MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― そこが知りたい小学校英語

2020.10.9

第11回 コロナ禍でも主体的・対話的に学ぶ工夫

高橋 美由紀

高橋 美由紀

博士(地域研究)
愛知教育大学名誉教授
外国語教育メディア学会副会長・小学校英語教育研究部会代表
世界の研究者が関わった「TOEFL Primary」のテスト開発会議に参加し、制作に携わる。 全国の小学校での外国語活動の指導助言や調査・研究を行う。
主な著書『CLIL in Diverse Contexts 次期学習指導要領とCLILを活用した英語の授業づくり』(2020) 鳴海出版、『小学校授業づくりのポイント』(2015) ジアース教育新社、『新しい小学校英語科教育法』(2011) 協同出版

 

他教科を取り入れた言語活動

 コロナ禍において、コミュニケーション能力を育成する外国語活動や外国語教育はどのように行われているのでしょうか? 

 今回ご紹介する滋賀県近江八幡市立安土小学校2年の外国語活動の授業では、映画や絵本を観る、友達同士ではなく先生と対話をする、個人での作品作りと発表等、「3密」にならないような工夫がなされていました。また、外国語活動の学習指導要領「言語活動で扱う題材は他教科等で児童が学習したことを活用する」(文部科学省2018:45)に基づいて、この授業も「図画工作」「生活科」の内容を取り入れたものでした。

 「かざりをつくろう~身体のパーツ~」をテーマに、英語専科の嶌本千咲子教諭が主導での授業を行いました。

 

1時間目 歌・絵本・絵カードで興味をひく

 1時間目は、子ども達が身体の部位の言い方に慣れ親しむために、「Head, shoulders, knees and toes」の歌を教師と一緒に歌いました。次にFrom head to toe (Eric Carle著)』の絵本の読み聞かせを動きをつけながら教師が行い、読み終わった後に、(絵カードを見せながら) “What animal do you remember in this book?”、(身体の部分を指しながら) “What’s this?”等、英語で動物の名前や身体のそれぞれの部位の言い方を子どもに確認しました。

 

 次に、教師は、子ども達の興味関心の高いディズニーの『Toy Story 4』 に登場するWoody や Buzz等のキャラクターの写真を見せて、 “I like this character. His name is Forky!” とForkyを子ども達に注目させました。そして、“He has many face. …… (中略) …… I want to make his friends! Let’s make his friends! Like this!” と言いながら、ピンクのスプーンやブルーのナイフ、白いフォーク等に顔や身体をつけた見本を見せながら、次の時間に子ども達に「Forkyの友だちを作ろう!」いう目的意識を持たせた活動を行っています。

Forkyの友だちを作る

※ Toy Story 4 Official Trailer

 

2時間目 Forkyの友だちを作ろう!

 子ども達にとって待ち遠しい2時間目が始まりました。教師の “Today’s target is ……” に続けて、子ども達は「Forkyの友だちを作ろう!」と学校中にひびき渡るような大きな声で言いました。この時間では、(1)欲しいものを伝える表現に慣れ親しみ、相手を意識して自分の欲しいものを伝えることを目標としています。

 授業のはじめに、Color song の歌と身体パーツの絵カードを使った “What’s this?” に答える等の復習をしました。次に、Forkyの友だちを作るために、子ども達が選んだフォークやスプーンに必要な身体のパーツをつけていきます。ALT、英語専科の先生、担任の先生の3人の元に行き、欲しい身体パーツをもらうための表現を練習しました。

子ども:Hello!
先生:Hello! May I help you?
子ども:    please.(欲しい色とパーツを指して)
先生:Here you are.
子ども:Thank you.

 子ども達は     please” と自分の欲しいものを伝えて、先生方からそれぞれの身体のパーツをもらい、席に戻り、「Forkyの友だち」を熱心に作っていました。

欲しいパーツを英語で伝える

 この活動を通して、友達とのコミュニケーション活動ができない場合でも、作品作りや絵本等でのインプット、歌やカードを使っての発話や自分が作成した作品の説明をするためのアウトプット、また、教師とのコミュニケーション活動等ができました。また、子ども達は単に英語の語彙を覚えるのではなく、身体の各部位の呼び方や欲しいものを伝える表現を学ぶことの意義を体感したり、相手意識を持って自分の意思を伝える活動、さらに、「Forkyの友だち」の制作をしながら自分の作った作品を英語で発表したりする等「深い学び」ができていたと思いました。

 

Anup

 

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