これからの時代に私学のあるべき姿
コロナ禍により、教育でのICT活用など、従来からの課題が一気に進みました。本校でも、2020年4月から高3、高2で、5月には中高6学年でオンライン授業を実施しました。
ただ、ICTはあくまでもツールです。テクニカルなものに流されて、教育の本来の目的を見失ってはいけません。私学の場合は、建学の精神をベースに置くことで、流されることなく新しい学びを取り入れることができます。本校の建学の理念と使命は「生徒一人ひとりの才能を開花させること」「社会に貢献できる人材を育てること」です。これを押さえた上で、現在の日本が置かれている状況——急激な少子化や国際競争の激化、AIの高度化といった多くの変化に柔軟に対応できる人材を育てなければなりません。
学校は志・ポリシーを育てる場
私自身の話ですが、小学校から大学までに教えられたことで、最も印象に残っているのは、高校の数学の先生が語られた人生哲学でした。それは「24時間は全ての人に共通のもの。その大切な時間をいかに使うかが重要である」というものです。この一言はずっと私の心に残っています。
本校では「ソフィア講演会」を年2回実施しています。研究者や企業のトップ、国際機関の方、スポーツや芸術で活躍している方などをお招きし、生徒に講演してもらっています。この講演で、かつての私のように言葉が心に残る、心に刺さる経験をしてほしいと考えています。「いかに生きるか」という志やポリシー、より大きく言うと哲学観を育てる環境は、学校の重要な役割の一つです。確かに、知識を操るためのテクニックはある程度競争を有利にしますが、「より良い国にしたい」「地域に貢献したい」というような大きな視野に必ずしもつながるわけではないからです。
自由な環境で伸び伸びと育つ個性
結局のところ、大学を出た後に何をするのかが大事なわけですから、中高でもそれを見据えないといけないと思います。そのことを踏まえて、本校では、中1・2で「自学自修プログラム」に取り組みます。
これは、生徒一人ひとりが興味・関心を持ったテーマについて1年間かけてじっくり探究するプログラムです。学年ごとに最優秀賞を選定するのですが、中1生は先輩の優秀作品の発表を聞き「来年は自分も」と意欲を高めています。
中には、JAXAや国立天文台に行って直接話を聞いてくるような生徒もいます。中3の生徒が京都大学の研究会に講演を依頼されたこともありました。生徒たちはきっかけがあれば、どんどん伸びていきます。大切なのは、そのような個性の芽を伸ばせるように、生徒の個性を否定せず、好きなことにとことん打ち込める環境を整えることです。一人ひとりの才能が、自由な環境でどこまでも伸びていく、その手助けができることは私学の醍醐味です。
才能が花開き、そのまま大学で研究者になった卒業生もいます。仮にそうならなくても、好きな道を極める先輩や同級生の姿は、周りに良い影響を与えています。
生徒と一緒に楽しむ探究
高校で新たに導入される「探究」の授業については、本校のように総合学習に真摯に取り組んできた学校は、何も困るところがありません。しかし、そうではない学校では、形式を整えるだけで手一杯になるかもしれません。探究型の学びでは、教師は生徒と一緒に学ぶことを楽しもうという姿勢が必要です。
生徒の学力を本気で伸ばそうとするのならば、フィールドワークが欠かせません。ネットで調べるだけでは、独自の答えは見つからないものです。実際に現場に行って、見たり聞いたり、人の気持ちを尋ねたり、アンケートを取ったりすることが大切です。
同様に理科の実験も重要です。フロントランナー・コースでは中2・3でサイエンス・ラボ、高2でハイレベルサイエンス・ラボを実施しています。科学の面白さを伝えると同時に、大学で高度な研究にスムーズに入っていく準備になっています。
世界へ通用する紳士の門出
今年度も、University College London(THE世界大学ランキング2022 18位)、KING’S COLLEGE LONDON(同35位)、The university of Manchester(同50位)など、のべ12名が海外の大学に合格しました。
高2からのグローバル・スタディ・プログラム(GSP)を中3・高1にまで拡大したグローバル・ファウンデーションの取り組みを始めて以来、毎年海外大学に合格者が出ています。海外の大学は、国内の大学のような受験勉強だけでは受かりません。高校での活動がアクティブでなければ受からないのです。海外の優秀な高校生は、成績に加えて、クラブを複数掛け持ちし、さらに趣味の活動にも積極的に行うというのが当たり前となっています。
そんな海外勢に負けないよう、本校では、ボランティア活動に本気で取り組むことを推奨しています。大学入試のためではなく、自分の成長につながることや意義を感じることを特に薦めています。これまで、近隣の小学校で放課後学習会のチューターをしたり、高齢の方々へのスマホ講座の講師をしたりなどの活動がありました。
今年度から、国際教育部を新設し、学校全体のグローバル化を進めると共に海外の大学とのコンタクトを増やして、今後さらに門戸を広げていきたいと考えています。