MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― 子供たちのシンギュラリティ

2020.7.10

第10回 親世代のテクノロジーへの向き合い方

小泉 貴奥

日本シンギュラリティ協会 小泉 貴奧

米国テキサス大学アーリントン校学際学部卒。レイ・カーツワイルの思想に傾倒し、帰国後2007年に日本シンギュラリティ協会を設立。講演やセミナーを開催し概念の普及に努める。ベンチャー企業を3社立ち上げ、電子カルテや各種ネット系サービス、人工知能開発を行うなど、シンギュラリティの実現へ向けて邁進している。
日本シンギュラリティ協会
https://www.facebook.com/groups/JapanSingularityInstitute/

 

COVID-19は社会・経済に大きな影響を与えました。教育を取り巻くテクノロジーも例外ではありません。今回は、2040年から現代へと視点を戻して、目下の教育におけるICT活用とそこから広がる子供たちの学びの可能性について考えてみました。

子供たちのICT事情

 本稿をお読みになっている読者の皆様は、実際にご自身のお子様にICT機器を与えておられるだろうか。年齢にもよるが、もしお子様が高校生になってもスマートフォンを使わせていなければ、世間ではかなり少数派、ということになりそうだ。

 (社)日本教育情報化振興会調査※1によると、タブレット端末を6歳未満の乳幼児に使わせている割合は29.6%。12歳まででも34.6%と、3人に1人が幼児期から使わせている。

 加えて、内閣府調査※2によると、高校生の99.0%がインターネットを利用し、小学生の34.8%、中学生の62.6%、高校生の93.4%がスマートフォンを利用してインターネットを利用している。年齢が高まるにつれ、ほぼ全ての子供がITC機器を利用していることが浮き彫りとなった。

 学習で得られる知識や思考スキルというものは、厳しい世界で生き残っていくための道具である。依存や”有害”コンテンツへのアクセス、犯罪などに巻き込まれる可能性などもリスクとして考慮する必要はあるが、AIを活用した安価で効率的な教育プログラムの受講、世界最先端の研究をしている講師の授業、新たな視点の取得などのリターンも大きいため、リスクもリターンも総合的に評価することが肝要であろう。リスクがわかれば対策も打てるため、保護者としては自らそのリスクをいかに低下できるかを考え、適用していくことが求められるだろう。

※1 平成30年3月 一般社団法人日本教育情報化振興会 「0歳児からの IT 機器利用と保護者の情報モラル報告書」
http://www2.japet.or.jp/file/ParentsMoral.pdf

※2 平成31年2月 内閣府 「平成30年度 青少年のインターネット利用環境実態調査 調査結果(速報)」
https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/h30/net-jittai/pdf/sokuhou.pdf

 

ICTの恩恵は圧倒的に大きい

 そのような中、皆様ご存じのとおり、昨今のCOVID-19による経済活動の停止や教育への混乱が生じている。Zoom等を活用した遠隔授業等で対応できているところもあるが、子供たちにとっては、学校や塾の休校・休業による直接的な教育進捗の停滞、友人に会えないことへの心的ストレスもさることながら、今後は親の経済状況悪化に起因する教育費削減なども起きてくるかもしれない。

 特に現在のような状況下においては、ICT機器を使うことで得られる新しい知識やスキルを獲得できるというリターンは圧倒的に大きい。今後は世界経済の状況としても、無駄と考えられるものは淘汰されるようなより厳しい世の中になりそうであり、ICTを使ってより効率的に生産性を上げていかなければ生き残っていくことはできないだろう。これは私たち大人でも同じことが言えるため、反省の日々である。

 冒頭の(社)日本教育情報化振興会によれば、ICT機器の使用率は保護者の世帯年収が上がるほど増えるという結果も出ている。リモート学習に必要なICT機器は世帯間の学習ギャップが埋まるほど短期間で国が準備してくれるわけでもないため、結果的に世帯年収が低いほど学習の選択肢が狭まり、保護者の収入による学力格差は今後も拡大するだろう。

 

意欲さえあれば世界も変えられる

 しかしながら、ICT機器と本人のやる気さえあれば、学習はなんとでもなるという希望の光も見える。インターネット上には娯楽コンテンツばかりではなく、専門家の知見や各種能力向上のための知識、お金の稼ぎ方まで様々な情報がある。最近ではICTを活用して月3桁万円を稼ぐ中学生が出てきたり、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学が設立した無料のオンラインコースedXにおいて、成績優秀で修了したモンゴルの少年が学費免除でMITに進学したり、従来は本人の努力だけでは実現困難だったことが、成果として出てきた。

 保護者としてできることは、本人のやる気の芽を潰さず、ICT機器を与えると同時に、そのリスクとリターンを教えて最大限活用できるようにしてあげるということに尽きるのではないだろうか。

 

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