MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― そこが知りたい小学校英語

2021.7.16

第14回 CLILを活用した英語学習(1)——理科と国語

高橋 美由紀

高橋 美由紀

博士(地域研究)
愛知教育大学名誉教授
外国語教育メディア学会副会長・小学校英語教育研究部会代表
世界の研究者が関わった「TOEFL Primary」のテスト開発会議に参加し、制作に携わる。 全国の小学校での外国語活動の指導助言や調査・研究を行う。
主な著書『CLIL in Diverse Contexts 次期学習指導要領とCLILを活用した英語の授業づくり』(2020) 鳴海出版、『小学校授業づくりのポイント』(2015) ジアース教育新社、『新しい小学校英語科教育法』(2011) 協同出版

2020年度からの新学習指導要領で小学校の英語教育が拡充されました。そこでは「実際に英語を用いた言語活動を通して」学ぶことが重要とされています。そのための学習方法の一つとしてヨーロッパで広く採用されているCLIL(Content and Language Integrated Learning :内容言語統合型教授法)を活用した英語学習の考え方を紹介します。

実際に英語を用いた言語活動を通して

小学校は、2020年度から3・4年生は文部科学省が作成した教材『Let‘s Try!』を、5・6年生は検定済み教科書を活用して学習しています。学習指導要領では、単に語彙や文法の知識だけでなく「実際に英語を用いた言語活動を通して」学ぶことが重要であり、 言語活動で扱う題材は、「児童の興味・関心に合ったものとし、国語科や音楽科、図画工作科など、他の教科等で児童が学習したことを活用したり、学校行事で扱う内容と関連付けたりするなどの工夫をすること」と述べられています(文部科学省2018:125)。

理科や国語と関連づける

その実践として、検定済み教科書では、理科の食物連鎖国語科の主語と目的語の内容と関連付けて英語を学ぶ、「We all live on the Earth.」(東京書籍 6年生:42-49)、「What do zebras eat?」(光村図書 6年生:69)等が取り上げられています。

ここでの目標は「地球に暮らす生き物について考え、そのつながりを発表しよう」(東京書籍:42)と掲げられています。


A: Where do lions live?
B: Lions live in the savanna.
A: What do lions eat?
B: Lions eat zebras.

という会話を友達とペアでたずね合う活動(東京書籍:44)や、

[lions] [zebras] [grass] の3枚の写真を使って、2つの文を作りましょう。下の「?」に(巻末)シールをはり、文を言いましょう」(光村図書:69)の活動があります。  

(編集部注:画像はイメージ。実際の教科書の写真とは異なります)

上記の写真の隣には日本語で「生き物には「食べる」「食べられる」関係があるね」と解説があります。

また、「次の4枚の写真の中から2枚を使って、文を作りましょう。下の「?」にシールをはり、文を言いましょう。」という活動では、[cabbages] [small birds] [hawks] [caterpillars]の写真があり、これら写真を「?」eat 「?」の図に当てはめて、「主語と目的語」の関係について、国語と関連付けて学ぶ内容になっています。そこでは、「英語の文は、日本語の文とどんなところがちがうかな」と書かれています(光村図書:69)。

「ことば探検」として、「だれが? だれを?」、「次の文に合う絵はどちらかな。」「気づいたことを書こう」という活動では、「Bugs eat plans」「Plans eat bugs」の主語と目的語を「入れかえるとどうなるの?」の問いかけと①虫が葉を食べている絵、②葉が虫を捉えようとしている絵が掲載されています(東京書籍:48)。

内容と語学を合わせる言語学習アプローチ

このような活動をCLIL(Content and Language Integrated Learning、内容言語統合型教授法)と言い、内容(他教科や異文化理解等)と語学(外国語)の両方を合わせる言語学習アプローチです。ヨーロッパで広く採用されており、日本でもCLILは国際共通語である英語の教育に用いられています。小学校外国語(英語)教育でこのアプローチを使用すると、学習の内容に重点が置かれることに加え、Authentic Materials(実物教材)を使うことで、英語コミュニケーションの必然性や児童の興味関心が高まります。先ほどの例では、生き物について考えたり、友達とペアでたずね合うというような、英語でのインプットやアウトプットにより、英語のスキルが習得できるだけでなく、食物連鎖や主語と目的語の関係といった、理科や国語の知識や学習スキル、児童の認知能力も同時に伸ばすことができるという長所があります

参考文献
和泉伸一・池田真・渡部良典(2012年)『CLIL(内容言語統合型学習)上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第2巻 実践と応用』Sophia University Press 上智大学出版

Anup

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