グローバル化の進展に対応して、日本でも国際社会で通用する英語力が求められています。2020年度の次期学習指導要領の改訂にともない、小学校では3・4年生から外国語活動が週1回(1回=45分)、5・6年生では英語教育が週2回導入される予定です。実施までの2年間は移行措置期間となります。
このコーナーでは小学校英語教育に詳しい高橋美由紀先生(愛知教育大学大学院教授)が、新しく導入される3・4年生の外国語活動と5・6年生の英語教育について、保護者の方々の不安にお答えしていきます。
<Q1> これまでの外国語活動と英語教育の違いは?
これまでの外国語活動では、音声を中心としながら、外国語の基本的な表現に慣れ親しむこと、体験的に外国語・異文化への理解を深めること、に主眼が置かれていました。
一方、新たにスタートする英語教育では「小・中・高の一貫した英語教育」「英語を使って~することができる(CAN-Do)」ことが掲げられています。
外国語活動との主な違いとしては「聞くこと、読むこと、話すこと、書くこと」の4技能の基礎を習得し、知識として、日本語と英語の音声や文字、語彙、表現、文構造、言語の働きの違いを理解すること、そしてさらに、「外国語の語彙や基本的な表現を推測しながら読んだり、語順を意識しながら書いたりして、自分の考えや気持ちなどを伝え合う」といった英語の基本的な知識を運用する能力まで踏み込んだ目標が設定されていることです。
ポイントは中学校の学習内容が小学校に単に前倒しされたという考え方ではない、ということです。実際に新指導要領の具体的目標にも、読むこと、書くことに慣れ親しむことや、コミュニケーションを図ろうとする態度を養うことが掲げられています。これは、小学校の段階に教科としての英語が導入されたことによって、従来の中学校英語ではできなかった「子どもの特性を活かした小学校の英語教育」が念頭に置かれていて、新しい英語教育の可能性を感じさせる、大きなポイントだと思います。
<Q2> 5・6年生の小学校英語教育では、具体的にどのような教育が行われるのでしょうか?
外国語活動の文字指導はアルファベットを学ぶことが中心でしたが、英語教育では音とつづりの関係や語彙・表現等を理解して学ぶことが重要になります。また「読むこと、書くこと」では、実際のコミュニケーションで活用できることが意識されるでしょう。コミュニケーションを行う目的や場面、状況などを作っておいて、そこで使用される「ことば」を英語で学習することからはじめます。
この学習にお勧めなのが「絵本」です。絵本を活用して「コミュニケーションの場面」を推測して、そこでの表現を学ぶことができます。最初は子どもに音声をたっぷり聞かせて、絵を手がかりに内容を把握させます。絵本を見ながらCDの視聴や指導者による読み聞かせ、Story telling等を行ないます。次に、発話がし易い部分を子ども達に発話させて、教師と子ども達が一体となって絵本を読みます(シェアーリーディング)。
子ども達が読めるようになったら、彼らよりも下の学年の子ども達に読んであげる活動を入れることも良いと思います。また、音声で充分学んだ後に、お話しを書き写したり、実際のお話に創作活動を加えて、「オリジナル絵本」を作ることも良いでしょう。子ども達が英語の文字に抵抗を感じない教育が一番だと思います。
「書くこと」では、アルファベット文字で遊ぶ活動を充分に行なった後に、「モデルの英文を見て書き写す」ことから始めます。インターネットを活用して、色々な「英語のことば」を集め、その中からお気に入りのものを選び、そこに書いてある英文を書き写す活動や、お気に入りの歌詞を書き写して歌う活動、年賀状やグリーティングカード、名刺などの「カード」に文章を添えて友人に渡す活動、英文をスローガンとしてポスターを作っても楽しい活動となるでしょう。
実際のコミュニケーションにおいて活用できる技能の育成のための活動としては、「留守番電話」や「スピーチ」を聴いてメモを取る活動や、料理のレシピを書き写す活動、日記や手紙を書く活動、自分のスピーチ原稿の要点を書いておく活動等が効果的です。