MIRAI NO MANABI ミライノマナビ

大改革時代に向けて

2023.4.28

滝川の良さはそのままに優れたリーダーシップ教育を女子にも
滝川中学校・滝川高等学校 校長 下川 清一 先生

下川 清一 先生
滝川中学校・滝川高等学校 校長
2020年度より現職。共学校での指導経験・校長経験を活かして、来年度の共学化において、伝統ある男子校・滝川の良さを一層伸ばす学校改革のチャンスと捉えて取り組む。

滝川中学校・滝川高等学校
https://takigawa.ed.jp/
神戸市須磨区宝田町2-1-1 TEL 078-732-1625(代表)

 

2024年度から女子生徒の受け入れ開始

 男女共同参画社会が謳われてから20年以上が経過しました。しかし、現在女性が日本社会の中でどれだけ活躍できているのかを考えると、むしろ一時期よりも活躍度合いが下がっている分野もあるのではないかと感じています。ジェンダー・ギャップ指数を見ても、日本は世界146か国中116位、先進国中では最低レベルにあり、諸外国に対して遅れを取る一方です。私はこのことが日本衰退の一因だったのではないかと思っています。

 例えば、国内の大企業などの体質を見ても、20年前からほとんど変わっていないところが多いようです。女性が企業で活躍できなければ、女性目線の商品やサービス、働き方といった、男性目線では見逃してしまいがちな価値を創り出すことができません。

 本校が取り組んでいるリーダーシップ教育は、まさにこのような現状で「日本社会を元気にできる新時代のリーダー」を育んでいます。この教育プログラムを男子だけではなく女子にも提供したいと考えました。

 また、兵庫県南東部の女子受験生のうち、少なくない人数が、大阪府内の共学校・女子校に進学しています。将来、地域の活性化、特に地域医療を支える女性のリーダーを地元で育てることができていない現状に疑問を感じていました。

 そこで「医進選抜コース」と「Science Global一貫コース」で女子生徒の受け入れを開始します。これまでの男子校として培った本校の良さに、女子生徒が加わることで、お互いの良いところを伸ばし合い、学校全体としてプラスにできるチャンスにもなると捉えています。

※ 世界経済フォーラム「The Global Gender Gap Report 2022」

 

AI時代に自分で創り出せる人材

 近年のICTやAIの技術革新には目をみはるものがあります。子どもたちが生きていく将来の社会が、現在と大きく違ったものになっているのは、もはや予想などではなく、当たり前のことだと考えなければなりません。

 そのような時代変化を前提に、新たな技術をいかに使いこなしながら生きていけるのか問われることになります。これからの時代には、それらの技術を使って自ら仕事を創り出せる人材が求められるようになるでしょう。

 中高での情報教育はこれまでより力を入れる必要があります。その場合にも、教える側にばかり意識を向けるのではなく、生徒が自分の道を自分で探していくことができるような、教師の意識変革が欠かせません。次々と新しいものが出てくるICTの世界では、私たち教師よりも生徒の方が、素早く柔軟に適応していくことができるからです。

 しかしながら、どれだけ時代が変わっても本質的に必要とされるものがなくなるわけではありません。変わるのは、例えば、これまでは大量生産大量販売であったものが、個人個人に合わせたものになるというような、ライフスタイルや価値観です。今まで社会で必要とされた知識や技能が、将来全て否定される、というわけではありません。中高で基礎を学ぶことの大切さはこれからも変わらないでしょう。

 

世界の多様な価値に触れる

 同じように、どれだけAIが高度になったとしても、絶対に人間がやらなければならないことがあります。それは、何が正しいことで、何が正しくないことなのかを判別することです。このことから、価値の規範について学ぶことが、これからの中等教育における大きな役割の一つになると考えています。私学の多くは建学の精神を持って創設され、運営されています。その精神に立ち返ることが一層重要になるのではないでしょうか。

 そして、世界には、自分たちとは異なる価値基準を持つ人々がいるという事実を、実際に体験して知ることも重要です。中高という多感な時期に、海外留学を経験することは将来においてとても大きな財産になります。本校ではニュージーランド留学を行っています。ニュージーランドを留学先に選んだのは、世界中から留学生が来ていて自ずと世界中の様々な価値観に触れることができるのと、先住民・マオリ族との共存の歴史を持ち、様々な問題に直面しながらも彼らの意思を尊重しつつ解決に取り組んできた多民族国家だからです。

 このニュージーランド留学をきっかけに、生徒には、留学を通して、それぞれの国や民族の価値観を深く学んでほしいと考えています。

多様な価値観に触れるニュージーランド留学

 

中学段階から力をいれる探究学習

 時代が変化し、社会においても大学入試においても求められる能力が変化します。特に力を入れなければならないのは、探究学習です。本校でも学校を挙げて、教科横断型の知識や社会とのつながりを学ぶような各教科のプログラム作りに、今まで以上に力を入れて取り組んでいきます。

 「ミライ探究一貫コース」では現在、週3時間を探究にあてています。それに加えて、学びの選択の幅を広く用意しています。

 2022年度の中1生から「ミライ探究一貫コース」で培った探究学習のノウハウを全てのコースに広げて、さらに中学段階に落とし込みました。最初は「探究って何?」という入門から教え始めて、いずれは一人ひとりが自らのテーマを見つけられるようになります。最終的には企業と連携した実践的な学びへと至る取り組みです。中学生での探究合宿や、トヨタ自動車と連携したSDGsの学習など、これからの本校の探究はもっと面白くなっていくと、私自身も楽しみにしているところです。

淡路島「タネノチカラ」での体験型 SDGs学習

 

一人で生きていける力を

 これからの時代を生きる子どもたちには、様々なことができる幅広い能力を身につけて、どのように社会や技術が変化しても、自立して生きていけるようになってもらいたいと思います。そのためのプログラムを、将来の進路に応じて用意しています。コースごとに明確な目標があり、それぞれ異なる取り組みを実践しています。

 学校は、世間から切り離された特殊な場所ではなく、社会との接点であると考えています。教科の学習ばかりではなく、社会で通用するルールやマナーを身につけて立派な社会人を育てることも重要な使命です。女子生徒を受け入れることで、相乗効果が起きて本校の教育がもっと良いものになると期待しています。お互いに切磋琢磨して、より良い社会を作るリーダーになってください。

2026年度末完成予定の新校舎

Category カテゴリ―