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2019.12.28

「時代を作るリーダー」を育てる——リーダーシップ教育
滝川中学校・高等学校(兵庫県 男子校)

時代が大きく変わる時、リーダーの役割も変容する。それは大きな組織であっても、小さなグループであっても同様だ。元来、私立中高には次代のリーダーを育てるという重要な使命がある。これまで多くの多彩な人材を輩出してきた滝川中学校・高等学校も今、新しいリーダーシップ教育に取り組んでいる。その挑戦について、同校・新教育プログラム推進支援センター長・下村卓治先生にお聞きした。

滝川が目指すリーダー像

滝川のリーダーシップ教育は2011年から始まり、2014年からは全ての学年で週一回「リーダー」の時間を設けた。中学校では2コマ、高校では「リーダー」1コマ+総合的な探究の時間1コマでの取り組みだ。集団行動、モラル、キャリア、コミュニケーション、探究の5つのテーマからなる授業で、将来、社会で求められる力を教育プログラムに落とし込んだものだ。例えば「コミュニケーション」としては、中学校での海外語学研修、高校でのセブ島語学研修プログラムなどがあり、「探究」では、Pepperを使ったプログラミング学習やPBLを行う「プロジェクト」、小論文などに取り組む。

ディベートの様子

 

「社会は確実に変わっていきます。AIの発展で仕事のあり方も変わっていくでしょう。かつては、与えられた知識をいかに覚え、いかに速く処理するか、その力が突出していればリーダーになることもできました。しかし、これからのリーダーには、人のために新しい価値を生み出す力が求められます。一言で表すと『時代を作るリーダー』です。」

同校が目指すリーダー像を尋ねると、下村先生はそう答えてくれた。確かに、従来の社会構造の中でリーダーになった人が、これからの時代にもリーダーであるとは限らない。それでは、これからの時代、リーダーはどのような学びをすればよいのだろうか。

「正解が一つではない時代には、粘り強く思考する探究心・考え続ける力を身につけることが大切です。そのためには、特に、他者が考える視点・視座を持つことができ、何事も自分事として深く共感できる力(エンパシー)が重要だと考えています。」

エンパシーとは、単なる共感(シンパシー)を超えた深い共感、他人の苦しみを苦しめる能力を意味する。シンパシーは「同情」のような意味合いを持つが、エンパシーには「感情移入」というニュアンスがある。ある問題に対して、自分自身が納得いくまで考え続けるにはエンパシーが欠かせない。噴出するグローバル規模の課題を解決するためにも、国内や身近な問題を解決する際にも、エンパシーを持って臨まなければ、問題は悪化しかねない。

「粘り強い探究や自分事として考える習慣を身につけるべく、高校の探究の授業では、テーマを決めて調べてきたことから仮説を立て、ロジカルに議論したり思考したりして、クリティカルな批評を加えていくトレーニングを行います。そして、高2の学年末にはシンガポール大学での研修で、現地大学生を相手に堂々と英語でプレゼンテーションするところまで、考えを磨き上げました。」

 

「できない理由」を挙げるのではなく「今、何をするか」

他にも、同校は3年目になる「未来志向型授業」の取り組みも行なっている。こちらも社会の問題を自分事として捉える機会となっている。

「『バックキャスト』という考え方で社会の課題を捉え、未来の仕事を自分で考える授業を展開しています。これは、ある問題に対して評論家的な『できない理由』を挙げるのではなく、『自分は社会がこうあってほしいと思う。そこから逆算して、今この行動をする』という考え方です。『できない』を『できる』に変える思考法で、これこそ次代のリーダーに必須の力です。『なぜ、できないのか』を考えるのは簡単ですが、『できるにはどうすれば良いか』を考えるのは、とても頭を使います。」

自らのテーマの集大成を発表する「滝川フォーラム」

 

高校生にとって難しすぎる授業ではないだろうか、と記者が次の質問に詰まっていると、下村先生はそれにも下準備があり、マンイドマップを活用して、アイデアを発散させて収束していく具体的な方法から学んでいくのだと補足してくれた。専門の外部講師を招いて、マインドマップの活用の仕方を学ぶのだ。アイデアから行動までつながる学びは、まさに新しい時代のリーダーシップ教育だ。これらの取り組みで、どのようなリーダーシップが涵養されたのか、実際の生徒の変化を質問すると、次のように話してくれた。

「『世の中のためになろう』と言う生徒が増えました。また、将来の活躍の場を海外に求める生徒も増えています。国際的な舞台で、世界の人たちの役に立ちたいという志を持つようになりました。教育(educate)の語源はラテン語の「外に連れ出す」という単語ducereです。生徒一人ひとりの『好き』『やりたい』を引き出し、それを大きく育てる取り組みに一層力を入れていきたいと考えています。」

 

進学館

 

滝川中学校・高等学校
https://www.takigawa.ac.jp/
神戸市須磨区宝田町2-1-1 TEL 078-732-1625

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