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大改革時代に向けて

2023.11.24

他者を受け入れ、自ら学ぶことが「幸福」に生きる力となる
神戸龍谷中学校・高等学校 校長 山﨑眞一郎先生

山﨑 眞一郎 先生
神戸龍谷中学校・高等学校 校長
2023年より現職。就任してまず校長室を生徒に開放。生徒用の机と椅子を置き、自由に使えるようにしている。自習室としてだけではなく、その場で授業が始まることも。

神戸龍谷中学校・高等学校
https://www.koberyukoku.ed.jp/
神戸市中央区中島通5-3-1 TEL 078-241-0076

 

人が大切にするべきことを教える学校

 神戸龍谷に就任してみて感じたことは、長い歴史の中で受け継がれてきた学校の核となる部分がしっかりあるということです。「和顔愛語」の校訓に示されている通り、人が生きていく上で大切にするべきことを生徒に伝えようとしている姿勢を感じました。

 時代が変わっても、世界が変わっても、人にとって大事なことの多くは変わるものではありません。本校が国際理解教育に力を入れているのも、世界中で人々がどのように生きているのか、人が生きることとはどういうことなのか、生徒にしっかりと見てもらいたいとの思いからです。

 また、大らかで寛容、他者の価値観を受け入れられる生徒が多いという印象も受けました。留学生に対しても、垣根を作らず、すぐに打ち解けることができています。これからの時代で重要になる「幸福に生きる(ウェルビーイング)」力を持った生徒たちだと見ています。

 本校生徒の気風がよく分かるエピソードを紹介しましょう。私が就任してから、制定品の見直しを進め、機能を維持しつつ値段を下げる工夫を行なっています。その一環として、靴下や鞄、セーターなどは、すでに所有しているものを使っても良いこととしました。

 鞄を自由にすると、通学に相応しくないものを使う生徒が出てくるのではないかという不安の声もありましたが、実際に自由にしてみると、ほとんどの生徒が通学に適したものを選んできました。自らTPOに合わせた行動ができる、これは本校生徒の美点だと感じました。

 

海外で学んだことをさらに深める

 高校では、「特進グローバル文系」コースで、毎年20人~30人が10ヶ月の長期留学に参加します。「特進グローバル理系」コースでも、経済やテクノロジーを学ぶ2週間の海外研修を今年はボストンで行いました。中高一貫生も、高1の春休みにカナダ・ビクトリア市で、語学と探究学習に取り組みます。

 留学それ自体に加えて、事前学習も大切な学びの機会になります。高校3学年の合同の授業として、事前学習を行いますが、参加した3年生の体験談や報告を聞き、1年生は来年参加するために必要な準備や語学力を実感します。

 中高一貫生のカナダでの探究学習では、いくつかのテーマに分かれて取り組みます。たとえば環境をテーマに、日本とカナダの環境対策の制度や考え方の違いを調べます。帰国後は、調べたことをベースに、日々の活動や学習にどう活かしていくのかをさらに深めていきます。

カナダ研修

カナダ研修

 

ユネスコスクールへの道のり

 本校の建学の精神である「仏教精神による人間教育」は、「誰ひとり取り残さない」を目指すSDGsとその教育実践であるESDとの親和性が高く「心に平和の砦を築く」というユネスコ憲章とも共鳴しています。また、1980年代から先駆けてきた国際理解教育、2011年頃から加速させた探究型授業や教科横断型授業への取り組みという実績がすでにありました。これらが認められ、2022年3月、ユネスコスクール(キャンディデート)に承認されました。

 国際理解教育や探究型授業の一例を挙げると、「Global Issues」の授業では、ナイジェリアのスラムに住む人々とオンラインで交流、実際に現地に住む人たちに聞かないと分からない問題について学びました。一見するとローカルな問題だと思ってしまうことも、先進国にも同様の問題があったり、問題の原因が世界経済の仕組みにあったり、問題の本質はグローバルであり、その解決策を探ることは大切な平和のための学習になります。

海外とのオンライン交流

 本校のユネスコスクール認定を目指す取り組みは「Whole School Approach」(全校挙げてのアプローチ)で、普段の授業から部活動にまで学校生活の全てに関わっています。そのため、学校生活を送っているだけで、意識せずとも世界平和やSDGsへの思いが共有されていきます。

 今年、滋賀県で開催された、ユネスコ未来共創プラットフォーム事業で、Whole School Approachの利点が表れました。本校からは20名の生徒が参加を希望しましたが、移動手段のキャパシティの問題から、一校から20人もの参加に難色を示されました。それならば、ということで、本校所有のバスを手配し、希望した全員の参加を実現させました。当然、他校参加者にも使ってもらいました。

※ユネスコが認定する国際的な学校ネットワークASPnetへの国内加盟審査を通過し、ユネスコ本部への申請段階にある学校のこと

 

自ら選び学ぶことで生徒は大きく伸びる

 今年から始めた新しい取り組みとして、中学校で中間テストを廃止しました。従来の学期制に替えて、1年度を8のブロックに分け、ブロック単位で確認テストを行っています。およそ3週間に1度、このブロックテストがあります。ショートスパンの評価に代えたことで、学習の目標を立てやすく、モチベーションを高めやすいメリットがあります。

 また「フォロー」という授業を週に3コマ設定しました。この時間は、生徒が自らするべきことを選んで、自主的に勉強をします。何をするかは自由で、図書室で本を読む生徒もいます。この時間を作ったことで、生徒の成績は大きく伸びています。強制して学ばせたことよりも、生徒自身がやりたい、やらないといけないと思って取り組んだ勉強の方がはるかに身に付くのです。

 そして、生徒を育てるのは学校だけの力ではできません。私たちは保護者のみなさんと一緒に走るパートナーとして、生徒の学ぶ姿をできるだけ伝えるようにコミュニケーションを密にしています。さくら連絡網というネットでのコミュニケーションツールを活用して、双方向で連絡を取り合えるようにしています。

 

自分が活かせて自信が育まれる学校を見極める

 志望校を選ぶ際には「自分が活きる学校」をしっかりと見極めてください。それは、友人・先輩・後輩など周りの人たちに良い影響を与えることができ、自分も良い影響を受けることができる学校のことです。周りの人たちと教え合い、関わり合える場所にいることで、自分に自信を持つことができます。

 難関校に合格するというのも一つの自信のあり方ですが、自分には自分にしかない価値があると感じることで、自信は育っていきます。そういう自信を入学してから育てられる環境を選ぶことが大切だと思います。

 

進学館

 

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