アフターコロナ時代の教育観
アフターコロナの時代、社会生活そのものは元に戻れないと思います。それに伴い、社会の価値観は大きく変わるでしょうし、教育のあり方、社会が教育に求めるものも変質すると予想されます。
ICTツールは生徒の世界を大きく広げています。これを教師が狭めてしまってはいけない。自ら道をきりひらいていこう、先に進もうとする生徒に対して、コーチとして心置きなく世界を広げていけるように支えることが教師の重要な役割のひとつになっています。
本校では、教師のチャレンジングな取り組みを奨励しています。成果の一例として、理科部による宇宙エレベーターロボット競技大会・全国大会の出場、国内外の自主研修、SSC(シーズン・スポーツクラブ)の創設などがあります。
「大学に求めるもの」も変わる
「有名大学さえ出れば将来が約束される」という従来の「成功の方程式」は通用しなくなっています。今後、大学の名前だけにどれだけの価値があるかはわかりません。近年、本校の大学合格実績は躍進していますが、私はそのこと自体をアピールポイントだとは考えていません。
これからの時代、社会でよりよく生き抜くための鍵は「自分の人生を自分でデザインすること」です。そのため、本校では、生徒が自分で決めて努力してつかみ取る経験を大切にしています。リアルな体験を積み、失敗からも何かを得ながら、自分は何を学びたいのか、どんなことをしたいのかをしっかり考えることが、大切になります。
どの大学を出たのかは、長い人生のファーストステップでしかありません。それよりも、自分で決めて取り組んだ経験の方が、将来の希望の進路につながるのではないでしょうか。
独自の探究学習「I―U」
これらを実践するため、本校では多くの独自の取り組みを推進しています。その一つが「I―U」です。2限連続での総合的な学習の時間で、当初は「一人(I)で考える授業ではなく、仲間(U=you)と一緒に作り上げる授業」として、周りの人と協力しながら誰もが身につけるべき力を習得し、自分自身の世界を広げ、世界に羽ばたく人材を育成したいという願いを込めました。
理数探究コース、グローバルコース設置に伴い、探究学習に力を入れるべく「Intelligent Ultimate(知の究極を探求しよう!)」という意味を追加しました。
2限連続なので、校外で学んだり、外部から講師を招いたりすることもあります。SDGsの目標について「なぜそれが大事なのか」をとことん考える授業や「MJGクエスト」というグループでテーマを選んで、自分たちで調べて発表するプロジェクト型学習に取り組んでいます。
普段の授業では「深掘り教育」を意識するようにしています。中高一貫校といえば先取り教育というイメージがあるかもしれません。しかし、本校では生徒が立ち止まって学んだことを深める時間を大切にしています。自分で考え、目の前のことに全力で取り組み、一つのことに対する色々な見方を知って視野を広げます。そして、わからないところを自分で調べて、深掘りすることで、結果的には自ずと先に進んでいるのです。
放課後の過ごし方も自分でデザイン
放課後の活用として「Jタイム」を実施しています。プログラミングや中国語・韓国語などの教養的な講座から、ニュースからテーマを取り上げて、お互いの意見を交換する「ニュース検定」、普段の授業ではできないハイレベルの数学やネイティブレベルの英会話、補習的な内容の講習も開講しています。
どの講座を選ぶのかは、強制ではなく、生徒が自分で選びます。塾に行くことを選んでも良いので、本校教員は講座のクオリティを高めようと研鑽を重ねています。
中にはクラブ活動と「Jタイム」を日替わりで掛け持ちする生徒もいます。どのような学校生活を送るのかは、まさに「自分でデザイン」しているのです。
夢に寄り添う大人がいる
生徒の自己実現をサポートするため、高校にキャリアセンターを開設しています。単に偏差値で行ける大学を探すのではなく、生徒の将来の夢を真剣に受けとめ、そのためにはどの大学で学ぶべきかを的確にアドバイスします。
以前、風力発電を研究したいという生徒から「日本で風力発電に強い大学はどこか」という相談があり、センターの教員が調べ上げて、弘前大学を見つけたことがありました。
「学ぶ動機があるからその大学に行く」のが本来の姿です。本校の生徒がいろいろな地域の国立大に進学している理由は、この卒業生のように、研究内容から大学を探しているからです。
まさに「夢の実現に向けての第一歩」が箕面自由の丘の上から始まります。
受験生を持つ保護者として
家庭では生活スタイルやスマートフォンの使い方について率先垂範でお手本を示してもらいたいと思います。
「スマホばかり見ていないで勉強しなさい」と子どもを叱る前に、大人の側がスマホばかり見ていないか、チェックしてください。子どもが話しかけているのに、スマホの画面から顔を上げず、子どもの目を見ずに応えていないでしょうか。
ちゃんと見てもらえて、保護者に認められていると感じていれば、子どもは精神的に安定します。「ありがとう」と声をかけ「しっかり見守っている」という気持ちを伝えることで、子どもは安心して勉強に取り組めるのです。
子どもは家庭を映す鏡です。安定した家族関係や節度ある時間の使い方は必ず子どもに伝播します。生き生きとした人生を送っている保護者のお子さんは、何事も前向きです。今一度家庭の生活スタイルや時間の使い方を家族で話し合ってみてはどうでしょうか。