MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

大改革時代に向けて

2018.6.15

世界が変わり 教育のゴールも変わる 幸せな人生を実現するための学びへ
関西大学中等部高等部 田尻悟郎校長

田尻悟郎 先生
関西大学中等部高等部 校長
外国語学部教授として大学で教鞭をとるかたわら体育会野球部の顧問も兼任。SGH指定校の校長として力を入れるグローバル教育と、到来するAI時代に向けての教育ビジョンをお話しいただいた。
夢中になって学ぶ生徒を育てる

本校は開校当初から「思考する方法を思考する」能力を身につける取り組みに力を入れてきました。「考える科」と名付けて、ICTツールを活用したプロジェクト型の授業を実践しています。その集大成として、高校卒業までにプロジェクト学習で1万字の論文にまとめていきます。

「考える科」や「プロジェクト学習」を通して、本校の生徒は、課題の探究やプレゼンテーションの力はかなり高いレベルで身についています。しかし、重要なのは発表の中身ですから、どこかの段階で基礎となる知識を詰め込む必要が出てきます。そこで、生徒たちが自ら夢中になって繰り返し学んでいくようにすること、その環境を作ることが大切になります。学ぶことの面白さを伝えること、生徒にその教科を好きになってもらうこと、それこそが教師の重要な仕事なのです。

 

部屋にこもらず心をぶつけ合おう

知識の量に関しては、既にAIが人間を凌駕しています。もう教育のその部分はAIに任せてもよいのかもしれません。また、知識の応用という面でもAIは日々発展を続けていて、いずれは人間を超えていくと思われます。ですが、教育の成果を「知識の量」「知識の応用」という2つの軸だけで捉えてきたことで、社会では様々な問題が生じました。優秀なはずの人たちがいる大企業で検査数値や決算を粉飾するといったニュースが近年よく聞かれるようになりました。

私は、これまであまり顧みられなかった、もう一つの軸を考えに入れる必要があると感じています。その軸は「倫理観」です。倫理観も計算式にさえできればAIが計算できるのかもしれませんが、何が正しいのかを決めるのは最後まで人間の領分です。

倫理観を高めるには、人と人との心のぶつかり合いの中で自他の考えを見つめ直し調整していくという経験が生きてきます。そこから生まれる人と人との付き合い方、人としての生き方こそが、AIには入り込めない、人間独自の価値観となるのです。

これまでの受験秀才は、部屋にこもって知識を増やすことが得意な人でした。しかし、その方法で倫理観を高めるのは難しいでしょうし、人間関係の苦手な人になりがちです。そこで、グループ活動がますます重要になってきます。本校でも多くのグループ活動を実践していて、その中で、どうしても主張したい意見がある時に、相手をどこまで受け入れるのか、その上でどこまで主張を通そうとするのか、といった人間関係のセンスも磨かれていきます。

教師はファシリテーターとして、生徒の要望に応じて、知識の個別指導のようなAIが得意なことはAIに、人がすべきことは人にと適切につなげながら、その中で、人間関係についての道徳観や倫理観をきちんと考えさせる役割を果たさなければならないと考えています。

 

世界のトップレベルの高校生と議論し交流する場を

私たちの世界は、今まさに秩序が変わりつつあります。もっとも大きな変化は中国の台頭です。中国という欧米的な資本主義経済・民主主義国家とは異なる体制の国が、一帯一路やアジアインフラ投資銀行といった世界規模の新しい制度やビジョンを打ち出していて、これまで欧米先進国がリードしていた世界秩序への対抗軸となっています。

そういった世界の動向を知ることなく、狭い視野で受験勉強をしたり就職活動をしたりしても、間違った方向性での努力になってしまう恐れがあります。

本校でも、今後の世界にとってアジアの国々は重要だと認識しています。高校2年での海外研修ではハワイやシンガポールなどの企業を訪問し、卒業論文に取り入れていきますし、台湾やシンガポールのトップレベルの高校生と交流を行っています。また、これは構想段階ですが、アジアの優秀な高校生で集まってディスカッションする場を作りたいと考えているところです。

世界のトップレベルの高校生と交流(シンガポール研修)

 

古い時代の成功はもはや成功ではない

80年の人生がトータルで幸せかどうかは、その半分を占める仕事にかかっています。仕事にやりがいを感じるのか、働きに見合った対価を得られるのか、仲間とうまく付き合っていけるのか、などが幸せに仕事をする際のポイントになります。教育とはまさにこれらを実現するためにあるのだと思います。決して、いい大学や大企業に入ることがゴールではありません。教育の目的を間違えると、プライドを満たすために将来の幸せを犠牲にすることになってしまいます。

「京阪神大に合格すれば成功」だとか「大企業に入れば安泰」という価値観はもはや古いものです。重要なのは、大学卒業時にどんな力がついているのか、その企業で自分は何ができるのか、といったことなのです。たとえば、東大阪市には、大企業の仕事を支えた中小企業がたくさんあります。東大阪市役所にはそういった企業が開発した面白い製品が飾ってあり、価値を作り出すとはどういうことなのか、目で見て理解することができます。これからの時代、本当に面白い仕事は東大阪の中小企業のようなところから生まれるのではないでしょうか。書籍も出版されているので機会があればぜひ見てほしいと思います。

子供たちが社会に出ていくのは、AIがどんどん賢くなり、世界の秩序も変わり、教育や就職活動のゴールを見直さなければならない時代です。既存の古い価値観での成功に捉われずに、子供たちが社会に出ていく時代の光景を想像しながら、教育を考えていきたいですね。

ICT教育にも力を入れていて、普段からタブレットやノートパソコンが活用されている

 

私の未来年表 田尻悟郎
未来への抱負 教育・社会の変革 現小6
2020 アジア圏の学校との交流拡大
帰国子女・留学生が在籍する
中2
2023 日本一プロジェクト…様々な分野でコンクール入賞
卒業生が今までに無い新たなビジネスモデルを創出
高2
2025 世界各地で活躍する卒業生によるオンライン授業開始 大1
2028 日本国が移民受け入れ開始 大4
2030 アフリカ圏との交流開始 高校がネットワーク組織に改編
→どこの高校に通っても単位を取得できるようになる
24歳
2035 卒業生が国連本部等国際機関を指揮、世界平和へ貢献する事業を創出 29歳
2045 卒業生がノーベル平和賞受賞 シンギュラリティ到達 39歳

 

Category カテゴリ―