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ミライノマナビコラム  ― 今、なぜロボット・プログラミング教育が必要なのか

2021.3.12

第10回 プログラミング言語に挑戦

福田 哲也

福田 哲也

追手門学院ロボット・プログラミング教育推進室 室長
教科は理科。前職の奈良教育大学附属中学校ではじめたロボット・サイエンス教育を、追手門学院大手前中学校で正規の授業として取り入れた。ロボット・サイエンス部の顧問として、多くの世界大会への出場、入賞を果たしている。2度の文部科学大臣賞を受賞。
日本のロボット教育の普及・啓発を目指して、ロボット教育のカリキュラム監修や出張講義などにも取り組む。

新学習指導要領でプログラミング教育がスタート

「人とIoT(Internet of Things)がつながり、様々な知識や情報が共有され、社会の諸問題を解決し、今までにない新たな価値を生み出す社会」——これが国が示す近未来(Society5.0)である。このような社会の大変革期を迎え、教育のあり方も見直さなければならないことは言うまでもない。そこで、新学習指導要領で、プログラミング教育の必修化が謳われた。2020年に小学校、2021年に中学校、 2022年に高校で、情報活用能力の育成・ICT活用を目的とした教育が本格的に展開される。

2020年 小学校のプログラミング教育必修化
2021年 中学校(技術)でのプログラミング教育の充実
2022年 高校で「情報I」という共通必履修科目の設定
※「情報I」を大学入試共通テストにおいて設定予定

これまで、スクラッチなどのビジュアルコーティングによるプログラミング教育の教育的効果について述べてきたが、より深くコンピュータの世界に飛びこもうと、テキストコーディング(プログラミング言語)に挑戦する学生も増えていることは嬉しいことである。

プログラミング言語を学ぶ

プログラミング言語の習得は、コンピュータサイエンスの世界を広げてくれることは間違いないが、決して容易ではない。それゆえに、次の①~③を意識して挑んでほしい。

① 目的:何のために学ぶのか

プログラミング言語の習得そのものを目的とすると、三日坊主に終わることも多い。何のために学ぶのか、何をしたいのか、目標設定が大切である。プログラミング言語を活用して何をしたいのか、具体的に明確な目標をもつことが、習得の成功に繋がる。

② 方法:どのようにして学ぶのか

初心者が学ぶ過程において、プログラムを打ち込む以外に、ハードルが2つある。

1つは、環境設定。はじめて環境設定する際、海外サイトにアクセスする場合も多く、英語表記で不安を感じる。信頼できる書籍やサイトを参考にしながら、丁寧に1つ1つ手順を踏んで設定することが重要である。

もう1つは、壁にぶつかった時の対処法。文字を打ち込めば、つねにプログラムが動くものではない。エラー表示の見方、インターネットでの検索方法等々の対処方法を身につけなければならない。これらは経験から学ぶところも多く、上級者と初心者の違いは、対処スキルの優劣と言っても過言ではない。壁にぶつかった時に「どうしたらよいのだろう?」と考えるのか、それとも「もう無理だ!」と諦めるのかが、分かれ道になるのだ。

③ 習得:小さな成功の積み重ねが、目標達成(習得)に繋がる。

プログラミング言語の習得に限ったことではないが「できなかったことができる」と、嬉しいものである。プログラミング言語を学ぶことで、コンピュータを使って、いろいろなことができるようになったり、まわりのものの見方が変わったりする。このような小さな成功体験が、成長する自分を実感することに繋がり、継続の鍵である。

何を参考にプログラミング言語を学べばよい?

プログラミング言語を学びたい時、有能な指導者の元で学ぶことができれば問題ないが、全ての人がそういう環境にいるわけではない。手軽に、かつ、お金をかけずに学びたい場合は、YouTubeなどの動画や書籍の利用が有効であろう。私としては、全体像をイメージしながら学ぶことができることから、書籍を中心に学習し、理解を深めたい時に動画を利用するという学習方法をお勧めしたい。

では、どのような書籍を参考にすればよいのだろうか? 2020年、Googleのエンジニアが中高生に向けた10冊の推薦図書を紹介し、多くの学校に寄贈した。推薦図書の詳細については、次のウェブサイトを参考にしてほしい。


https://japan.googleblog.com/2019/12/books-for-students.html

推薦図書の中から「Pythonでつくるゲーム開発入門講座(廣瀬豪著)」を紹介する。プログラミング言語は、目的によって選択すればよいのであるが、注目されている言語の1つが、Pythonである。Pythonは、日々進化し続けているAI(人工知能)やIoTの分野で使われることの多い言語であり、汎用性の高い言語として人気となっている。多くのプログラミング言語の参考書は、文法的なことを中心に記されているものが多い。言語規則も重要ではあるが、「できる」の実感を感じるまでに長時間を要することから、習得の前に飽きてしまうことも少なくない。この本は「ゲーム開発」を目的として、Pythonを学ぶので、楽しく続けて学ぶことができる。小さな成功を感じながら学べる参考書として、最適である。


Pythonでつくるゲーム開発入門講座(廣瀬豪著 ソーテック社)

この本を参考にして、簡単なプログラムをつくってみた。詳細は、次の動画を。

はじめてのプログラミング言語 (Python)
Produce by Tetsuya FUKUDA, Robotics Educator

自分にあった道を見つけよう

今回は、プログラミング言語を学ぼうと考える小中高生に向けて、参考書籍や習得方法について記した。しかしながら、決して道は1つではない。自分にあった道を見つけるのも、面白さの1つ。自らの手でプログラムをつくって、コンピュータの可能性を大いに感じてほしい。見える世界も変わるはずである。

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