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ミライノマナビコラム  ― 今、なぜロボット・プログラミング教育が必要なのか

2020.12.11

第9回 小学生でもできる機械学習

福田 哲也

福田 哲也

追手門学院ロボット・プログラミング教育推進室 室長
教科は理科。前職の奈良教育大学附属中学校ではじめたロボット・サイエンス教育を、追手門学院大手前中学校で正規の授業として取り入れた。ロボット・サイエンス部の顧問として、多くの世界大会への出場、入賞を果たしている。2度の文部科学大臣賞を受賞。
日本のロボット教育の普及・啓発を目指して、ロボット教育のカリキュラム監修や出張講義などにも取り組む。

よく聞く「AI」を説明できますか?

「AI時代の到来」「AIによって、今ある仕事がなくなる」など、AIという言葉をよく耳にするが、AIについて説明できる人はどれくらいいるだろう。そもそもAIとは人工知能(Artificial Intelligence)のこと。昔はコンピュータそのものを人工知能と表現した。現在ではさまざまな定義があるものの、文字通り人工的につくられた人間のような知能を指し、たくさんのデータの中から特徴量を生成し、自動的に現象をモデル化するシステムを表すようになった。

言うまでもなく、たくさんの情報を記憶することは、人間よりもコンピュータの方が長けているので、AI の方が人よりも勝っている分野もある。藤井聡太王位・棋聖がAIを相手に将棋の練習をしていることは有名 だし、天気予報の精度が上がったのもAIの技術が大きく関係している。とはいえ、まだまだAIの技術は発展途上で、ドラえもんやターミネーターがすぐにできるものではない。しかしながら、AIが人間の知能をこえる時が近く来ると予想され、科学者はそれを「シンギラリティ」と呼び、2045年頃と考えている。 今回、AIについて理解を深めるために、AIをつくる中核技術である機械学習について紹介する。

機械学習とは?

図1のイラストを見てほしい。どちらが犬だろう? どちらも足が4本で、目と鼻と口が同じようなところにあり、その違いを言葉であわらすことは意外に難しい。しかしながら、私たちは絵や写真を見ただけで、それが犬なのか猫なのか判別できる。それは、これまで数多くの実物や写真を見て、学習したからである。逆の言い方をすれば、犬を知らない人が犬を判別することはできない。

図1 犬と猫のイラスト(どちらが犬かな)

同様に、コンピュータが、多くの画像などの情報データから、特徴を抽出し分類・予測する技術が機械学習である。全く同じとは言わないが、人間の脳の働きにコンピュータが近づこうとしていることがわかる。

ここで、機械学習を用いたロボットの例を紹介する。図2は、高校生が製作した進化型海上ゴミ回収ロボット(※2019WROロボコン全国大会最優秀賞受賞)である。

図2 高校生が製作したロボット(機械学習で物体を認識)

このロボットのシステムは、海上を模したボードにある「空き缶」「ペットボトル」「生き物」を判別して、ゴミだけを分別・回収するというものである。その流れを次に示す。

1 海上に浮かんでる物体をセンサーで探す。

2 前方のカメラで写真を撮り、その画像をコンピュータに送る。

3 コンピュータは、たくさんの画像から特徴の近いものを判別し、ロボットに信号を送る。

4 ロボットは、「空き缶」「ペットボトル」は分別・回収し、「生き物」は回収しない。

興味深いことに、コンピュータの判定結果が数値で表される。例えば、「空き缶91%」というように。ロボットができたばかりの頃は、コンピュータには500枚程度の画像データしかなく、数値も低く、間違いも多かった。ところが、何回も回収を行うにつれ、撮影した写真はサーバーに残るので、情報量はどんどんふえていき、判断も正確になっていく。そして、1万枚のデータが蓄積された頃には、全く間違わなくなった。ふつう、ロボットは使えば使うほど、壊れていくものであるが、このロボットは、使えば使うほど賢くなる、 まさに「進化型」なのである。

機械学習のプログラムに挑戦しよう!

先ほど紹介したロボットのシステムは、4つのプログラミング言語で制御されており、簡単にできるものではない。しかしながら、コンピュータ技術に伴い、プログラミング教育の教材も進化し、入門用プログラミング言語のスクラッチで簡単に機械学習ができるようになった。小学生はもちろん中高生にもAIや機械学習の概念を学ぶには最適と考える。その手順を次に紹介する。

1 Scratch3.0にアクセスする。

2 拡張機能でML2Scratchを選択する。コンピュータのカメラが自動的に作動。

3 判別したいものがカメラに写った時、その名前が出るようにプログラムする。

4 判別したいものをカメラに写し、ラベルの学習ボタンを押す。(角度をかえて50回くらいずつ)

5 プログラムを作動。判別したいものをカメラに写すと、名前が表示される。 実際にやってみようという方は、次のサイトが参考になるだろう。

はじめての機械学習 https://youtu.be/58Dw4gQPzcw

次代を担う子どもたちのために

AIの発展が「仕事を奪う」「人間を支配する」などの不安をあおる報道もあるが、そもそもAIをつくるのも人間。AIの発達は、私たちの生活をより便利に豊かにすることは間違いない。しかしながら、AI研究において、アメリカや中国に比べて日本は遅れているという。ソフトバンクの孫正義会長も「この数年で日本は発展途上国になった。結構やばい」と指摘している。それゆえに、今後、一層の技術研究が求められると同時に、次代を担う子どもたちのために教育のあり方が問われているのである。

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