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大改革時代に向けて

2020.9.25

AI時代、人生を深く考え社会を広く見据える人に
上宮学園中学校・上宮高等学校 校長 山縣 真平 先生

山縣 真平 先生
上宮学園中学校・上宮高等学校 校長
同校教頭を経て2016年より現職。就任以来、新校舎の建築、ICT化への対応、そして今年の新型コロナ対応など重責を担う。新校舎の設計では開放感や明るさ、空間のゆとりなどにこだわり、新しい上宮のイメージづくりを先導した。

上宮学園中学校・上宮高等学校
https://www.uenomiya.ed.jp/
大阪市天王寺区上之宮町9番36号 TEL 06-6771-5701 (代表)

 

来るべきAIの時代に人間の存在意義が問われる

 近年、大きな関心を集めているAIは、今後どんどん賢くなり、社会のあり方を変えていくでしょう。仕事を奪われるなどの警鐘も聞かれますが、私は、近代化が生み出した人間性を破壊するような労働から、私たちを救ってくれるものだと捉えています。

 ただ、そのような社会が実現すると「人間は何に意義を感じて生きていくのか?」ということが重大な問題になります。今は多くの人が、自らの仕事に人生の意義を見出しています。ところが、AIが多くの仕事をこなすようになればなるほど「人生の意義は仕事」とは言えなくなっていくでしょう。

 そこで「一人ひとりが存在していることで、それぞれの人生にどのような価値を持つのか」という問いを、中学・高校の多感な時期に、人間的に成長していく中で考えられる環境が大切になるのです。

 

先の見えない時代に重要な考え方の土台

 従来であれば、大学で必要な知識を学べば、その知識で一生涯価値のある仕事ができました。しかし、もはやそのような時代ではなくなりつつあります。大学を卒業してからも、進路を切り替えて学び直す必要が増えていくでしょう。

 これからの時代には、目先ばかりを見ていると進む道を誤ります。少し後ろに下がって、社会全体を眺めて、その中に自分を置いて判断する力が欠かせません。目先の偏差値や企業の名前ばかり見るのではなく「自分は何のために生きているのか」を常に意識して、進路や職業を考えられる人にならなければいけない。

 本校が教育の根幹としている浄土宗は、先の見えない時代に通用する人間観を教えてくれます。以前は主に情操教育の題材でしたが、新しい時代には、生き方や考え方の土台として生徒の将来に役立つものになるはずです。

 

宗教の時間もアクティブに

 6年間かけて、生徒にたくさん考える機会を持ってもらうために、教科から離れて「自分とは?」「人生の意義とは?」などを考える時間をとっています。その一環として、宗教の時間にもアクティブラーニングの手法を取り入れています。

 中学生では、仏教の説話「ジャータカ」を読み、感じたことや考えたことをグループで話し合って、発表します。わかりやすく書かれた説話ながら、お釈迦様が前世ウサギだった時に、人に施す食べ物がなくて自ら身を焼こうとした物語など、人の生き方を深く考えることができる優れた題材です。

 高校生になると、より高度になり、現実の社会問題をテーマに考えます。ある社会問題を仏教的な見方をするとどうなるのか、新聞、ニュースとは異なる切り口で考えることで、物事の見方が大きく広がります。

 

ハード・ソフト両面から新しい学びに取り組む

 現在は新型コロナ対策のため、額を寄せてディスカッションという授業ができませんが、教科の学びについてもアクティブラーニングは積極的に取り入れています。7年ほど前から株式会社アクティブラーニングと協力して、教員のトレーニングに力を入れてきました。昨年竣工した新校舎は全教室に全面ホワイトボードとプロジェクターが整備され、ハード、ソフト両面で新しい学びに対応しています。

新しい学びに対応した新校舎

 

 英語の4技能化にも早くから取り組んできました。中学校では、週3回、クラスを二つに分けて、少人数でネイティブ教員の授業を行います。アクティビティなども取り入れ、楽しみながら生きた英語に触れています。また、オンライン英会話も導入して4年目になりました。フィリピン・セブ島の講師とオンラインで一対一の英会話のトレーニングを受講できます。放課後に希望者が受講していて、自宅でも受講できるシステムとしています。

 中学校の海外研修でのシンガポールのホームステイをはじめ、ニューヨークやベルリンでのB&S(ブラザー&シスターシステム、現地の大学生が生徒グループのリーダーとして指導補助する)やオーストラリアの広大な自然の中でのファームステイなど、広い世界を体験する機会も増やしてきました。今年は海外が難しいので、グローバル教育の学びの要素がある国内の代替地を模索しています。

中学校での海外研修(シンガポール・マレーシア)

 

家庭では集中力と読書を

 小学生・中学生ぐらいの年齢では、自分で計画を立てて勉強を進めるというのは難しいかもしれません。特に中学受験生では、学校や塾が進捗をサポートしてあげる必要があると思います。

 ご家庭にお願いしたいのは、長時間続けて物事に取り組むことができる集中力です。勉強を長時間させる必要はありません。普段の遊びや趣味を通してで良いので、本人が面白いことを見つけた時に、集中して取り組める環境を整えてあげてください。

 また、今の子どもたちの傾向として読書量が少なくないことも気になります。本校では、高校の入試問題に、あえて文字数の多い問題文を出題しています。これは、中学時代の読書量が高校以降の学力に大きな影響を与えるからです。ご家庭でも、お子さんが嫌がらなければ、大人が読むような難しい本にもどんどん触れさせてください。必ず将来の大きな力になるでしょう。

 

私の未来年表 山縣 真平
未来への抱負 教育・社会の変革 現小6
2021 東京オリンピック・パラリンピック
NASAの火星探査機が火星着陸
中1
2025 大阪・関西万博開催
日本の合計特殊出生率1.14まで低下、下げ止まる。
高2
2030 銀行から人がいなくなる。
地球周回軌道の宇宙観光旅行が実現。
大4
2035 上宮にクリエイティビティを学ぶ学科が新設される。 現在ある職業の67%がロボットかAIに代わる。
学校教育がより発想力・創造力を育てる内容に変化する。
27歳
2037 リニア中央新幹線 大阪延伸 29歳
2040 授業の半分が英語で行われる。 量子コンピューターが実用化される。
自動車の75%が自動運転車になる。
32歳
2045 AIが人の代わりに知的労働をするようになる。
AIが知育面を個人指導、教師が人間教育としての集団教育と役割が分かれる。
37歳
2050 山村や漁村に研修センターを開設し、精神力を鍛える。 日本の総人口が1億人を割り込む。 42歳

 

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