例年に比べて多かった大学の記者会見
3月から5月にかけて、例年に比べて大学の記者会見が多かった感じがする。25、26年度入試は少子化の影響を受けないが、27年度以降はじわじわと少子化の影響を受け始める。そのための準備、対策なのだろう。特に、これからのAIの進化などデジタルを活用した社会の到来を予見した産業構造の転換を考慮した、数理情報系に関する新学部の開設や新しい施設に関するものが多い。
東京理科大では「データ」を核にした学部・学科の新設の構想が発表された。野田キャンパスに「創域情報学部」を新設する。33年ぶりの新学部だ。学問分野の垣根を超えた融合教育・連携研究を推進し、情報科学技術を基盤として、まったく新しい領域を切り拓くことができる「専門人材」と、あらゆる分野に新たな価値を生み出す「融合人材」を養成する。神楽坂キャンパスの理学部第一部には「科学コミュニケーション学科」を新設。いずれも2026年4月開設を目指す。
昭和女子大では、国際学部の英語コミュニケーション学科を再編して「国際教養学科」「国際日本学科」の2学科を設置。加えて26年4月には、データをマネジメントする人材を含めたデータサイエンス系人材を養成する学部の新設構想が発表された。
立命館大では、情報理工学部、映像学部の大阪いばらきキャンパスへのキャンパス移転にともない建てられた新棟(H棟)のお披露目があった。両学部とも、大阪いばらきキャンパスのコンセプトにある、社会連携のフロントライン、交流拠点としての機能を整備して取り入れたものになった。新棟には、産学連携を意識した施設が多く設置されおり、特にマイクロソフト社を誘致した「マイクロソフト・ベース」が目を引く。学内のみならず地域社会のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を促進する期待が込められている。
教育の未来に向けた動き
こうした理系シフトの流れを見ると、政府の「教育未来創造会議」が第一次提言で示した「理系人材5割」に対する大学側からの回答が出始めているように思える。
同じような動きは、データサイエンス系の学部設置だけではない。近畿大の24年度入試では全募集形態を合わせると情報学部が医学部に次ぐ高倍率となった。情報学部は、ソニー・コンピュータエンタテインメントで代表を務めた久夛良木健さんが学部長に就任して話題を集めたが、その初年度を越えた募集結果になった。近畿大学での情報系の人気の高まりからも、受験生の大学選びが、これからのデジタル社会への移行を意識したものに変わりつつあることがわかる。
少人数化の課題解決へ
さて、こうした流れと相まって、学部を問わず、授業中に、グループに分かれて、パソコンを使って、調査、分析をしたり、発表資料を作ったり、ディスカッションをしたりする授業が普通に行われるようになった。
こうした授業は、高校でも当然のように行われるようになりつつあるが、課題はグループワークの管理がしにくいことにある。
先述した立命館大・大阪いばらきキャンパスの「H棟」には、情報機器を活用した作業や発表を想定した中規模の教室がある。6人グループで1テーブルとして教室にPCの画面を映し出すモニターやマイクが備わったものだ。
国際バカロレアの授業は20人以下で行われるものが多いので、こうした問題は起こらないが、日本の教育は戦後復興以来、何かと効率を優先させたため、クラスのサイズが大きかった。現在、小学校では35人学級への移行が進められている。この流れは中学、高校と及ぶだろうか。欧米に比べると、まだまだクラスのサイズが大きい。日本は少子化が進行しているが、一方で、それを見越して教員のなり手不足が続いている。
少子化に悲嘆するばかりではなく、これをチャンスに変えて、教員数の維持に努め少人数教育を実現してもらいたい。