MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― 子供たちのシンギュラリティ

2018.7.13

第2回 学習のあり方の変化――2040年の学びの風景

小泉 貴奥

日本シンギュラリティ協会 小泉 貴奧

米国テキサス大学アーリントン校学際学部卒。レイ・カーツワイルの思想に傾倒し、帰国後2007年に日本シンギュラリティ協会を設立。講演やセミナーを開催し概念の普及に努める。ベンチャー企業を3社立ち上げ、電子カルテや各種ネット系サービス、人工知能開発を行うなど、シンギュラリティの実現へ向けて邁進している。
日本シンギュラリティ協会
https://www.facebook.com/groups/JapanSingularityInstitute/

 

技術の加速度的な進展は子供たちの学習を大きく変化させます。現在でもICTツールが教育現場に導入されて学び方の改革が進んでいます。この変化の延長線上にはどのような学び方が待っているのでしょうか?

今回は、現在予測される技術進展から未来の学習のあり方を想像してみたいと思います。

時は2040年。主人公は14歳のどこにでもいる中学生 エウク。今から8年後の2026年に生まれたエウクの目を通して未来の学びを実感してみてください。

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2040年。幾度かの革新的なテクノロジーによるパラダイムシフトがおこり、社会システムの多くが自動化された。

教育や学習に関しても多くが自動化され、学習にかかるコストが低下し、より多くの選択が可能になった。しかし、一定の年齢までは親と社会がその個の育成に責任を負うため、個の成長度合いが親の教育方針に依存するのは今も昔も変わらない。

エウクは初夏の日差しに心地よい眠りから目覚めると、昨日の記憶が蘇り、自分が昨日と連続した一つの個体であることを実感する。

身支度を整えてダイニングに行くと、父がフレンチトーストとコーヒーを用意してくれていた。エウクの視界に、使用されている食材(小麦、卵、バター、コーヒー豆など)の産地と生産方法、それぞれの物流ルートが本人の希望通り提示される。

バターの輸送ルートに使われている最適化アルゴリズムが、珍しく4ヶ月間も更新されていないことがわかったので、さきほど身支度の間に読んだ論文のアルゴリズムが適用可能であることを示し、南アジア地方物流管理コミュニティに送信。ついでに表面の酸化を停止させ外部に熱を発散させることで低温を維持できるパッケージング方法も思いついたので、食品品質管理コミュニティに送信しておいた。

朝食を食べながら両親と今週末から行くオーストリア旅行について話し、学校へ向かう。

私は既に数十年前の大学レベルの知識は持っていて、いくつかの専門性もある。今まで執筆してきた論文も、人類全体が持つ科学的知識への貢献度は決して低くない。どこにいても授業に参加できるVR/ARが脳に結線されているので、親が特殊な教育方針を持っていない限り、基本的に過去の体系を引きずった学校には物理的にも行く必要はない。

これは私が特殊なのではなく、みんな小さい頃から、学校以外の場で個人の能力に合った教育を好きなだけ自由に受けられるからである。私も両親に勉強を強要されたことはなく(教育基本法「教育の目的」に含まれる「国家」や「勤労」の定義が変化しているので、強要する意味もあまりない)、高度人工知能が学習への興味を持続できるように、ゲーム化したり、適度な休憩を挟んだりとサポートしてくれるし、反復学習は半自動化も可能なので、自らのペースで学び、没頭することができていた。

私の場合は親が、同年代の子供たちと同じ時空を共有するのは将来にわたって貴重な体験だ、という今時珍しい考えを持っており、さらには法的にもまだ庇護下にあるから学校には行くようにしている。物理的に学校に来ている子の方がマイナーなんだけど。

私は授業の記録を録りながらサマライズを作成しつつ、昨晩途中だった、重力波を用いた高次元への干渉装置のPoC(*1)に関して、クラスや世界中の友達と探求も深めることにした。

*1 PoC: Proof of Conceptとは、新しい概念などが実現可能であることを証明する試作のこと。

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いかがでしょうか。2040年の子供たちの学習風景がイメージできたのではないでしょうか。

次回以降、エウクの学びを支える未来の技術について詳しく解説しながら、教育がどのように変わっていくのかを考えていきたいと思います。

 

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