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ミライノマナビコラム  ― 今、なぜロボット・プログラミング教育が必要なのか

2020.6.5

第7回 ロボット教育の授業づくりで大切なこと

福田 哲也

福田 哲也

追手門学院ロボット・プログラミング教育推進室 室長
教科は理科。前職の奈良教育大学附属中学校ではじめたロボット・サイエンス教育を、追手門学院大手前中学校で正規の授業として取り入れた。ロボット・サイエンス部の顧問として、多くの世界大会への出場、入賞を果たしている。2度の文部科学大臣賞を受賞。
日本のロボット教育の普及・啓発を目指して、ロボット教育のカリキュラム監修や出張講義などにも取り組む。

ロボット教育も目的が大切

小学校でのプログラミング教育導入にともない、ロボット教材を用いてプログラミングを行うロボット教育実践もふえてきた。

昨年、ある中学校の技術の先生から次のような相談をうけた。「福田先生と同じロボット教材で授業をしたのですが、生徒の反応がもうひとつです。」

授業内容を聞くと、業者の方を講師として、車型ロボットを使ってライントレースをする授業を行ったとのこと。上手く動かすことができない生徒たちの質問の嵐に担当教員もてんやわんや。時間内に終わらない生徒もいて、アンケート結果も散々だったという。

早速、私の授業を見てもらった。授業の進行は、リーダーと呼ばれる生徒が行い、説明も最低限。簡単なプログラミングマニュアルが班に配られ、各班の進捗は、リーダーから教員に。黒板を見れば、各班の進捗状況が一目で分かる。困っていたり、遅れていたりする班には、リーダー生徒が支援する。ミッションは、2畳ほどの広さの宇宙が描かれたコートの上で「地球から出発して、火星の岩石を採取して、宇宙ステーションに運ぶこと。さらに火星人を見つけたらボーナスポイント」。

キーは「問題解決」。「できる」「できない」ではなく、「どうしたらできるようになるか」を考えること。その過程で、思考力を育成することが目的である。意欲的に取り組む生徒の姿は、遊んでいるようにも見えるかもしれないが、生徒たちの脳がフル回転していることは想像できる。

参観した教員は、水を得た魚のように、アイデアを膨らまし、5時間の授業を展開。研究授業では、生徒だけでなく、他校教員からも高評価を得た。さらに指導者が想定した目標をこえるプログラムに挑む生徒も現れて、みんなを驚かせる場面もあったという。

ロボット教育を実践する際、指導者の願い(目的)のもと、授業をつくることがいかに重要なのかということが見てとれる。

まずは教材選びから。ロボット教材も多種多様。

近年、多くの先生方からロボット教材の相談もうけるようになった。いうまでもなく、ロボット教育を展開する際、教材選びは重要である。さまざまなロボット教材があり、特徴も千差万別。目的に応じた教材を選定しなければならない。もちろん、予算との兼ね合いもある。教材選びから、ロボット教育は、はじまっているのである。

今回、2つのロボット教材を紹介する。誤解のないようにしてもらいたいが、これらのロボット教材だけが優れているわけではない。ロボット教材を選定する上で、コンセプトや機能を比較することによって、「いかに授業をつくるか」ということを考える機会にしてほしい。

【ロボット教材例とその機能】

SPIKEプライム
レゴエデュケーション
α-Xplorer
ダイセン電子工業
コンセプト 子どもたちの意欲をかき立てる自由な発想を形にしやすいロボットキット 将来の技術者を育てることも見据えた初心者のためのロボットキット
デザイン
子どもが親しみやすいおしゃれなデザイン。レゴゆえに、ロボットの構造を簡単に改造することができる。

ロボットの中の構造が見えるようにしたデザイン。ICや回路の様子を目にすることができる。
プログラミングツール
(ビジュアルコーディングツール)
Scratch(スクラッチ)ベース言語

(前進2秒右に1秒)のプログラム

「C-Style」オリジナルソフト

(前進2秒右に1秒)のプログラム

ブロックもふくめて日本語で明記。制御コマンドの色分けもわかりやすい。簡単な制御なら、ほとんど教える必要はない。 メニューは日本語であるが、言語ブロックはあえて日本語にしない。 (将来のテキストコーディングを見据えて)
テキストコーディングへの応用 Pythonで制御可能(4月末予定)
※スクラッチベースとPythonの変換機能なし
C言語での制御が可能
※テキストコードを画面上に同時に表示する機能あり(WinPC版限定機能)
教科応用例 ・センサーライトを点滅させる
・力の測定(2N~10Nまで測定)など
・LEDを点滅させる
・センサー追加可能(照度測定等)

2022年からは高校でも「情報I」という教科が設定され、大学入試にも反映されるという。両者とも、はじめてロボットを触る子どもたちのためのロボット教材であるが、テキストコーディングの制御も可能で、高校情報授業での活用もできる。

授業づくりのポイント

ロボット教育に取り組む際、「プログラミング」という活動が目的になってはいけない。児童・生徒にどのような力をつけたいのか、指導者がしっかりした目的を持って行うことが重要である。これはロボット教育に限ったことではないが、授業づくりのポイントを次に記す。

1 目的・目標設定:教師の願い(ねらい)が大切
2 目的に合った教材選び:将来的な発展も視野に入れて
3 意欲・関心を高める課題設定:生徒がワクワクする課題に
4 生徒が主体になる授業展開:双方向の学びの可能性
5 ふりかえり(成果と課題):どのような力がついたか、教師も生徒も考える

最後に、文科省の指針が出たからプログラミング教育やロボット教育をするのではなく、子どもたちの未来のために、そして未来の社会を構築するために推進するのだということを忘れてはいけない。

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