進歩などの時代のキーワードは多くの学校が意識するところです。ただ、重要なのは、それらを教育の中でどう位置付け、実際にどんな取り組みに落とし込むのか、という点。キーワードに囚われすぎることなく、生徒が社会で活躍のフィールドを広げられる学びを進めなければなりません。

 たとえば、英語力を身につければそれだけでグローバル人材と呼べるわけではありません。英語をツールとして、多様性や多様な価値観をしっかりと受け止めて、理解し、その上で新しいものを生み出す力こそが、これからの時代に求められるのです。

 

子供たちが持っている新しい時代の感性

 私が銀行に勤めていた時代には、窓口で働く人たちだけでも毎年1000人を採用していました。ところが来年4月の採用予定を見ると50人にまで減っています。このように、AIによる社会の変化はすでに起きています。

 しかし、AIの仕組みを考えると、人間の強みも見えてきます。AIは、すでにあるデータを学習することで知的に振る舞います。そのため、真に新しいものを生み出せるわけではないのです。それができるのは人間だけでしょう。

 この点に関して、私は今の若者に希望を見出しています。一般的には若ければ若いほどICTツールに親しんでいて、新しいものをどんどん取り入れることができます。生徒と話していて驚くのは、今の子供たちは自分たちで問いを立てて、話し合いながら解決策を見出して、すぐに行動に移すということが自然にできることです。

 時代に合った感性を持っているのは、いつの時代もその時代の若者です。教育を通して一人ひとりが持っている力に気づかせてあげれば、誰もが時代に合った新しいものを生み出せるようになるのです。新しい感性を応援することが、私たち大人や学校のするべきことだと思います。

 

4つの特徴と国際バカロレアコース

 新しい時代の感性を伸ばすために、本校では4つことを教育理念に掲げています。

 一つは校訓でもある「人間をみがく」です。この基礎として、高校では小笠原流礼法の授業を取り入れています。礼儀作法が何のためにあるかというと、相手に対して感謝や思いやりを表すためです。礼儀作法を基盤に、より良い人間関係を構築する力を身につけてほしいと考えています。

 また「ココロの学校」では、各方面で活躍している方を招いて特別授業を行います。生徒は自分だけでは思いつかない学びと気づきを得て、社会問題に関心を持ったり、社会に役立ちたいと決意を新たにしたりしています。

 二つ目は「国際感覚をみがく」です。本校は国際バカロレア(IB)認定校として、高校にIBコースを開設し、IBの目指す学習者像を学校全体の指針としています。そのため、高いレベルの英語力だけではなく「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を学びの目的としています。

国際バカロレアコース

 三つ目は「創造力・表現力をみがく」です。NIE(Newspaper In Education)、理科実験、読書マラソンなどの教科的なものに加え、中2~3では毎週土曜日に2コマ連続で、体験型・探究型プログラムに取り組みます。ダンス、華道、カメラ(映像制作)、プログラミング、マジックといった、より広い世界を知る学びまで選択することができます。また、PBL(Project Based Learning)として、遠足の行き先を自分たちで調べて考え、プレゼンするなどの取り組みも行っています。

 四つ目は「個を支える」です。学習面だけではなく、生徒一人ひとりの志や生活面もサポートし、それぞれの習熟度や希望に応じた指導を展開しています。入学直後から2週間は「スタートプログラム」として、教科の授業はせずに「何のために勉強するのか?」を考え、生徒同士の学び合いの雰囲気を作り、タイムマネジメントやSNSとの付き合い方を教わるなど、学校生活の土台をしっかりと作ります。

 これらの取り組みの成果もあって、前身校では週刊ダイヤモンド、「最強の中高一貫校」特集号の、学力伸長度ランキングで、2年連続関西圏トップの評価を得ました。

 

AI時代にいっそう大事になる「人から学ぶ力」

 中高は大学受験の準備をするところで、それは今でも必要なことですが、中高の役割はそれだけではありません。

 銀行員時代、総合職(基幹社員・管理職候補)では毎年500人~600人が入行していました。東大卒や京大卒、中には海外大学出身者もいました。彼らは相対的には仕事ができる割合が高いのですが、それでも大学までのインプットが通用するのは最初の3年ほどだけです。同期トップで支店長になるのは、必ずしも難関大学出身者ではありません。出身大学にかかわらず、支店長にふさわしい実力を持った人がトップになります。

 社会に出てから伸びるのは、素直で知ったかぶりをせず、何でも学ぼうとする謙虚な人です。逆に、出身大学を鼻にかけて「知らない」「教えて下さい」を言えない人は、知ったかぶりをしてしまいがちです。これをやったその瞬間、人の成長は止まります。

 人は自分の持っている以上のものは出せないので、卒業後も学び続けなければなりません。学び続けるための謙虚さは、多様な価値観を持った人とお互いを尊重し合う経験で育まれます。定型的な知識をAIが補ってくれる時代に、人から学ぶということがこれまで以上に大切になってくるでしょう。

校訓と「目指す生徒像」

 

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