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ミライノマナビコラム  ― 子供たちのシンギュラリティ

2022.4.15

第17回  子供たちの未来がおびやかされている今、教育ができることはなにか

小泉 貴奥

日本シンギュラリティ協会 小泉 貴奧

米国テキサス大学アーリントン校学際学部卒。レイ・カーツワイルの思想に傾倒し、帰国後2007年に日本シンギュラリティ協会を設立。講演やセミナーを開催し概念の普及に努める。ベンチャー企業を3社立ち上げ、電子カルテや各種ネット系サービス、人工知能開発を行うなど、シンギュラリティの実現へ向けて邁進している。
日本シンギュラリティ協会
https://www.facebook.com/groups/JapanSingularityInstitute/

 

世界はグレート・リセットという一大転換点を迎えています。今の世界の潮流がそのままであれば、富の偏在はいっそう進み、子供たちは今より遥かに厳しく辛い社会で生きることになります。この状況に対して、私たち大人や教育にできることはなにかを考えます。

 

カーツワイル予測からの差異と遅れ

 レイ・カーツワイル著「ポスト・ヒューマン誕生」には、2020年代後半には、コンピュータがチューリングテスト1に合格できるようになり、コンピュータの知能が生物としての人間の知能と区別がつかなくなるまでになると書かれています。

 対して、内閣府のムーンショット計画では、2030年までに「一定のルールの下で一緒に行動して90%以上の人が違和感を持たない」「特定の問題に対して自動的に科学的原理・解法の発見を目指す」「特定の状況において人の監督の下で自律的に動作する」AIロボットを開発するとあり、カーツワイルの予測に劣後する目標になっています。

 さらに、現在進行している半導体不足、スタグフレーションやその後のインフレを鑑みると、双方の予測や計画も、実現するとしても先延ばしになるものと思われます。

1 チューリングテスト 計算機科学者アラン・チューリングが提唱した知性の判定テスト。チャットなどの会話で人間と確実な区別がつけられない受け答えをするAIはこのテストに合格したものとみなされる。

 

グレート・リセットと私たちが直面する未来

 加えて、現在世界は「グレート・リセット」と呼ばれる大きな転換点を迎えています。この流れは今までの自由競争型の社会から管理・統制型の社会に向かう流れであり、このまま流されて行くのであれば、我々の子供たちの社会生活は今より遥かに厳しく辛いものになるでしょう。なぜならば、インフレや戦争などにより富の偏在がいっそう進み、何も所有できなくなる一般市民は、全てを所有する人々が作るルールに従って生きる以外の選択肢が存在しなくなるからです。ベーシックインカムでかろうじて生存するか、彼らが求めるスキルを磨き、彼らの支配体制をより強固にする仕事に従事する生き方になるでしょう。それまで生きていられても、ですが。

 それ以外の未来を希求するのであれば一見自由で民主的なこの日本であっても嘘やプロパガンダが多用される情報戦争の只中にあるということを多くの大人が認識し、このままで良いのか思考する必要があるかと思います。

 

子供たちのために大人ができること

 これらの状況を踏まえ、子供たちがより良い社会に生きていけるために教育にできることは以下の2点だと思います。

1.子供に様々な体験をさせることで興味や個性を育み、いまここにある幸福を追求すること。
2.思考⇔行動の往復を回すことで実現力を高め、自立させること。

 1に関して、現在の日本社会は我慢の連続で結局幸せは手に入らない仕組みになっています。いい学校に入るために我慢、いい会社に入るために我慢、出世するために我慢、定年するまで我慢、年金は先延ばしにすれば沢山貰えるからそれまで我慢と、結局何のために生きてきたかわからない人生になります。ですから幼少期に子供の興味がある、楽しいと感じる様々な体験をし続けることが、いまここにある幸せを自分でつかみ続けることに繋がり、結果子供の人生に豊かさをもたらします。またその体験は子供の興味関心を元にしたものですので、個性を醸成することにも繋がります。

 2に関して、私たちの周りにある人工物のすべては思考の産物です。そして私たちが思考して行動したものしか現実化しないため、思考するだけではなく行動も必要になります。うまくできなかった場合は、どうしたらうまくいくかを考えまた行動する、そういった往復ができれば、自ら思考し行動できる、自立可能な人間に成長しやすくなるのではないでしょうか。

 

教育も自ら新しいスタイルを作ることができる

 興味を追求するためのツールは自然でも、芸術、運動、電子工作、ゲームやプログラミングでも良いかと思いますが、いずれにせよ子供の遊びの中にあるものだと思います。また、そのために必要な場所は毎日の生活すべてに拡大可能でしょう。学校にも必ずしも行く必要なくホームスクールやオンラインスクールでも良いでしょう。2020年のWall Street Journalの記事2では、全米で約4百万人の小中高校生がホームスクールで学んでいる推計され、2020-21年度の終わりには少なくとも1千万人に増加するだろうとの予測もあります。

 現状が満足できる社会であるのであれば良いのですが、そうでないのであれば、自分たちで変えることもできます。後には引けない状況まで追い込まれている今、私は今までのやり方を続けることは止めたいと考えています。

2 米でホームスクールが人気、背景にコロナ懸念 複数の家庭と合同で「小規模学校」を作る動きも

 

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