大谷高校では、実際に商品を企画、販売して、収支も報告する本格的な起業体験に取り組んでいる。この取り組みにおいて、生徒は事業を企画し会社を立ち上げるばかりではなく、有望な事業に投資する株主でもある。どのような取り組みなのか、入試広報部長・東良健太郎先生と4人の社長経験者に話を聞いた。
実際のお金を扱い他者に貢献する
同校の起業体験は、高1で、会社を起業して1年間かけてその経営を体験するという取り組みだ。その最大の特徴は「単なる会社ごっこ」とは一線を画するところだろう。生徒全員が100円×10株分の資本金を持ち、自社株を6株以上、残りは自社でも他社でも自由に投資するという経済の仕組みから学ぶ取り組みなのだ。
「ゲーム形式で株式の仕組みを学ぶところから始めます。実在する企業とタイアップなどしながら商品を開発、文化祭で商品を販売します。企業との交渉も生徒自身で行います。もちろん、断られることもありますが、それも含めて勉強だと考えています。」
東良先生が起業体験の概要を話してくれた。文化祭が終わると精算をして株主総会で収支報告。そして、収益を何に使うのかまでが一連の学びとなっている。
「これまで、収益は学校の設備や近隣の保育園への寄付、エントランスの植樹などに使われました。2024年の能登半島地震の際には、義援金として送りました。」
社長経験者にインタビュー

「元社長」のみなさん
企画される商品は女子高校生らしく実用性とかわいさとを兼ね備えたものが多い。昨年度「社長」を務めた高校2年生4人から話を聞かせてもらった。磯和愛美さんはSDGsの観点からエコバッグを商品に選んだ。
磯和さん「自分の好きな文字をその場で印刷するオリジナルトートバッグを販売しました。持続可能性に配慮して、プラスチックを使わない自然素材にこだわりました。」
以前に2つ上の先輩たちが商品化したリボンのキーホルダーを気に入っているという北口紗樹愛さんは、リボンをデザインした6色のキーホルダー、2色ずつのヘアゴム、ヘアクリップ、パレッタとバリエーション豊かに揃えた。
北口さん「多くの人に気に入って使ってもらえる商品を作りたいと思いました。商品の種類が多い分、忙しかったのですが、その中から活発にアイデアが出てきました。バタバタしたのも今振り返ると楽しい経験でした。」
4社ともに共通していたのは、商品の制作のために夏休みも登校して作業したことだ。文化祭の準備などで多くの人にも経験のあることかもしれない。そこで仲間との絆が深まるのは高校生活の大切な一コマ。中村莉子さん、磯和愛美さんの話がそれをよく表してる。
中村さん「夏休みにも作らないと間に合わないのですが、友達と集まって作るのは楽しい体験でした。販売の担当をシフトで分けていたのに、結局、みんなで一緒に販売することになったのも良い思い出です。」
磯和さん「みんなでアイデアを出し合うことも楽しかったし、文化祭で一緒に呼び込みをしたのも楽しい経験でした。終了間際には、他の会社の人たちも手伝ってくれました。」

文化祭当日の様子
収支の見通しや、出資してもらうための魅力的な事業計画の立案、実際の企業とのやり取りなど、学ぶことは多岐に渡る。取り組みを通して身についた力について笹川采穂さん、中村莉子さんは次のように話してくれた。
笹川さん「機材のレンタルで企業の方と電話やメールで打ち合わせをしました。ビジネスの場でのマナーを学ぶことができました。想定外のことが起きた時に臨機応変に対応する力も身についたと思います。」
中村さん「この取り組みを通じて、話し合うことの大切さを実感しました。私が当たり前だと思っていることであっても、違う意見を持っている人がいます。言葉にして話し合わないとわからなかったことです。」
自分で選ぶ未来の形
取材当日には、今年起業した新しい会社の事業説明会があった。各社のアイデアはどれも工夫された面白いもので、堂々としたプレゼンの姿勢も頼もしい。そして何より、生徒たちがこの取り組みを楽しんでいる。
学校での学びは、将来どんな社会を作っていくのか、どんな未来にしていきたいのかと密接につながっている。ライフスタイルをアップデートするような商品開発や未来を支える新事業への投資は、何も遠い世界で起きていることではない。そのことに実際の体験から気づくことで、生徒たちの将来の選択肢はずっと広がっていくのだと感じた。
