MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― 子供たちのシンギュラリティ

2023.4.14

第21回  制約からの解放—— 取り除くべきルールや常識、そしてChatGPTを用いた解決法

小泉 貴奥

日本シンギュラリティ協会 小泉 貴奧

米国テキサス大学アーリントン校学際学部卒。レイ・カーツワイルの思想に傾倒し、帰国後2007年に日本シンギュラリティ協会を設立。講演やセミナーを開催し概念の普及に努める。ベンチャー企業を3社立ち上げ、電子カルテや各種ネット系サービス、人工知能開発を行うなど、シンギュラリティの実現へ向けて邁進している。
日本シンギュラリティ協会
https://www.facebook.com/groups/JapanSingularityInstitute/

私たちの社会は、古くからのルールや常識に縛られており、私たちが創造的で柔軟な考え方をすることを妨げることがあります。今回のコラムでは、柔軟な考えを有するため、再検討しても良いかもしれないいくつかのルールや常識について検討しています。例として1成功の定義を見直す、2教育の価値を再評価する、の2点をお伝えし、今話題のChatGPTを教育分野でどう活用すればよいかも含め提案できればと考えます。

成功の定義を見直す

 いままでの社会は私たちに、成功とは高い収入や名声、地位を得ることだと教えてきました。しかし、幸福や充実感をもたらす成功の定義は人それぞれです。以下に、マスター・ソーシャルワーカーのブレネ・ブラウン氏※1組織行動学者のスティーブン・コヴィー氏※2の著書などを参考に、成功の定義を見直す際に考慮すべきポイントをいくつか挙げたいと思います。これらは見直しの一部ですが、取り入れることで今までの定義に違和感を持っていた方々に、自分の人生は意味のあるものだったと感じやすくなるのではないでしょうか。

1 自分にとっての価値観を明確にする
成功の定義を見直すためには、まず自分が何を重視しているのか、何が自分にとって価値あるものなのかを理解することが大切です。家族との時間や健康、趣味に没頭する時間など、物質的な報酬だけではない要素も考慮に入れると良いかもしれません。

2 他人と比較せず、自分のペースで進む
他人と比較してしまうと、自分の成功の定義が曖昧になりがちです。他人の意見や価値観に振り回されず、自分がどのような人生を送りたいか、何を達成したいかを考えることが大切です。

3 成功を追い求める過程での成長を大切にする
目標に向かって努力する過程で得られる経験やスキル、人間関係なども、成功の一部と捉えることが重要です。成功を追い求める過程での学びや喜びを大切にすることで、より充実感のある人生を送ることができるのではないかと考えます。

教育の価値を再評価する

 現代社会では、高学歴が成功への道だとされていますが、それは必ずしも真実とは言えないでしょう。本人の希望する仕事などが学校教育の延長線上にあるのであれば必要かもしれませんが、実践的なスキルや人間関係を築く能力や経験、そもそも好きであるかどうかなど、重視した方が良い点は他にもあります。

 また、教育評論家であるケン・ロビンソン氏が現行の教育制度の問題点と、創造性や革新性を育む新しい教育パラダイムの必要性について語っています※3が、現代の教育制度が産業革命時代に根ざしており、現在の社会と学習者のニーズに適合していないことが指摘されています。また、標準化された試験や一様なカリキュラムによって、学校教育を受ければ受けるほど生徒たちの創造性や個性が抑圧され、低下している点も述べられています。それらを改善するために下記の3点が提案されています。

1 人間性の多様性の尊重
人間はそれぞれ異なる才能や関心を持っているため、教育はそれらの多様性を尊重し、個々の才能を伸ばすことができる環境を提供すべきである。

2 個々の学習者のニーズに応えるカリキュラム
学習者が自分の興味や才能に基づいて学ぶことができるよう、カリキュラムは柔軟で多様なものにすべきである。また学習者が自分のペースで学ぶことができる環境を整えることも重要である。

3 教育の目的の再定義
教育の目的は、知識の詰め込みや試験での高得点だけではなく、生徒たちが自分の才能を発見し、磨くことができる環境を提供することにあるべきである。

ChatGPT × Education

 これらの点を踏まえると、ChatGPTのようなConversational AI(対話型AI)の教育分野での活用方法が見えてきます。

 例えば実業家の伊藤穰一氏がYouTubeで解説※4ていましたが、ChatGPTのプロンプトをソクラテススタイルに変更※5することで、生徒の理解度を把握しつつ、生徒が自分で考えられるよう適切な質問と、解答に対するアドバイスや質問を提供することができます。また、多言語翻訳も可能なので、他の言語で書かれた資料も学習に使いやすくなり、新たな視点やアイデアを発見し、創造性を育むことをしやすくなるでしょう。

 加えて、生徒が作成した作文やレポートに対して、ChatGPTは文章の構成や語彙、文法などに関する具体的なアドバイスを提供できるため、生徒は自己学習を促進し、より効果的な学習が可能となるでしょう。

 以上、簡単ではありますが、最近話題のChatGPT教育分野で活用して、古い常識やルールがもたらす問題を解決する例を挙げました。ご参考になれば幸いです。

出典:
※1 Brown, B. (2010). The Gifts of Imperfection: Let Go of Who You Think You’re Supposed to Be and Embrace Who You Are. Hazelden Publishing.

※2 Covey, S. R. (2013). The 7 Habits of Highly Effective People: Powerful Lessons in Personal Change. Simon & Schuster.

※3 Robinson, K. (2010). Changing Education Paradigms. RSA Animate.
https://www.thersa.org/discover/videos/rsa-animate/2010/10/rsa-animate—changing-paradigms

※4 伊藤穰一【GPTと人間の共存する未来】Chat-GPTの解説や活用方法、AIを使った教育、web3とGPTの新たな関係性などを解説します
https://www.youtube.com/watch?v=NQ8MWozCI6Q

編集部注:
※5 ChatGPTは、会話の前提となるルールなどを設定することができる。ソクラテススタイルとは、対話者の疑問に対して答えを返す(孔子スタイル)のではなく、対話者の考えを引き出すように意見を出し合う話し方のこと。

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