これからの教育に必要な「既存の枠にとらわれない」教育
これまでは、知識と技能を身につけた立派な社会人を育てるという教育がとてもうまく機能していました。しかし、これからのコンピューターとインターネットの時代には、従来の知識・技能に加え、新しい時代に応じた力が求められるようになります。
それは、誰も考えたことのないものを新しく作り出す力です。誰も見たことがないもの、誰も考えつかなかったものを作り出せる「既存の枠にとらわれない思考」を育てることが必要だと感じています。
そのため、自分で考えて答えを出すという学びを中高で経験することが欠かせません。本校では、将来の夢をかなえるためにPM(プロジェクトマネジメント)、TM(タイムマネジメント)の授業があります。これは学園長 西和彦が考案したもので、やりたいことを実現するために日々の取り組みを自分で考え、中身を濃くするものです。
また、ICTツールを使いこなすスキルやリテラシーも、単にツールの使い方を教えるのではなく、「こういうふうに使えば、こんなことができる」と、考えるきっかけにしたいと思います。
重要なのは、生徒の「得意」や「好き」を大切にし、自由に考える環境を整えることです。「面白いこと、好きなことにどんどん挑戦していきましょう」と生徒の背中を押せる学校でありたいと思います。
少人数で個性を見出す
夙川では、須磨学園とほぼ同様の教育内容を導入しています。違う点は、須磨学園が1クラス42名前後なのに対し、夙川の1期生は1クラス28名程度。夙川の方が少人数なので一人ひとりの個性を見極め、きめ細かく声をかけてやり取りができます。そのため、生徒たちの学びに向かうモチベーションも高く、入学してからの伸びが大きいと実感しています。生徒たちも口をそろえて「学校が楽しい」といいます。
また、自分たちで学校を創っていくんだというフロンティア精神にあふれる生徒たちは、様々な行事で自主的に企画立案したり運営したりするようになっています。「自分はこんなこともできるんだ」という気づきは、それまで苦手だった教科にも波及して、「やってみよう」という思いが生まれているようです。これはわずか1年の成果ですから、今後5年間で、どこまで伸びるのか、とても楽しみです。
世界を巡りリーダーとしての使命感や教養に触れる
須磨学園で実施している海外交流のプログラムを夙川でも実施しています。中2、中3、高1の3年間かけて、アジア、アメリカ、ヨーロッパを訪れ、行く先々の国々で学校との交流を行います。
各国との学校交流では、日本のこと、神戸のこと、学校のことをプレゼンテーションします。3か月ほど前から何百回と練習し、本番では緊張しながらもやり遂げます。個別交流では、生徒1人に対して、現地の生徒2、3人がついて交流します。ベトナムのトップ校の生徒たちは意識が高く、たとえば「医者になりたい」という本校の生徒に対し、「日本の医療における課題は何か」「どのような医者になりたいのか」といった質問を投げかけてきます。ところがまだ中2の生徒ですから、そこまで考えが及んでおらず、それを伝える英語力もありません。そうやって達成感やくやしさを味わう中で、「もっと頑張ろう」というモチベーションが芽生え、英語はもちろん他の教科や物事にも積極的に取り組むようになっていきます。
アメリカでは、最先端の企業、研究所や大学などを見学します。世界一といわれるボーイング社の飛行機工場やNASA、大学も敷地が広大であるだけでなく、学生はものすごく勉強しています。テレビや写真でしか見たことがないような世界に、生徒が自ら足を運ぶことで、雄大なスケールを感じてもらいます。
最後のヨーロッパでは、歴史・文化、芸術に触れます。たとえば、ウィーンでクラシック音楽を鑑賞し、フランスではルーブル美術館、オルセー美術館、イギリスの大英博物館、ドイツでは強制収容所を訪れます。この頃になると生徒は海外交流に慣れて、物怖じしません。自ら積極的に現地の生徒と交流を深めるようになるのです。この経験は、将来必ず役に立つでしょう。
海外研修で経験を積み重ねることで、語学力だけではなく、コミュニケーション能力、また自分の意見を述べることは素晴らしいというグローバルスタンダードを身につけ、あらゆる場面で力を発揮してくれることを願っています。
目の前のことを一生懸命にやると先が開ける
変化が激しい時代に大切なのは、不確かな未来にあれこれ悩むことではなく、今、目の前のことに一生懸命取り組みつづけることだと思います。本気になって取り組めば、想像もしなかった道が開けるものです。
私たちは、面白そうなことにチャレンジしていく学校でありたいと思っています。そして、そういう新しい挑戦にワクワクできる学校を作っていきたいと思います。