MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

ミライノマナビコラム  ― 今、なぜロボット・プログラミング教育が必要なのか

2023.3.3

第18回 世界におけるSTEAM教育——世界に挑んだ小中生——

福田 哲也

福田 哲也

追手門学院ロボット・プログラミング教育推進室 室長
教科は理科。前職の奈良教育大学附属中学校ではじめたロボット・サイエンス教育を、追手門学院大手前中学校で正規の授業として取り入れた。ロボット・サイエンス部の顧問として、多くの世界大会への出場、入賞を果たしている。2度の文部科学大臣賞を受賞。
日本のロボット教育の普及・啓発を目指して、ロボット教育のカリキュラム監修や出張講義などにも取り組む。

AI(人工知能)やロボットなどITの技術が大きく発展し、STEAM教育が注目されている。STEAM教育は、課題解決を目的とする科学やテクノロジー、数学など教科横断的な学びである。認知度も高まり、未来社会を構築するための創造性や革新性を育む教育として、その重要性も増している第16回から、日本のSTEAM教育の事例を紹介してきたが、STEAM教育のルーツであるSTEM教育は、米国で2010年頃から叫ばれ、今や世界中で展開されている。今回は、世界に挑む日本の子どもたちと世界の状況をお伝えする。

10万人以上が参加するWorld Robot Olympiad(WRO)

World Robot Olympiad

 STEAM教育の成果を発表する機会の1つにWorld Robot Olympiad(WRO)がある。WROは10万人以上の小中高生が参加する世界最大級のロボコンである。そのFuture Innovators部門では、様々な社会課題の解決を目指して、開発したロボットを実装しながら発表する。2022年11月、WRO世界大会がドイツで開催された。世界大会には73の国・地域から、365の代表チームが集まり、STEAM教育の広がりと重要性を痛感する機会となった。

WRO2022公式イベントビデオ

世界に挑んだ小中生へのインタビュー

 WRO2022の日本代表チームに選抜された2つのチームを紹介する。

(1)【小学生】ゴミ分別ロボット「MoG」:YT LAB.チーム(芝原くん、角田くん)

Q1 どのようなロボットをつくりましたか?

「全自動ゴミ出しサポートロボットMoGを作りました。センサーによって、ゴミの形、硬さ、透明度を計測し、自動で分別します。また、指定した時間にゴミ袋を自動で縛り、ゴミ出しを促す通知を行います。使う地域に合わせて言語選択ができ、今回は日本語とドイツ語で設定しました。」(芝原)

Q2 このロボットをつくろうとしたきっかけは?

「日頃から自分も含め家族が分別に迷うことや、ゴミ出しの曜日を忘れることがきっかけです。忙しい朝の負担を軽減、正しく分別することによって、燃やせるゴミを減らしリサイクルを促進し、地球環境を守ることにも繋がると考えました。」(芝原)

Q3 苦労した点を教えてください

「世界大会に向けて、ドイツでも対応できるロボットに改良したことです。地域や国が異なるとゴミを廃棄するタイミングや分別する種類の変更、表示や読み上げにも言語の変更が必要です。その改良は大変で、多くの時間をかけました。たくさんの国で使ってもらえたらと思います。」(角田)

Q4 世界大会に出場して学んだことは?

「世代や年齢を問わず様々な国の人たちとコミュニケーションをとることができました。特に同世代との国際交流は、自分では思いつかないようなアイデアに触れることができ、とても刺激的でした。同時に自分の英語力の乏しさも感じました。プログラミング技術だけでなく英語力も磨いて、再び世界大会に挑戦したいと考えています。僕の目標は世界1位をとることです!」(角田)

<チーム情報>
コズミックITスクール

(2)【中学生】お薬管理ロボット「Pal」:Otemon Questチーム(古本さん、水谷さん)

Q1 どのようなロボットをつくりましたか?

「Palには大きく二つのシステムがあります。1つ目は『画像認識による薬管理システム』です。画像認識によって薬の種類を判別し、必要な数と種類の薬を患者に提供します。2つ目は『患者を勇気づけるAIことばシステム』です。常にロボットの顔が患者のほうに向き、心の状態を天気で表現して患者の心の健康状態を確認、家族や医療従事者に送信します。単に薬を提供するだけでなく、 心に寄り添うことができます。」(水谷)

Q2 このロボットをつくろうとしたきっかけは?

「祖母がリウマチによる手指の変形で服薬に苦労する姿を見て、同じように困っている人がたくさんいるのではないかと考えました。」(古本)

Q3 苦労した点を教えてください

「製作に約9か月かかりました。特に苦労した点は、薬をシートから取り出すことです。初めはドリルのように薬を取り出そうとしたのですが、力が足りず、うまくできませんでした。そこで、テコを用いた機構に改良し、小さなパワーのモーターでも正確に取り出すことに成功しました。」(水谷)

Q4 世界大会に出場して学んだことは?

「世界大会では、発表も質疑応答もすべて英語。不安もたくさんありましたが、自分の英語力に自信が持てました。また、他のチームとも、国やロボットについて話したり、お土産の交換したりし、世界を感じることができました。自分の好きなことに没頭する中で、自分が何をしたいのか、どんなふうに生きていきたいのか、考える機会になりました。」(古本)

<チーム情報>
追手門学院大手前中学校 ロボットサイエンス部

ロボットを通して世界を感じる

 各国のチームはお互いにライバルであるにもかかわらず、交流を深める場面も多々。英語が母国語でない子どもたちもたくさんいるが、互いのロボットを讃え合いながら、アイデアや開発過程を共有していたことが印象的であった。まさに最先端のSTEAM教育を肌で感じた。

Otemon Questチームが金メダル受賞

 表彰式ではOtemon Questチームが金メダルに。日本チームとしては、8年ぶりの快挙を成し遂げた。また、小学生チームも上位にラインクインするなど、日本チームの躍進を感じることができた。2020年に小学校でプログラミング教育が導入されるなど、日本でもコンピュータサイエンス教育が本格的に始動し、学校外でもプログラミング教室などが多様な教育展開をしている。コロナ禍で日本のITの遅れが露呈し大きな問題になっているだけに、STEAM教育の拡充によって、世界を牽引する人材の育成を期待してやまない。

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