2022年3月、雲雀丘学園中学校・高等学校に新文化館「道しるべ」が完成した。1Fにラーニングコモンズ「Hibari ColLab（ヒバリコラボ）」、2F・3Fに中高図書館、4Fに小学校図書館などが入る6階建ての施設だ。位置的にも小学校と中高の中間にあり、同校の文化の拠点となる。探究学習に積極的で、さまざまな独自の取り組みを実施する同校がこの施設をどのように活用しているのか、入試広報部長の板倉宏明先生にお話いただいた。

文化への入り口には本

　2022年3月、雲雀丘学園中学校・高等学校に新文化館「道しるべ」が完成した。「集う・交わる・学ぶ」をテーマとする6つのフロアには、目的によって使い分けることができる3フロアの図書館や、新しい時代の学びに対応したラーニングコモンズ「Hibari ColLab（ヒバリコラボ）」などの施設が入る。

「『道しるべ』という名称は、サントリー創業者で本校初代理事長・鳥井信治郎氏のエッセイから取りました。その一節にある『どんな困難な道でも道しるべがあれば心丈夫に踏み越えて目的地に到着することができるのだ』との思想を受け継ぎ、生徒の将来の道筋を明るく照らす、文化の拠点となればとの思いを込めています。」

　「道しるべ」という名称の由来を板倉先生はそう説明する。ただ、教えるだけではなく、いかに主体的に学べるようになるのか、そのための道しるべとなるべく考えて設計したという。中学・高校校舎から「道しるべ」に向かうと、橋を渡り、3Fの中高図書館が最も近い入り口となる。入り口から入ると表紙が見えるように並べられた書籍がたくさん目に入ってきた。

図書館入り口の手作り看板

「中高生は多くの場合、道しるべに3Fから入ります。その時に、どんな本があるのかを、一目見てわかるように書棚の高さを手前から段階的に高くなるようにしました。そうして、気になった本を手に取って、気軽に読むことができるように、敢えて大きな机は置かず、動かせる椅子や寛げるソファを配置しています。」

全体が見渡せるレイアウト

　道しるべの3Fは、校門と中高校舎を結ぶ動線上にある。そのため、登校時にここで本を借りてから校舎に向かう生徒もいる。3Fは、雑誌や文学作品が中心。図書委員会による「わたしのおすすめする本」コーナーなどが設置され、本への興味をかき立てる工夫がなされている。

図書館3Fではビブリオバトルも開催される

探究学習に便利な1F＆2F

「2F中高図書館は、探究学習で使う資料が並びます。科学書のコーナーや芸術のコーナーなどもこのフロアにあります。必要な資料をここで探し、1FのHibari ColLabでの学びに役立てることを想定しました。」

　3Fの親しみやすい雰囲気とは一転、2Fは背の高い書棚が並ぶ静かな場所だ。窓際に配置されたカウンター机では自習する生徒の姿も見られた。静かで勉強がしやすく自習によく使うとのこと。

「1FはHibari ColLab、いわゆるラーニングコモンズです。四方向に映し出せるプロジェクターと移動式の机・椅子、少人数用の小さいホワイトボードを備え、グループ学習やプレゼンテーションなどに便利な施設となっています。実際に、探究の授業や、EIP（英語での意見交換・発表）の授業、即興型英語ディベートでよく使われています。」

探究学習に便利なHibari ColLab

　同校はこれまでも、里山での体験学習から始まり「Hibari探究プロジェクト」や「探究ゼミ」など独自の探究学習に力を入れてきた。Hibari ColLabは、これらの学びをさらに発展させるだろう。

思い思いの学校生活を作り出す場

「6Fは創立70周年を記念した70ホールです。320人が入る講義室で、外部の方を招いての講演会にちょうど良い広さとなっています。また、放課後は平日20時まで、土曜日18時まで、希望者を対象に質問型自習室『Hibari-GYM』を実施します。18時までクラブ活動をして、それから自習する生徒もいます。本校は阪急『雲雀丘花屋敷』駅と文字通り直結しているので、20時まで安心して自習ができる環境です。」

　その他、4Fは小学校図書館、5Fには音楽室と和室がある。取材当日も、各フロアのさまざまな場所で生徒が思い思いの学校生活を送っている様子が見られた。図書館の入り口の看板から「おすすめする本」コーナー、クリスマスの飾り付けなども生徒の手によるものだ。教員も自由な発想で次々と学びの企画を立ち上げている。まさに鳥井信治郎氏の「やってみなはれ」精神がキャンパスの至るところで発揮されていた。新文化館「道しるべ」は、同校のこの校風を一層盛り上げてくれるだろう。