教科としての外国語教育がスタートして1年
2020年度より新学習指導要領が本格的にスタートし、小学校5年生6年生では新しく外国語(英語)が教科となりました。外国語科の授業では、国語や算数と同様に「文部科学省検定済み教科書(以下「教科書」)」を使用して指導がなされ、学習に対して「観点別学習状況評価」も行われることになりました。
「教科書」では、外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせ、外国語による「聞くこと」「話すこと(やりとり)」「話すこと(発表)」「読むこと」「書くこと」の言語活動を通して、4技能5領域を育成する工夫がなされています。現在、小学校では、この「教科書」を使用して、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業が展開されています。また、教科としての外国語教育として、言語活動を通して、「情報を整理しながら考えなどを形成する」授業が目指されています。
主体的・対話的で深い学びの実践——世界の料理を題材にして
愛知県刈谷市立小高原小学校(犬塚章夫校長)では、「主体的に学びに向かい、かかわり合いを通して、学びを深める子どもの育成」をテーマに、公開授業が行われました。
5年生では「What would you like?」のタイトルで、「料理の魅力を伝えたい~勝負飯はこれだ!~」の授業が行われました(高津真教諭、近藤京子教諭、万年由佳教諭)。
この単元について「教科書」では、「What do you want?」の丁寧な言い方を学習するとともに、世界の国の食文化について知る活動や日本の各地の名物を知り、メニューを考える活動等が掲載されています(東京書籍2020:54-61)。本授業では、「主体的・対話的で深い学び」の視点から、2021年に日本で開催される予定のオリンピック・パラリンピックに参加する選手達を意識した「勝負飯」を取り上げた活動を行いました。
前時までに、児童は、オリンピックの選手村では、選手の体調を整えるために世界の代表的な料理が多数準備されることを学び、世界の食文化への興味を高めました。
次に、児童がオリンピック・パラリンピックで「応援したい国の料理」を調べること、そして、その料理の特徴や魅力を英語で伝え合う活動を行いました。「英語」が国際共通語として有用であると実感し、英語を使って表現したいという気持ちを高めるために、「勝負に勝つための料理」を紹介・宣伝する方法を考えました。
児童は、自分たちの発表を撮影し、発表の振り返りを行ったり、ペアの発表を撮影しながらお互いに見たりして、相手に伝わる表現方法を模索しました。また、料理の味だけでなく、家庭科で学習した「食まるファイブ」※1を使用して、自分たちが調べた料理について「健康に良いことをアピールしてみようか?」、「お得感とヘルシーを宣伝すると売れそうだ!」等のアピールポイントを出し合い、聞き手(相手)にどうしたら上手く伝えることができるのか、を考えました。
参観時には、児童は、自分たちの選んだ料理をテレビショッピング形式で紹介・宣伝しました。
ある児童は、自ら作成したポスターを使って自分のレストランの魅力を発表しました。
「Hello. This is my Italian restaurant. This is tomato pasta. It’s made from tomatoes. Shrimp is in it. It’s delicious.」
発表を聞いている児童は、反応をしたり相づちをうったりしながら、発表の良いところをメモしながら聞いていました。
発表が終わったところで、以下のように、料理の魅力を伝えるのに効果的であったところや表現等について話し合いました。
(1)アピールポイントの繰り返しをする
例えば「言葉を繰り返す」ことで、強調されたり、聞き取りやすくなること
(2)聞き手を意識した話し方をする
例えば、This is my Italian restaurant. の後に、Do you like tomatoes? の質問文をいれることで、聞き手の注意を促すことができ、その後に、This is tomato pasta.と続けることでより効果がでる等。
(3)ジャスチャーの効果等
話し合いの内容を意識して、改善したバージョンで、再度テレビショッピング形式による宣伝活動を行いました。
「Hello. This is my Italian restaurant. Do you like tomatoes? This is tomato pasta. It’s made from fresh tomatoes. Shrimp and meat are in it. It’s delicious!」
最後に振り返りとして、 前半の発表と後半の発表とを比べて、改善された点や伝わりやすくなった表現や効果的だった方法等、また、次の料理の販売に向けての構想等を考えてまとめました。
※1 「食まるファイブ」は、子供たちがバランスよく食べることの大切さをわかりやすく学べるよう、愛知教育大学の学生が考案した5つのキャラクター。食事バランスガイドで分けられた5分類の料理に対応する。
外国語活動よりも高度な授業にするために
この授業を参観して、これまでの外国語活動の授業と異なる点は、4技能を意識し、かつ「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業づくりがされていることです。
単に、語彙や表現に慣れ親しんで発話するのではなく、児童が調べ学習等を通して得た情報を、いかにして話し手(相手)に分かりやすく伝えることができるのか、本当に伝えたい気持ちをどのようにしたら効果的に伝えることができるのか、また、話し手(相手)の伝えたいことを聞き手が正確に理解することができるのか、このような「主体的・対話的で深い学び」の観点から「言語活動」を通しての授業が行われていました。
加えて、音声によるコミュニケーションだけでなく、レストランのメニューを絵と文字を活用して制作し、それをアピールするために、ジャスチャーや話の内容、話し方や順序等を考えて発表すること等、4技能5領域を育成するための方略ができていたと思いました。