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2023.5.26

自ら考え、自分自身を振り返る、自立した学習者——国際バカロレアクラス
近畿大学附属高等学校(大阪府 共学校)

 

 

2023年度、近畿大学附属高校「英語特化コース」に「国際バカロレアクラス」が新たに設置された。いち早く授業にタブレットを導入するなど先進的な教育を進める近畿大学附属高等学校の次の一手だ。IBコーディネーターの大川稔和先生にお話をうかがった。

 

国際バカロレアクラス開設

 近畿大学附属高等学校では、今年度の1年生から「国際バカロレア(IB)クラス」が開設される。「英語特化コース」の生徒のうち、希望者が来年度の2年進級時から選択することができる。現在の高校1年生は来年度からのIBの学びに備えて、すでに「Pre IB」という特別授業を受けている。大川先生が次のように説明してくれた。

Pre IBでは、プレゼンテーションやグループワークを多用して、生徒同士の学び合いを重視しています。教壇から一方的に教える授業は基本的に行わず、生徒自身にATLスキル※1IBラーナープロファイル※2を意識させて、授業では何ができたか、何が足りなかったのかを、自ら確認しながら学びを進めます。」

 「英語特化コース」は定員40名。そのうち「IBクラス」に進めるのは15名となる。現時点ですでに15名の希望者は集まっているそうだ。「一方的ではない授業」に生徒がうまく適応できているのかを聞いてみると次のように答えてくれた。

「公立中学校出身の生徒は、主体的に考えて判断する学び方に、最初は『何をしたらいいのだろう?』と戸惑いながらも自分の方法を模索しています。上手くいかない場合もありますが、教員はすぐには助けないようにしています。IBが目指す自立した学習者となる第一歩だからです。」

※1 ALTスキル:Approaches to learningスキルの略。「学習の方法」と訳される。コミュニケーション、社会性、自己管理、リサーチ、思考の5分野10スキル。

※2  IBの学習者像」とも。IBワールドスクールが価値を置く人間性を「探究する人」「考える人」「振り返りができる人」など10の人物像として表したもの(下図)

同校の教育理念(内側)とIBの学習者像(外周)は親和性が高い

 

生徒が「もう1時間ください」と言う授業

 同校は、未来を見据えた様々な学校改革を強力に推し進めている。他校に先駆けたタブレットPCの教育活用は以前本誌でも紹介した。それ以外にも、ケンブリッジ大学のBetter Learning Partnerやアップル社Apple Distinguished Schoolなどの認定を受けている。今回のIBワールドスクール(IB認定校)を加えると、世界的に認められた認証を3つも有していることになる。今年、Forbes JAPANの企画『INNOVATIVE EDUCATION30』にも選出された※3

「これからAIICTが進歩するのは確実にわかっていることです。その時代にAIにもできるような単純なことを生徒に勉強させていてはいけないと考えています。同時に、これからの時代、内向きになって日本国内ばかりを見ていては生徒たちの将来が広がりません。世界に目を向け、新しい学びを推進していく必要を感じていました。そこで、学校全体がこの方向性を共有できるIBの導入に至りました。」

 IBの授業は探究型であり、その学びでは「正解すること」よりも「問い」が重要になると川先生は話す。

「問いを与えたり、生徒自身に問いを作らせたりして、深く探究し、議論する授業がベースとなります。IB担当教員は全員この意識を徹底しています。生徒も楽しんで学んでいる様子で『もっと学びたいからもう1時間ください』と言ってきたり、チャイムが鳴る前から議論が始まっていたりします。知的好奇心を刺激する授業をすれば、生徒は自分から学び出すのです。」

 まさに「自立した学習者」を育てる環境が整っている。この優れた環境を築き上げている同校のIB教員は約30人。美術担当の一人を除いて、元々同校で教鞭を執る先生方が、自ら立候補して新しい学びの指導者役に挑戦したという。この人材の豊富さも同校の強みだ。

※3 「選出! 子どもたちのウェルビーイングを実現する変革者たち30」Forbes JAPAN 2023年4月27日

 

近畿大学はもちろん、国内にも海外にも広がる進路

 気になる「IBクラス」生の想定される進路についてたずねると、川先生は次のように話してくれた。

IBでは、生徒の進路を固めてしまうような指導を行いませんが、近畿大学に進学する場合は、英語資格での入学金や授業料の減免制度などIBクラス生も利用できる特待生制度を検討しています。海外の大学はもちろん、国内大学でもIBで学んだことを総合型選抜などで高く評価する大学が増えてきました。必要になる英語力は本校に入学してからでも伸ばすことができます。それよりも、先生に言われた課題をこなすだけではなく、自分の個性を軸にして自ら学ぶことができる生徒にぜひ来てもらいたいと思います。」

 

開進館

 

近畿大学附属高等学校・中学校
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