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ミライノマナビコラム  ― そこが知りたい小学校英語

2023.4.7

第21回 デジタル教科書を活用した児童の「学びに向かう力、人間性等」の涵養を図る授業づくり

高橋 美由紀

高橋 美由紀

博士(地域研究)
愛知教育大学名誉教授
外国語教育メディア学会副会長・小学校英語教育研究部会代表
世界の研究者が関わった「TOEFL Primary」のテスト開発会議に参加し、制作に携わる。 全国の小学校での外国語活動の指導助言や調査・研究を行う。
主な著書『CLIL in Diverse Contexts 次期学習指導要領とCLILを活用した英語の授業づくり』(2020) 鳴海出版、『小学校授業づくりのポイント』(2015) ジアース教育新社、『新しい小学校英語科教育法』(2011) 協同出版

 

三重県教育委員会の教職員研修事業「小中学校英語研修」では、2022年度「子どもたちが自らの考えや思いを主体的に伝え合うことができる力の育成~学習者用デジタル教科書を活用して~」を研究テーマとした研修が実施されました。前回に引き続き、鈴鹿市立神戸小学校(岡井崇教諭)のデジタル教科書を活用した6年生の授業を紹介します。今回は「学びに向かう力、人間性等」の涵養に、デジタル教科書がいかに活用されるかを見ていきます。

 

学習指導要領における資質・能力の3つの柱

 学習指導要領の「資質・能力」の三つの柱の観点に関して、小学校外国語科のデジタル教科書を活用した学習において、「学びに向かう力、人間性等」は、「知識及び技能」及び「思考力、判断力、表現力等」を一体化に育成する過程を通して育成されます(文部科学省 『06 小学校外国語 令和3年度「学習者用デジタル教科書の効果・影響等に関する実証研究事業」』)。

 これを踏まえて、「学びに向かう力、人間性等」の涵養として、前回に引き続き鈴鹿市立神戸小学校6年生、This is my town (Here We Go! Unit 6) の授業をご紹介しましょう。

 この授業では、デジタル教科書の[Let’s listen and read]を活用して、

①児童は、花井先生が自分のふるさとを紹介する動画を視聴し、ネイティブの音声を聞きながら文字を指で追いました。「知識及び技能」)

②この習得した「知識及び技能」を活用して、「思考力、判断力、表現力等」の育成として、モデルの花井先生のように、児童が他者に自分の町を紹介するためのスピーチの内容を考えました。

 

学びに向かう力、人間性等の涵養

 

岡井崇教諭(2022年11月11日 神戸小学校にて、筆者撮影)

 指導者の岡井崇先生が、本時の目標として「自分の町のよさを紹介し合い、感想や改善点を伝え合おう」と提示しました。これは③「学びに向かう力、人間性等の涵養」を図るものです。児童は、わからない語彙や表現が出てくると理解できるまで、デジタル教科書を何度も繰り返し聞いたり、より適切に相手に伝えることができるような表現を考えたり、モデルの花井先生を参考にして、自分が英語で伝えたいことをなんとか表現しようと粘り強く取り組む姿がみられました。

 

主体的に学習に取り組む態度

 次に、協働学習としてペアで活動を行いました。児童Aが、宿題として撮影してきた「町の紹介」の写真を提示して、ペアの児童Bに「自分の町を紹介する」発表を行いました。

お互いに発表を録画(2022年11月11日 神戸小学校にて、筆者撮影)

 ここでは、児童Aが他者との交流を通じ、他者に配慮しながら主体的に外国語(英語)を用いてコミュニケーションを図ろうとする態度がみられました。一方、発表を聞いている児童Bは、児童Aの発表をタブレットに録画しながら、主体的に英語でやり取りができるように、児童Aの話している英語を聞いて、内容を理解しようとしていました。児童Aと児童Bの役割を交替して発表を行った後に、児童はお互いに自分の録画を観ながら、より適切に表現できる方法を二人で考えていました。

 児童がお互いに発表を録画し合ったことで、自らの発表を自分自身で客観的に振り返ることができました。振り返った結果、本時の授業時間内では大半の児童は、満足のいく発表を録画することができませんでした。児童らのほとんどは納得のゆく発表ができるまで、さらに家庭学習で練習を行い、次回の授業に再度発表をしたいと思っていました。家庭では、デジタル教科書に戻って音声を聞くことやコミュニケーション場面を活用して、自身の発表の内容を伝え合う練習をすることもできます。

 このように、デジタル教科書及び教材は、児童が自身の達成状況を評価して、次の学習に進めていくことを自ら調整することができます。このような使い方ができることもデジタル教科書のとても有意義なところだと思いました。

 

Anup

 

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