日本にはグローバルに活躍する人材が不足していると言われる。「世界に通用する紳士たれ」との建学の精神のもと、時代に先んじてグローバル人材の育成に取り組んできた甲南高等学校からは、毎年のように世界大学ランキング上位校への合格者が輩出されている。同校教育研究部長・中原敦先生にお話をうかがった。
プログラム2期生の萬(よろず)一真さんはKing’s College Londonを卒業して世界4大会計事務所の一つPrice Waterhouse Cooperに勤務する
「これまでは考えられなかったキャリアパスが実現しています。」
同校が「グローバル・スタディ・プログラム」を始めたのは2010年。最初の卒業生は大学を修了し、世界中で活躍している。冒頭で中原先生が話した「キャリアパス」を切り開いたのは、東京大学よりも世界ランキング上位の大学で学び、世界4大会計事務所などで働く卒業生だ。
これまで卒業生が合格した海外大学を以下に掲げる。これは「グローバル・スタディ・プログラム」約30名からの合格者だ。King’s College London(イギリス)やUniversity of British Columbia(カナダ)などはいくつかの世界大学ランキングで東京大学を上回るとされている。このリストに加えて、甲南大学に進学後に海外大学へと編入する卒業生もいる。
学年 | 大学名 | 人数 |
1期 | University of British Columbia (カナダ) | 1 |
2期 | King’s College London(UK) | 1 |
University of British Columbia (カナダ) | 1 | |
3期 | University of Manchester(UK) | 1 |
Manchester Metropolitan University(UK) | 1 | |
State University of New York (USA) | 1 | |
4期 | Simon Fraser University(カナダ) | 1 |
6期 | King’s College London(UK) | 1 |
University of British Columbia (カナダ) | 1 | |
Simon Fraser University(カナダ) | 1 | |
University of Manchester(UK) | 1 | |
Orange Coast College(USA) | 1 | |
Griffith University (オーストラリア) | 1 | |
7期 | King’s College London(UK) | 2 |
University of British Columbia (カナダ) | 2 | |
University of Bath(UK) | 1 | |
Portland Community College(USA) | 1 |
同校には2つのコースがある。一つは「フロントランナー・コース」。人気大学附属校ながら、国公立大学への進学を目指すコースだ。海外大学への合格実績を残してきたのはもう一つの「アドバンスト・コース」。従来型の受験勉強からは距離を置き、探究的な学習など、新しい時代の学びに先んじて取り組んできたコースだ。そのアドバンスト・コースの中に「グローバル・スタディ・プログラム」のクラスが編成されている。
「将来的に海外で活躍したいという生徒や英語を中心にしたキャリアを考えている生徒がこのプログラムを選びます。英語力はかなり鍛えますが、単なる『英語コース』ではなく、将来、海外に出てから通用する歴史や社会についての教養も身につける教育プログラムです。」
従来型の受験勉強に時間を取られない分、3年間をかけての課題探究に取り組んだり、アジアの国々で現地の文化を体験し、ビジネスに携わるOBの話を聞いたり、ボランティア活動に参加したり、と幅広い学びができる。そこから得られるものは何も海外大学への進学にだけ役立つわけではない。
「このプログラムの生徒たちは、AO入試や自己アピールにとても強くなります。今春の関西学院大のSGH入試に論文で7名が合格しました。世界で活躍する先輩たちが帰国時に講演をしてくれるのですが、国際的な活躍をしている先輩たちというロールモデルが身近にいることで『英語をしっかりと学んでおけば自分にも可能性がある』と学習のモチベーションが高められています。」
最後に海外大学に向いている受験生像をたずねてみた。中原先生は次のように答えてくれた。
「基本的に英語の力は必ず必要です。また、選考では普段の成績を見られることが多いので、しっかりとした学習習慣を身につけている必要もあります。そして何よりも異文化に対する好奇心や外の環境にチャレンジするたくましさ、失敗から学ぶタフな生徒が向いています。」
何の準備もなくいきなり海外大学へ進学というのはハードルが高い、とも教えてくれた。
「学校以外の場所にも出て行って活動したり、発表したりする経験を積むと良いでしょう。今いる場所に安住せずに、どんどん外に出て行って、時には失敗してもいい。最初は短期の留学などの体験しやすいところからスタートして、少しずつ慣れていくのが良いと思います。」
これまでの7期の実績は、高2・高3の2年間の教育プログラムでの成果だ。このプログラムが中3からの4年間へと拡張されてからの卒業生はまだ出ていない。4年間のプログラムに取り組んでいる最初の学年は現在高2。加えて英米20大学との教育協定(推薦入学制度)も締結された。彼らが卒業する時には、さらに目覚ましい実績を残してくれるだろう。