MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― 子供たちのシンギュラリティ

2019.1.4

第4回 2040年の学習テクノロジーが子供たちの知能をいかに高めるのか

小泉 貴奥

日本シンギュラリティ協会 小泉 貴奧

米国テキサス大学アーリントン校学際学部卒。レイ・カーツワイルの思想に傾倒し、帰国後2007年に日本シンギュラリティ協会を設立。講演やセミナーを開催し概念の普及に努める。ベンチャー企業を3社立ち上げ、電子カルテや各種ネット系サービス、人工知能開発を行うなど、シンギュラリティの実現へ向けて邁進している。
日本シンギュラリティ協会
https://www.facebook.com/groups/JapanSingularityInstitute/

 

前回は学習の在り方を大きく変えるであろう、アイコン(脳内で機能するナノマシン)の登場に関して想像してみました。今回はアイコンの技術が具体的にどのように学習をサポートし、知能を強化するのか、現在の技術とその応用から考えてみたいと思います。

現在でも学習のサポートが可能な様々なコンテンツが書籍やコンピュータの中にあります。私たちは、これらを適切に活用することで理解を深めていますが、全て体外のデバイスに手や音声などを使って入力し、その結果を感覚器官(目や耳)を通して理解する形となっています。将来アイコンのような脳神経細胞と直接コンタクトできるデバイスが登場することで、脳の思考直接入力となり、結果を脳に直接出力できるようになるでしょう。情報取得までの過程がよりシームレスになり、学習に要する時間を短縮することができます。

アイコンによって脳内の反応もモニタリングできようになれば、理解できている状態と理解できていない状態の脳内の反応の差異を知ることができるようになります。自分の理解した知識体系とまだ理解していないその他の世界中の知識体系を視覚化して比較することで、自分の理解がどこまで及んでいるかがわかりやすくなり、次に学ぶべき点が明確になるでしょう。逆に理解が不足している点に関しては、どこまでさかのぼる必要があるかを探り、理解に必要な情報を提供することで、早い段階で分からないことを無くしていくことができると考えられます。

現在でもCoursera、edX、Udemyなど、映像を活用した良質な学習コンテンツをはじめ、理解を助ける説明も日に日に増えてきています。また、そこにたどり着くまでの検索エンジンも高性能になってきています。今後も情報の量と質の向上、検索エンジンやレコメンドエンジンの精度向上が止まるとは思えず、理解までの時間も大幅に短縮できるようになるでしょう。

例えば、ユーザーが今読んでいる文章の理解を向上させたいと求めれば、自分の記憶やインターネットからの実例・映像・類似例などが検索され、現在のAR(拡張現実)技術の延長で結果を知ることができるようになるでしょう。アイコンは視覚野や聴覚野にも接続されるので、例えば、AIが教授の姿で現実に重ね合わされて出現して解説をしたり、今見ているものの隣に補足情報が表示されたり、音声で解説を求めてもよいかもしれません。

現在仕事などで活用されているマネージメントアプリケーションもより使い勝手の良いものが登場し、アイコン上で展開できるようにもなるはずで、学習のスケジュール管理や進捗管理に役立てられるようになるでしょう。

これらのツールを合わせて用いることで、計画からモニタリング、レコメンドによる情報提供、関連性の発見と気付き、理解の確認と次への計画という一連のフィードバックループを回すことが誰にとっても容易になります。繰り返し行うことで、「わからない」から「理解できた」までのプロセスを高速で完了できるようになると考えられます。

知能強化に関しては、現在自分の脳で行っている作業の一部をアイコンと外部サーバで代替することで可能になってくるでしょう。例えば脳が行っている処理の一つに多言語の翻訳や文章の要約がありますが、これらは現在のAI技術ですでに可能になっています。また、類似・関連する文章の検索や参考になる文献・解説をレコメンドすることができるソフトウェアも一般的になりつつあります

構造的に人が何かを理解するには、1.共通点の発見 2.関係性の発見 3.グルーピングの発見 4.ルールの発見と4つのパターンがありますが、自らの思考の範囲を超えて、AIで処理できる部分に関しては処理を行い、その結果を受け取ることで、自分が考えつかなかった深い理解を得るチャンスが出てきます。

おそらく最終的には、分からない状態にあっても、いちいち指示を出さずとも次の瞬間には「理解している状態」となっている世界が実現できるようになるはずです。次回は、これらの変化によって学習や入試などの教育システムがどのように変化するのかも含めて検討したいと思います。

 

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