三重県教育委員会の教職員研修事業「小中学校英語研修」では、今年度「子どもたちが自らの考えや思いを主体的に伝え合うことができる力の育成~学習者用デジタル教科書を活用して~」を研究テーマとした研修が実施されました。今回は、鈴鹿市立神戸小学校(岡井崇教諭)のデジタル教科書を活用した6年生の授業についてご紹介します。
「知識・技能——4技能5領域」のスキルを育てる授業づくり
訪れたのは、初めてデジタル教科書を使用した、6年生Unit 4「My Summer Vacation」の第1時限目の授業でした。児童がコミュニケーションの場面を理解して言語活動ができるように、教師はデジタル教科書の視聴覚教材である「Story」を活用した活動を行いました。
児童は映像を視聴し、夏休みの思い出について、I went to ~(夏休みに行った場所)、I ate / saw/ enjoyed~(そこでしたこと)、It was~(感想)等の表現から、話の概要を捉え、コミュニケーションの状況場面を理解する活動を行いました。1回目は全員で「Story」を視聴して話の概要を推測しました。2回目は、児童の個々人のタブレット端末を使って、児童自身のペースで視聴しました。3回目は、「Story」の登場人物3名が話す夏休みの話について、リリー、和希、将太に分けて、児童が聞きたい人物の話を一人一人が選んで聞いて、内容を理解しました。
次に、夏休みのできごとを友だちと尋ね合うために、「Let’s chants」の「I went to the mountains.」を視聴して、児童が言語活動で活用するための表現を何度も聞いて、発話につなげる練習をしました。
このように、児童は、デジタル教科書教材のネイティブ・スピーカー等が話す音声を用いて、聞くことや話すことを繰り返し練習することができ、知識や技能を身に付けることができました。
また、デジタル教科書を活用することで、語彙や表現についての学習を行うだけでなく、児童が登場人物になりきって、実際にコミュニケーションの場面を設定して発話練習することができ、児童が「できた」という自信につながりました。
デジタル教科書を活用した「児童の思考力・判断力・表現力等」を高める授業づくり
「思考力・判断力・表現力等」は、「知識及び技能」を活用して、「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」のような言語活動を通して養われます(下図 文部科学省)。児童は、デジタル教科書を活用することで、一人一人が「知識及び技能」で身に付けたことを使って、個に適した内容を英語で表現したり、伝え合ったりする言語活動ができます。
下記の写真は、6年生のUnit5 「He is famous. She is great.」の「好きなものやほしいものなどを伝えようのLet’s watch/ Let’s listen/ Let’s try」の活動です。
「人物当てクイズ」を行うために、児童は、
①デジタル教科書教材の登場人物&先生のモデルを視聴して、内容を理解します。
②視聴した登場人物の内容を自分の伝えたい内容に変えます。具体的には、児童一人一人が能力や特性に応じて、学習者用デジタル教科書をタブレット端末で使用し、彼ら自身が好きなものや欲しいものに関して、「I like ~. /I play ~ ./ I have ~ ./I want ~ .」を語彙リストから選んで書き替えます。
③ペアでクイズを出題し合い、試行錯誤しながらクイズの出題を考え、友だちと何度も繰り返しながら練習します。
④「人物当てクイズ」では、誰のことを話しているのか等を児童が回答するには、児童個人の能力や特性に応じた学習の場面が重要であり、「児童の思考力・判断力・表現力等」を高めることができると思います。
児童が自信を持って、「わかった!」「話せた!」と思うことが児童の学習意欲の向上につながります。このように、個々人に適した授業での「デジタル教科書・教材」の活用は大変有効だと思いました。
今回は、「学習者用デジタル教科書・教材」の活用法として、文部科学省が示している3つの柱の内、(1)知識及び技能については、新出語彙や表現について繰り返して個人練習をする活動、(2)思考力・判断力・表現力等については,「Story」や「Let’s watch」「Let’s listen」 等を視聴しながら、「Let’s try」につなげ、コミュニケーションの場面・状況での発話内容を理解し、その場面で使われている表現を使って、自分の伝えたいことを表現できるようにする活動の事例を紹介しました。次回は、(3)学びに向かう力,人間性等での活用についてお話したいと思います。