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ミライノマナビコラム  ― 大局観で教育を考える

2019.3.8

国際バカロレア教育とこれからの教育 第4回

後藤 健夫

後藤 健夫

教育ジャーナリスト。
大学コンサルタントとして、有名大学などのAO入試の開発、 入試分析・設計、情報センター設立等に関与。早稲田大学法科大学院設立に参画。元・東京工科大学広報課長・入試課長。『セオリー・オブ・ナレッジ―世界が認めた「知の理論」』(ピアソンジャパン)を企画・構成・編集。

「国際バカロレア教育」は英語教育でも国際理解教育でもありません。それではいったいどのような教育プログラムなのでしょうか。教育ジャーナリストの後藤健夫氏に国際バカロレア教育を通して日本のこれからの教育を考えてもらうこの連載、今回は国際バカロレア教育の柱の一つ「探究学習」について解説してもらいました。

 

国際バカロレアは「探究学習」

国際バカロレアの理念では「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する、探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」を掲げている。前回は平和な世界の構築について触れた。

今回は「探究心」について考えてみたい。国際バカロレアはまさに「探究学習」なのだ。

広島県にある英数学館中・高は、かつてしっかりと大学受験対策をすることで評判を得て、有名大学への進学実績も充分にあった。

その英数学館が、いま探究学習を重視する国際バカロレア(ディプロマ・プログラム)を導入している。

「大学受験対策」から、高大接続を意識した、高度な「大学入学準備教育」へと転換したのだ。それはどのような変化だったのか。そこを考えてみたい。

 

「問い」を大切にする

教育再生実行会議が当初課題としていた「中下位層の学習意欲の減退」を解決するには、学びにつながる「生きがい」や「やりがい」が重要だ。「生きがい」や「やりがい」が生徒児童をどんどんのめり込んで学んでいけるようにし、楽しく学ぶようにする。

この、のめり込んで次から次へと知りたくなり学んでいくことこそが探究的になることだ。わからないことについて、持っている知識を総動員して「問い」を立てて調べたり考えたりして新たな知識を獲得したり再構成したりして解決していくのだ。これが「探究学習」だ。

では、英数学館の様子はどうだろうか。

英数学館では、英語のみならず一部を日本語により国際バカロレアの授業をする「デュアル・ランゲージ・プログラム」が展開されている。

生徒総会では国際バカロレアコースの生徒が「問い」を大切にする探究的思考による意見、発言をして普通クラスの生徒にインパクトを与えている。成果物は必ず廊下などに展示しており、体育など必修科目、学校行事などは国際バカロレア以外の普通のクラスと合同で行われるので、少なからず、学校全体が国際バカロレアの影響を受けて、「問い」が大切だという学習観の共有、そこから新しい知識や概念を獲得しようとする環境が生まれてくる。さらにこうしたところから国際バカロレアのコースの生徒のみならず普通クラスの生徒たちも「生きがい」や「やりがい」を見つける方法がわかってくるだろう。

また、普通クラスの授業でも、国際バカロレアの授業担当者が「やりがい」につながり彼らの興味関心を引き出すような「探究のタネ」を生徒たちに投げ続けており、確実に影響を与えている。

 

「大学受験対策」から「大学入学準備教育」へ

これまでの授業では、生徒に大量の知識を獲得させて素早く処理できる力を求めてきた。そのためには過去問をたくさん解いて訓練することが有用であった。しかし、これからは、生徒に「探究のタネ」をキャッチさせて主体的に学べるようにしたり、解決が難しい正解が一つに限らない課題に取り組ませたり、学んだことを「生きがい」や「やりがい」に発展させたりするような「探究学習」が求められるだろう。

「探究学習」は大学で高度に学ぶための大切な下地となる。こうした下地を作ることが「高大接続」であり「大学入学準備教育」なのだ。つまり、これまでのような知識を詰め込んだり過去問をたくさん解いて情報処理速度を高めるような「大学受験対策」から「探究学習」を重んじる「大学入学準備教育」への転換が必要となる。これが英数学館で見られた国際バカロレア教育への転換なのである。

 

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