個別最適な指導・学びを実現するデジタル教科書
小学校では2024年度から教科書が新しくなります。そして、外国語(英語)ではデジタル教科書が他教科に先行して導入されます。デジタル教科書は、文字の拡大・縮小、書き込み、色の変更の他、音声読み上げ機能があり、児童は自分のペースでネイティブ・スピーカー等が話す音声を繰り返し聞くことができ「個別最適な学び」ができます。さらに、動画・アニメーション等のデジタル教材と組み合わせて活用することで、紙の教科書(文字)よりも学習の理解を促す効果もあります。
前回、お話ししたように、令和6年度から使用する教科書には、動画などにつながるQRコードが掲載されています。したがって、児童はQRコードを読み取って、繰り返し見たり聞いたりできるので、いつでもどこでも英語の学習ができます。
文部科学省は「子供一人一人の特性や学習進度、学習到達度等に応じ、指導方法・教材や学習時間等の柔軟な提供・設定を行うことなどの「指導の個別化」が必要である。(下線筆者)」と言及しています(文部科学省:2022, 5『学習者用デジタル教科書の活用による指導力向上ガイドブックー令和4年度学習者用デジタル教科書を活用した教師の指導力向上事業』)。そして、授業改善として、一人一人に適した内容で学習用デジタル教科書を活用して学習を進めている「北海道小樽市立朝里小学校」の事例が掲載されています(図1)。
デジタル教科書の真価は家庭学習で発揮される
ここでは、限られた授業時間よりも時間に余裕がある家庭学習における学習者用デジタル教科書・教材等、とりわけQRコード等、様々なツールを活用して4技能5領域を育成する学習について提案します。
①聞いて理解する活動に活用する
学校では時間が限られていますので、何度も聞くことが難しいと思いますが、家庭では理解できるまで聞くことができます。動画やアニメーションを視聴しながら、読み上げ速度の調整を行うことで、一人一人に適した速さで繰り返し聞くことができ、コミュニケーションの場面で話されている表現(文)や語彙の理解が容易になります。
②歌やチャンツを活用した練習
自分のペースで、音声を止めたり、同じ箇所を繰り返し聞いたりすることができるので、歌やチャンツについても、家庭では自信を持って発話ができるようになるまで練習することができます。時間が足らずに学校でなかなか練習できなかった、語と語の連結による音の変化や英語特有のリズム、イントネーションなどをネイティブの発音をまねて何度も発音して覚えましょう。また、録音・再生機能で、発話したものを児童自身で確認することもできます。
③聞いて話す、やりとりの活動に活用する
動画やアニメーションのコミュニケーションの会話のところでは、登場人物の一人になりきって、発話してみましょう。歌やチャンツの練習と同様に繰り返して練習することで、自信を持ってやりとりの発話ができるようになると思います。そして、学校で友達とロールプレイを行うことで、最終的に「本当に相手に伝えたいこと」を話すための練習として効果的です。
④聞く活動から読む活動につなげる
動画やアニメーションにある英語の字幕を表示させて、普通より遅い速度で、文字を読み上げられている箇所をハイライトさせながら、読む活動につなげていきます。文を目で追うことができるようになったら、徐々に速度を上げていき、ネイティブの話す音声にシャドーイング※して発話します。さらに、音声を消して、英語の字幕を見て文を読んでみましょう。
⑤予習として活用する
次の単元に入る前に、新しい単元の動画やアニメーションをコミュニケーションの場面及び、そこで話されている内容が漠然と理解できるまで、繰り返し視聴しましょう。また、コミュニケーションの場面ごとに、スクリーンショットボタンで画像として保存して、その場面にどのような表現や語彙が使われているかを想像しながら既習の表現を使って、Small Talkをしてみましょう。
これまでの紙の教科書は「読むこと」「書くこと」「問題を解く」等の学習が主でしたが、学習者用デジタル教科書によって、「音声の確認ができ発話に自信が持てる」「興味・関心が持てる」楽しい学習ができるようになりました。年70時間に限られている学校での授業よりも、家庭では十分な時間をかけて一人一人に適した学びができます。わずかな時間でも毎日英語に触れることが上達の近道だと思います。
※シャドーイング:聞いている英語音声のすぐ後を影のように追って、同じ語を発話する英語学習法。