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2020.2.28

グローバルな視点で自分にできることを考える——グローバルキャリア教育
帝塚山中学校・高等学校(奈良県 併学校)

同校でのエンパワーメントプログラムの様子

 

「日本にはグローバル人材が不足している」と言われている。では、どのような人材を育てれば良いのだろう? 英語力が高い人? それは重要かもしれないが、それだけではないはずだ。今回は、明確なグローバルリーダー像を持って、教育実践に取り組む帝塚山中学校・高等学校の「グローバルキャリア」の取り組みを紹介する。同校・国際交流委員長の別所誠先生にお話を伺った。

 

今グローバルを教えないで何を教えるのか?

今年で4年目を迎える帝塚山のグローバルキャリア。中高を通したプログラムで、それぞれの学年に応じて、世界で活躍するための学力を身につける。このプログラムを導入した経緯を別所先生に尋ねると質問自体が意外な様子で、次のように話してくれた。

「今日、グローバルではない教育に意味があるでしょうか? 逆に、これをしないとすれば学校で一体何を教えるのか、というぐらいです。例えばSDGs(国連が掲げる持続可能な開発目標)は、世界中の誰もが当事者になる課題で『知らない』では済まされません。本校は以前より『社会に有為な人材を育成する』を目標に掲げてきました。グローバルに活躍できる人材育成は、その自然な延長上にあると考えています。」

グローバル教育を「目新しい取り組み」と捉えているようでは、すでに周回遅れなのだ。今の生徒たちはグローバル化が当然の社会に出ていく。教育が将来のための準備だとするならば、彼らはグローバルな課題に取り組むために学んでいるのだ。

 

日本語から始めて世界の一流へ

「現在のグローバル社会では、かつてのように『文化の違いを理解し合って終了』という段階をとっくに超えています。世界の人々と一緒になって何ができるのか? 自分は世界にどんな貢献ができるのか? それを考えて、みんなでやってみよう、というところまで行かなければなりません。」

そのために重要なのは、まず母国語で考える力だと別所先生は言う。英語は世界中の人たちとコミュニケーションが取れる便利なツールであるが、あくまでもツールに過ぎない。グローバルな視点を持って課題を捉えつつも、経験したことや学んできたことを元に独自の考えを出せなければ、いくら英語力があってもグローバルな活躍は覚束ない。

「グローバルな視点を持つためには、実際にその場所に立ってみることも大事な経験です。そこで、中3ではハワイ(男子:サイエンスキャンプ、女子:STEAMプログラム)に行きます。高1ではエンパワーメントプログラムを導入し、ハーバード大学など世界の有名大学院生に来てもらい、ディスカッションやプレゼンテーションを通して、自分のこと、世界のことについて深く考えます。」

さらに、高2では、ハーバード大学やMITを訪問する「グローバルアカデミックプログラム」がある。昨年はボストン大学の寮に宿泊し、現地の大学生から刺激を受けながら、リーダー研修を受講した。

グローバルアカデミックプログラム

「向こうの大学生はものすごく優秀で、何より発想が違います。彼らにグループリーダーになってもらい、生徒は毎日のように新しいことを吸収していきます。その中で『自分がこの社会のために何ができるのか』を常に考え、なすべきことを実現するために人間関係をどう構築していくのかを考える力が身についていきます。」

別所先生によると、グローバル時代のリーダーとは、そのような思考・行動を多様な人々と共に展開できる人のことだ。そして「そのような力は、育てようとしなければ育たないもの」とも。社会に出てリーダーの地位についてからでは遅いのだ。

 

自ら学ぶ姿勢が広がっていく

「生徒は、国内だけではなく、グローバルな視点で物事を考えるようになりました。また、自分が学んだこと、経験したことを広く発信したい、という生徒が増えました。カンボジアでのボランティア活動を経験した生徒は、自らプレゼンをしたいと申し出て、他の生徒・保護者の前で発表をしました。色々な場で経験を積んだ生徒が、次の世代の生徒に熱意を持って伝えてくれるので、年々、意欲的に取り組む生徒が増えています。グローバルキャリアの一期生はまだ高2ですが、将来的には社会人となってから、この取り組みが仕事にどうつながったのかを生徒たちに話してもらいたいと考えています。」

この取り組みを始めて生徒の様子がどう変わったのかを聞いてみると、このように話してくれた。自ら行動し、考え、発表する––グローバル人材とはまさにそういう人材に違いない。最後に、これから中高で学ぼうとしている皆さんにアドバイスをいただいた。

「海外には少しでも早く行った方が良いと思います。英語がうまく通じないことで挫折を経験したり、カルチャーショックを受けることで、学びの必要性を実感できるからです。また、留学の際には、自分が行く場合も受け入れる場合も『お客さん扱いをしない』という考え方が重要です。グローバルな視点というのは、そこにいるのはお客さんではなく、共通の視点を見つけ出す仲間だ、と考えることだからです。グローバルな課題は、誰かが解決してくれるものではありません。自分のこととして受け入れ、世界の人々と同じ地平を共有してください。」

 

進学館

 

帝塚山中学校・高等学校
https://www.tezukayama-h.ed.jp/
奈良市学園南3-1-3 TEL 0742-41-4685(中学校高等学校事務室)

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