共通テストに「情報」が新設
近年、急速にデジタル化が進み、これまでとは異なる特性をもった人材が求められている。その必要性から、2020年に小学校のプログラミング教育の導入がはじまり、2021年に中学技術科のプログラミング教育の充実、さらに2022年には高校情報科の「情報I」が教科設定される。そして、「大学入学共通テスト」を実施する大学入試センターは、2025年、新たに「情報」を加えると発表した。つまり、現在、中学3年生が将来受験する「大学入学共通テスト」には「国語」「数学」などと並び「情報」のテストが新設される。また、コンピュータなどを活用する試験方法(CBT)ついては、受験環境やトラブルなどの懸念から、2025年からの導入は見送られたものの、今後CBT形態の試験方法も実施されることは遠くない。
「情報」のテスト内容は?
今回は、2025年より実施される大学入学共通テストの「情報」について考えたい。2021年3月、 文部科学省は「情報」のサンプル問題を公表した。単に情報の知識やプログラミングスキルを問うのではなく、思考力や判断力を問う問題といえる。また、公表されたサンプル問題は、情報技術のしくみやその有効性も問う内容であった。各問題の概要を記す。
(第1問) (第2問) (第3問) (大学入試センター「情報」サンプル問題解説より) |
実際のサンプル問題の全容を知るには、次のウェブページにアクセスしてほしい。
大学入学共通テスト「情報」サンプル問題
紙幅の関係から、プログラミングに関わる問いの一部を紹介する。下図は、第2問の中で出題されたオリジナルのコードを示している。このようにプログラムを読んだり、書いたりする力を問うている。 見ればわかると思うが、「繰り返す」「もし」という言葉を目にすることができる。プログラム作成の基本である「順次」「繰り返し」「分岐」を意識したものであるといえよう。また、オリジナルのコードとはいえ、Pythonが比較的近いのではないかと考える。このようにアルゴリズムをプログラムで表現する力が求められている。
電気通信大学の中山泰一教授は、公表されたサンプル問題について次のように分析した。
「今後、展開されるであろう情報Iの各領域からバランスよく出題されている。第1問は情報社会の問題解決や情報デザイン、それから情報通信ネットワークを、第2問はプログラミングを、第3問はデータ活用を問う内容になっている。すべての領域をきっちりと勉強してきてほしいというメッセージが込められてると思う。また、ごく標準的な問題であり、きちっと自分でプログラミングを書いたり、多くのデータを統計処理ソフトウェアで処理したりして仕組みを理解していることが必要であると考える。自分で論理的に考えて、問題に取り組む能力が問われている。」
「情報」を教える側の課題も
「情報」の重要性が注目されたとはいえ、指導する高等学校の課題は山積している。
情報科では、数学や保健体育など他教科の免許を持つ教員が教える高校も少なくない。「情報 I」は高校の3年間で2単位しかなく、小規模校では、情報免許のある教員を配置できない現実があるのだ。次のグラフからもわかるように、教科の免許を持たない教員が教える「免許外教科担任」を自治体が許可した件数は、情報科が突出しており、全体の3分の1を占める。
これからの社会を考えたとき、情報教育の重要性は益々高まるにも関わらず、指導体制そのものが追いついていない状況であり、早急な改善が求められている。また、小学校や中学校でのプログラミング教育の取り組みも地域差が大きく、高校前教育の差をどう埋めるのかも課題になっている。
「情報」が学校選択のキーワードに
もちろん、大学受験の科目になったから、プログラミングの力が重要になるものではなく、これからの社会に求められている学力であるからこそ、大学受験の教科設定になったことを忘れてはならない。そして、教育体制の課題も指摘をしたが、逆の見方をすれば、情報の指導ができる学校が選ばれる時代が近づいているのかもしれない。