「チーム初富」の力を結集
私が校長に就任した2018年は、本校と学校法人立命館との教学連携10年の節目でした。学園はこの年をエポックメーキングの年と位置づけて学校改革に着手。校長としてのミッションは「大阪府下を代表する進学校の復活」と「新たな教育を創造する学校づくり」です。
現状課題を整理したところ、本校には「定着度ではなく、量の消化度合いで先に進む傾向があり、生徒は量を処理することに追われ、定着度が低くなり、大学合格という進路保障に大きな影響が出ている」ことが浮き彫りになりました。同時に、全教職員が “チーム学校” を意識し、生徒一人ひとりが確かな “伸び” を実感できる確かな授業を提供できるカリキュラム・マネジメントの必要性も確認しました。そこで、コース・コンセプトの具現化、校務の効率化、インフラ整備、スタッフの意識変革に向けて、全体と個人目標の整合を図り、モチベーションとスキルを高めることからスタートしました。授業改革の最大の目的は量から質への転換。“学び方の選択”を導入し、よりきめ細かく指導するシステムにスクラップ&ビルドしています。
日本の社会課題は複雑化し、一つの専門分野だけでは解決策を見いだせません。本校の学校教育改革では、新学習指導要領の骨子である、これまでの試験では測れない、正解のないテーマに対し、“納得解”を導くための教科横断的、探求的アプローチを通じて体系的知識につなげ、その上で、内容を掘り下げ、学び続ける学習者自律(Learner Autonomy)の涵養をめざします。“チームはつとん”で、生徒一人ひとりのポテンシャルを最大限に伸ばし、個々の興味・関心に応じて“本当に行きたい大学”に挑戦し、合格できる力を身につけるカリキュラム・マネジメントを実践、「進路満足度100%」夢の実現にアプローチしていきます。
AIを活用した新しい学び
2019年度から平常の授業時間を6限(土曜は4限)とし、基礎・基本を徹底、7〜8限は校内予備校(オプション)や「超進学校化プロジェクト」のオリジナル講座を開講し、“学びの選択”を可能にしました。外部講師の活用も進め、本校教員には、「大学入学共通テスト」に対応する基礎・基本を徹底してもらい、生徒には「個別最適学習(アダプティブ・ラーニング)」のツールを用意しました。
2020年に向けた取り組みもすでに始まっています。例えば、数学では、授業内外でタブレットPCを用いてAIが練習問題を自動採点・誤答分析し、到達度に合わせてセレクトされた問題にチャレンジすることで、教科担当者がきめ細かく個別指導できるティーチング・メソッドを開発。到達度に合わせた演習量を増加させ、基礎学力及び学習意欲の向上がねらいです。すでに中1・2でスタート、4月から中高全学年(高3は数学選択者のみ)で導入します。その上で、生徒一人ひとりの進捗状況を学習管理システム(LMS)によって把握し、PDCAサイクルを回すカリキュラム・マネジメントを展開していきます。
”超”進学校化宣言
日本の大学入試を振り返ると、”1つの正解“を求める1点刻みの入試を突破し、序列化された学校へ進学することが主流でした。しかし、科学技術の革新やグローバル化の進展によって、社会が求める人物像は変容しています。大学入試の設問傾向も知識だけに偏らず、自ら問いを立て、学び続けることが思考力・表現力につながり、やがて人生の岐路に立ったとき、世界を新しい目線で見て解決に向けて行動する判断力につながるという方向性が読み取れます。
正解のないテーマに対し、“納得解”を導くための教科横断的アプローチはなかなか難しいものですが、複雑化する地球的レベルの問題に果敢にチャレンジできる背景知識、論理的思考力、課題発見・解決能力が求められている以上、それに対応する教育を展開していく所存です。中高時代は、自分は何のために生きるのか、という問いに正面から向き合い、将来の夢・志を育むことができる絶好の機会。大学合格は、最終目標ではなく、通過点にすぎません。将来の夢や志を探究することこそが、通過点である第一志望合格への努力の原動力になるのです。
科学技術の進展によって、多くの仕事がAIに代替される時代はすぐそこですが、次代を担う若者には、機械を超え、使いこなせるコンピテンシーを身につけて、人間にしかできない、今までにないものを創造してほしいと思います。我々、教職にある者は、“生徒の人生を預かっている”という気持ちで日々の教育活動にあたらなければならないと思っています。本校の目標は「進路満足度100%」であり、これを「“超”進学校化宣言」と呼んでいます。
グローバル時代の英語教育
コミュニケーション・ツールとしての英語教育と異文化理解としてのグローバル教育を通じて、いかに時代の潮流に乗れる生徒を育成していくかということです。「明るく楽しい進学校」を掲げて、中学の英語教育では楽しく学ぶことを基調とし、「英語が使えるようになりたい!」と生徒が感じられる体験型学習を豊富に盛り込んだ独自の「21世紀型進学校化メソッド」を展開します。卒業段階では「S特進探究」コースはCEFR対照表でA2レベル以上、「特進探究」コースはA1レベル以上が中間到達目標。
高校では4技能5領域のバランスのとれた「使える英語」にブラッシュ・アップし、英語コミュニケーション力を育成するのと同時に、大学入学共通テストや国公立二次に合格できる学力を養成します。 到達目標は、高校卒業段階で「S特進探究」コース:B1レベル以上、「特進探究」コース:A2レベル以上です。その他、2019年度からスタートした「English Room」「ディベート講座」に加えて、中3でのロサンゼルス語学研修。高1でのオックスフォード大学やケンブリッジ大学への短期留学、立命館アジア太平洋大学への「国内留学プログラム」や「グローバル・リーダーズ・プログラム」なども用意しています。
真の実力を養うオーダーメイドの学び
本校がめざす「未来のマナビ」のコンセプトは、教科の背景知識を強化する従来の指導に加えて、課題発見・解決への探究・プロジェクト型学習(PBL)を融合し、多様な学び方の選択肢を実現すること。同時に、生徒個々の興味・関心、あるいは認知特性を踏まえて、学習ログをデータベース化し、PDCAサイクル定着に主眼を置いた自律学習基盤を構築することです。
AIの進展、グローバル化における協働に向けて、主体性や判断力、表現力を伸ばすことが求められています。学ぶ内容だけでなく、「何ができるようになるか」「どのように学ぶか」が焦点化され、“能動的な学び”が謳われています。アダプティブ・ラーニングは、学習者に最適な学習内容で、より効率的、効果的な学習を実現しますが、教員の経験による感覚的なものだけでなく、生徒の学習状況を蓄積し、AIなどのICT技術によって到達度に応じたオーダーメイドの学習内容を提供してくれるものです。
これからはイノベーションが求められる時代。だからこそ、本質を見極め、既成概念にとらわれない着眼点とそれを実現する真の実力を養えるシステムづくりに邁進していこうと思います。
私の未来年表 平井正朗
未来への抱負 | 教育・社会の変革 | 現小6 | |
2018 | カリキュラム・マネジメントによる学校改革スタート | 少子高齢化の加速 | |
2019 | 「超進学校化プロジェクト」開始 「はつとんゼミ」開講 「グローバル教育・英語教育」リニューアル |
働き方改革 | |
2020 | 「S特進探究コース」「特進探究コース」スタート EdTechによるアダプティブ・ラーニングスタート 産官学の連携 |
東京オリンピック 新学習指導要領、大学入試改革 |
中1 |
2021 | 「グローバル特進探究コース」スタート | 中2 | |
2024 | 創立40周年 | 高2 | |
2025 | 大阪万博 | 高3 | |
2026 | 「S特進探究コース」「特進探究コース」J1期生卒業 | 大1 | |
2027 | 「グローバル特進探究コース」J1期生卒業 | 大2 | |
2028 | 改革10年、大阪府下を代表する「明るく楽しい進学校」 | 大3 | |
2030 | SDGs完成年度 | 23歳 | |
2034 | 創立50周年 | 27歳 | |
2030年代半ば | 卒業生からノーベル賞受賞者 | ||
2038 | 第二次改革「グローバル規模」での学校づくり エンロールメント・マネジメントの実践 |
超スマート社会の到来 | 31歳 |
2044 | 創立60周年 | 37歳 | |
2045 | シンギュラリティ 平均寿命100歳 |
38歳 |